二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 427章 災禍 ( No.578 )
- 日時: 2012/12/29 16:29
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
ティラノスの突撃は、ディザソルがティラノスの体を流すようにして受け、そのまま斬撃を喰らった。
「ドラゴンテール!」
しかしティラノスも負けてはいない。すぐにその巨体を駆動し、勢いよく尻尾をディザソルに叩き込んだ。ディザソルは勢いを殺してその攻撃を受けたものの、かなり大きく吹っ飛ばされてしまう。
「ドラゴンテール、入れ替え技か」
だがイリスのポケモンはもうディザソルしか残っていないため、その技の効果も無意味である。ただ、その名残なのか、相手を大きく吹っ飛ばすことができるようだが。
「さあさ燃えてきましたよ! ティラノス、フレアドライブです!」
ティラノスは全身に燃え盛る爆炎を纏い、途轍もない気迫と共にディザソルに突撃してくる。
(いくら衝撃を殺せても、ダメージが全くないわけじゃない。さっきはスプラッシュで何とかなったけど、フレアドライブじゃあ炎でのダメージもある。ここは確実にかわしておきたいな)
イリスは一瞬のうちでその考えを出し、ディザソルに回避命令をだす。
「ディザソル、神速でかわせ!」
ディザソルは神がかったスピードでティラノスのフレアドライブを回避しようとするが、
「くるっとターン! ティラノス、追うのです!」
後ろに回ったディザソルに対し、ティラノスも勢いを殺さず強引にUターン。そのままディザソルへと突撃する。
「しまっ——ディザソル!」
直撃を受ければ致命傷は免れない、下手すればこの一撃で瀕死になってしまうかもしれない。
だが、かつてはイリスの指示も聞かず、勝手気ままにバトルをしていたディザソルだ。ティラノスの切り返しを見てすぐ、自らに水流を纏わせ、フレアドライブのダメージを軽減した。
「……よくやった、ディザソル」
その無駄のない一連の動きに一瞬見とれてしまったイリスだが、すぐ我に返ってディザソルを称賛する。
「よし、もう一度行くぞ。スプラッシュ!」
水流を纏い、飛沫を散らしながらディザソルはティラノスへと突貫。気迫も勢いもティラノスには劣るが、そのスピードと神々しさは負けていない。
「ドラゴンテールです!」
反撃にとティラノスも尻尾の一撃を繰り出すが、ディザソルはサッと後ろに跳んで回避。そのままおまけと言わんばかりに尻尾を切り裂いた。
「世界の果てまで追いかけまわす、そう、ジョニーを見つけるまで! グランボールダ!」
ちょこまかと逃げ回るディザソルに業を煮やしたのか、ティラノスは大小様々な無数の岩石を浮かび上がらせる。そしてそれらを降り注ぐように一斉にディザソルへと放った。
「迎え撃つぞ、怒りの炎!」
ディザソルも怒り狂うように燃え盛る業火を上空へと放ち、襲い掛かる岩石を消し炭にしようとするが、
「! ディザソル!」
ほぼ炭化して真っ黒になっているものの、岩石は燃え尽きずにディザソルに降り注ぐ。飛び攻撃では衝撃を殺すことはできないため、炭化したグランボールダの直撃を受けてしまう。威力は弱まっていたために致命傷は免れたが、ディザソルの純白の毛並みは黒くすすけてしまった。
イリスは最初に放ったグランボールダと同様に焼き尽くすつもりだったのだが、落下の勢いが加味されたグランボールダは威力が高められ、かなり焦げたものの燃え尽きることなくディザソルを襲ったようだ。
「フレアドライブ!」
続けてティラノスは荒々しい灼熱の爆炎を纏い、ディザソルに向かって突撃。
「上だ、神速でかわせ!」
ディザソルは神速のスピードを利用して遥か上空まで一気に跳躍し、ティラノスの突撃を回避したが、
「跳びましたね? 跳んでしまいましたね? ここからはもうモスギスさんのターンです! ティラノス、グランボールダ!」
ティラノスは三度グランボールダを発動。大小様々な岩石を浮かび上がらせ、今度は上空にいるディザソル目掛け、打ち上げるようにして一斉に放つ。
しかし、
「そこだディザソル! スプラッシュで弾き返せ!」
ディザソルはあえて空中に身を晒すことで、グランボールダの攻撃を一点に集めた。地上にいたら取り囲まれるため出来なかった芸当だが、上空の一点を目指すようにして向かってくる岩石なら弾くことができる。
一斉に襲い掛かる岩石に、ディザソルは水流を纏う尻尾を思い切り叩き付けた。よって全ての岩石は叩き付けた力の方向——即ちティラノスに向かって逆戻りする。
「続けてスプラッシュ!」
岩石の雨を喰らっているティラノスに追い打つように、ディザソルのスプラッシュが脳天にクリーンヒット。しかも、まだこれだけでは終わらない。
「辻斬りだ!」
そのまま頭部から腹部にかけて切り下すようにディザソルの鎌がティラノスを切り裂く。
「どうだ……!」
一度ティラノスと距離を取り、様子を窺う。
ティラノスはいまだ気丈な素振りを見せているものの、やはり今までの連撃が効いているのだろう。少し苦しそうにしている。もう一押しというところだろう。
「もー……すー……」
ふとイリスが視線をモスギスに合わせると、彼は妙に大人しく深呼吸していた。
「最初は些細なことでも、回数を重ねていくうちにそれが広がっていき、泥沼が泥沼を呼び、秘めたる思いが爆発を!」
——いや、やっぱりいつものモスギスだった。
だが、彼の眼は、確かに変わっていた。相変わらずふざけた態度ではあるが、本気でディザソルを叩き潰そうとする獰猛さが、見え隠れしている。
「ではでは、モスギスさんの祝勝会をよっと早めてしまいましょうか。ティラノス、グランボールダ!」
ティラノスは大きく咆哮し、大小様々な岩石を浮かび上がらせる。
イリスは怒りの炎で焼き尽くすか、スプラッシュでまた弾き返すか、それらが無理そうなら神速でかわすか……などと思考を巡らせていたが、しかしそれらの策は全て無意味であった。
なぜなら、岩石はフィールド全体から浮かび上がっていたのだから。
「なっ……!?」
前後左右、上空でさえも岩石が浮遊している。フィールドを埋め尽くすような大量の岩。いくらディザソルでも、これは避けられない。大規模なグランボールダだ。
「それではティラノス、モスギスさんを祝して、なにか一言」
モスギスが言うと、ティラノスはさらに大きな咆哮を上げる。そしてそれが合図となって、無数の岩石は一斉にディザソルに向かって、襲い掛かる。
「ディザソル!」
一度当たれば終わりのはずのグランボールダだが、この攻撃は何度も何度もディザソルを打ちつけている。吹き荒ぶ嵐のように激しく襲い、ディザソルの体を痛めつけていく。
衝撃を殺せないグランボールダで、この連撃。ディザソルに耐えられるわけもなく、もうこれで終わりだと思った、その時。
ディザソルは荒々しい咆哮を放ち、空間を震撼させた。
その叫びによって襲い来る岩石は全て砕け散り、無残な礫と化す。
「ディザソル……」
ディザソルは災害ポケモン。吹き荒ぶ嵐も、轟く雷も、凍てつく吹雪も、怒り狂う噴火も——全ての災害を超越し、統べるもの。
岩が飛んでくる程度の災害など、ものともしない。
「……やりますね。まさかティラノスともすの必殺技を撃ち破るとは。しかし、次はこうは行きませんよ」
モスギスは彼の言う必殺技が破られたにも関わらず、不敵な笑みを見せる。そして、
「ティラノス、ぶち壊す!」
ティラノスは今まででもっとも大きく、そして聞くもの全てを畏怖させるような咆哮を上げ、凄まじい気迫と共にディザソルへと突撃する。その姿は正に暴君。手当たり次第に目につくものを、自身の進行を邪魔するものを全て破壊しようとする、暴虐な古代竜の姿であった。
「ディザソル、辻斬り!」
対するは災害の化身。闇よりも深い漆黒の鎌を光らせ、太古の暴君に立ち向かう。時には災害を呼ぶものとして疎まれていたが、今は違う。災害の如き古代の暴君に裁きを下すため、得物を煌めかせ、静かに駆ける。
ティラノスとディザソル。ティラノスは巨大な爪を、ディザソルは漆黒の鎌を、それぞれの得物を構え、交錯する。
両者は背中合わせとなり、その場で硬直する。どちらもまっすぐ正面を見つめ、倒れる気配はない、が——
——ズゥン、という鈍い音を響かせ、ティラノスが地面に崩れ落ちた。
遂に終わりました、モスギス戦その六。ディザソルがティラノスを下し、イリスの勝利で決着です。いやー今回は随分と表現を変えて描写したような気がしますね。ディザソルがバトるとよくこうなります。では次回は、みなさんお忘れになっているかもしれませんが、モスギスの伝言と、その後です。イリゼがモスギスに託した伝言とは何なのか。それでは次回をお楽しみに。