二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 419章 闘牛 ( No.564 )
- 日時: 2012/12/21 21:46
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「大いなる生命の草原を行け! バッフロン!」
「次はお前だ。頼んだぞ、リーテイル!」
アデクの五番手は、頭突き牛ポケモンのバッフロン。
バッファローのような姿で、頭部がアフロになっているのが特徴だ。
対するイリスが繰り出すのは、機動力に優れるリーテイル。六匹目はアデクの最後のポケモンを見てから決めたいので、ここは既出のリーテイルにしたのだ。
「こっちから行きますよ。リーテイル、エアスラッシュ!」
リーテイルは羽ばたいて空中に飛び出すと、大量の空気の刃を飛ばしてバッフロンを切り裂く。
「むぅ、中々の量だな……バッフロン、ストーンエッジ!」
バッフロンは全身を切り裂かれながらも周囲に鋭く尖った岩を浮かべ、リーテイルへと発射する。
「かわしてドラゴンビート!」
リーテイルは旋回しながら襲い来る岩をかわしていき、横から龍の鼓動のような音波を放ち、バッフロンを攻撃。
音波は直撃したものの、タフなのか、バッフロンはその場から一歩も動かずに耐えきった。
「アフロブレイク!」
すぐに身体を半回転させ、バフッロンはリーテイルを睨み付ける。前傾をやや傾けてアフロ頭をこちらに突出し足を踏み鳴らすと、突如、凄まじい気迫と勢いで突撃してくる。
「なんて威力、これは捨て身か……? リーテイルかわしてリーフブレードだ!」
その鬼気迫る形相と勢いに気圧されそうになりながらも、リーテイルは横に体をずらして回避する。威力は高いのだろうが、所詮は直進して攻撃する技だ。恐れることはない。
そしてすぐに攻撃に移る。リーテイルは尻尾の葉っぱを構えてバッフロンに急接近し、その身体を切り裂いた——のだが、
「バッフロン、メガホーンだ!」
バッフロンは攻撃を受けた直後とは思えない切り返しで、リーテイルを突き上げる。強靭な角の一撃は、リーテイルの体に深く突き刺さった。
「リーテイル!」
天井にめり込むほど吹っ飛ばされたリーテイルは、かなりの痛手を負ってしまった。体力の半分どころか、四分の三くらいは削られただろう。
しかし、イリスのエースはピンチの時こそ最大の力を発揮する。リーテイルの特性深緑により、草タイプの技の威力が上昇するのだ。
「あのバッフロンは相当タフだ、出し惜しみをしてられる状況じゃないぞ。リーテイル、リーフストーム!」
大技で一気に決めるべく、リーテイルは嵐のように渦巻く烈風とともに大量の葉っぱを放ち、バッフロンを包み込む。
如何に耐久に優れたバッフロンと言えど、深緑が発動したリーテイルのリーフストームをそう簡単に耐えることなどできはしない。仮に倒れていないとしても、相当なダメージを与えられるはず。
だがしかし、イリスのその予想は、大きく外れる結果となるのだった。
「バッフロン、ストーンエッジ!」
突如、草の嵐の中から鋭く尖った岩が無数に飛び出した。
「!? リーテイル、回避だ!」
リーテイルはリーフストームを中断し、すぐにその場から離れる。
直後、リーテイルの背後にあった神殿の天井に、蜂の巣のような無数の穴が開いていた。今のストーンエッジだ。
「嘘だろ……深緑が発動したリーテイルのリーフストームを耐えるだけでも信じられないようなことなのに、その上この神殿の天井を貫通するほどの威力を持った攻撃を、すぐに撃ち返したって言うのか……!?」
愕然とするイリス。見ればバッフロンもあまり傷を負っていない、というかまるっきりノーダメージに見える。
そんなイリスを見かねたのか、アデクは嘆息しつつ言葉を挟んだ。
「……バッフロンの特性、草食だ」
「草食……? ……!」
そこでやっと、イリスは気付く。
「草食は草タイプの技を無効化し、ポケモンの攻撃力を上昇させる特性だ。お前さんのリーテイルは二度、バッフロンに草技を当てたな。お陰で、今のバッフロンの攻撃力は、かなり滾っておる」
「くっ……!」
どうやらイリスは、大きな失敗を犯してしまったようだ。
イリスは最初、バッフロンのアフロブレイクの気迫から、特性を捨て身だと思い込んだ。しかし実際は草食で、しかも既に攻撃力が二段階上昇している。
「あの攻撃力が、さらに上がるのか……!」
それも脅威なのだが、それ以上にリーテイルではバッフロンとは戦いにくい。
リーテイルの覚えている技の半分は草タイプの技。それらは全て無効化されるので、他の技に頼ろうにも、こんどは火力不足になる。
大きなダメージを負って深緑が発動しているリーテイルだが、今はその特性が全く生かされていない。かといって手負いのまま戻すのもどうかと、イリスは思い悩む。そして、
「……戻れ、リーテイル」
リーテイルをボールに戻した。
「ほぅ、戻すか。賢明な判断だな」
アデクはそう言うが、イリスがリーテイルを戻すことを確信していたかのような雰囲気がある。
だが、そんなことに構ってはいられない。アデクの六匹目に合わせて繰り出す予定だったが、最後のポケモン枠を、ここで行使する。
「頼んだぞ、ダイケンキ!」
イリスが繰り出すのはダイケンキ。リーテイル同様、安定した実力を持つイリスの初代エース。
ダイケンキは鋭い眼光でバッフロンを睨み付け、バッフロンも同じようにガンを飛ばす。
「やはり最後はダイケンキで来たか。大方、儂の六番手が何であれ、最も強いエースなら勝率が高いという算段なのだろう」
アデクの推理は正しかった。アデクの六番手が分からない以上、対策のしようがない。なので、地力においてはイリスの手持ちで最も強いダイケンキを選択した。
「今ここで教えておくと、儂の六番手はダイケンキとの相性は悪い。だが、ここでそやつを倒しておけば、なんら問題はない。バッフロン、ワイルドボルト!」
バッフロンは弾ける電撃をその身に纏い、先のアフロブレイクと同等、いや草食攻撃力が上がっている分、それ以上の気迫でダイケンキへと迫って来る。
「電気技を覚えていたのか……ダイケンキ、吹雪だ!」
ダイケンキは凍てつく猛吹雪を放ってバッフロンを攻撃するが、その勢いが衰えることはなく、ぐんぐんとダイケンキに迫る。
「だったら、シェルブレード!」
両脚の鎧からアシガタナを抜刀し、ダイケンキは十文字に構えてバッフロンの突撃を受け止める。
だが、予想以上の威力だ。ダイケンキはなんとか食い止めているものの、ずりずりと後退している。このままでは、突破されるのも時間の問題だろう。
「メガホーン!」
シェルブレードに加えて頭部の角も使い、バッフロンの勢いを止めようとするが、焼け石に水だ。バッフロンは止まることなく、ダイケンキを押している。
「ぐぅ……ならこれでどうだ! ダイケンキ、下からメガホーンで突き上げろ!」
ダイケンキはアシガタナをそのままにバッフロンを食い止め、頭を下げる。そしてバッフロンの腹に突き刺すように、鋭い角でバッフロンを突き上げた。
「なぬっ! バッフロン!」
下から力を加えられたバフッロンは、案外簡単に宙を舞い、地面に叩き付けられる。が、すぐにむくりと起き上がった。
「反撃を許すな。ダイケンキ、シェルブレード!」
ダイケンキは両手のアシガタナを投槍のように投擲し、バッフロンの足元に突き刺す。これで、一時的にでもバッフロンの動きが止まる。そして、
「吹雪だ!」
その隙に凍えるような猛吹雪を放ち、バッフロンを吹き飛ばす。
「これで決める、メガホーン!」
さらに地面を蹴ってダイケンキはバッフロンへと接近。大きな角をその身体に突き込み、突き飛ばした。
「ぬぅ……戻れ、バッフロン」
アデクは戦闘不能となったバッフロンをボールに戻す。そして、最後のモンスターボールと、入れ替えた。
「戻れ、ダイケンキ」
イリスもダイケンキをボールに戻す。直接の攻撃は受けなかったものの、バッフロンのワイルドボルトを受け止めたために、かなり疲労しているはずだ。ここは少しでも休ませておきたい。
「ふむ、まさかバッフロンがやられてしまうとはな。お前さんのダイケンキ、思った以上にやるではないか」
アデクはバッフロンを倒したダイケンキを称賛する。
「だが、お前さんのダイケンキでも、儂の最後のポケモンを倒すのは、簡単ではないだろうよ。なにせ、今の儂の親友と言っても差し支えないポケモンだからな」
どうやらアデクは、その最後のポケモンに相当な信頼を寄せているようだ。アデクの言うことが正しければそのポケモンは水タイプが弱点。相性で勝るダイケンキを倒せるほどの力を持ったポケモンだ。
イッシュ地方で最も強い男が、最も強いと思うポケモン。それは、一体——
「行くぞ、儂の最後のポケモン!」
イッシュ地方チャンピオン、アデク。イッシュ地方の英雄の片割れ、イリス。
この二人の壮絶なる戦いも、もうすぐ、幕を下ろす——
さて、今回はアデク戦その五です。イリスは草食バッフロン相手に痛恨のミス。しかし交代して出て来たダイケンキが、きっちり勝利を収めました。これでアデクの手持ちも残り一体。当然わかると思いますが、例のあいつです。マグカルゴの怨敵と言えるようなあいつです。では次回はアデク戦その六。もしからしたらエースだけ二章分になるかもしれません。次回もお楽しみに。