二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 440章 飛び火 ( No.611 )
日時: 2013/01/06 17:22
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「ヘルガー、火炎放射!」
「ヤミクラゲ、悪の波動」
 ザキとレイのバトルは、どちらも一進一退という感じであった。どちらのポケモンもしぶとく場に居座り続ける。
 しかし、悪巧みを二回使用しているヘルガーの火力はかなり強化されており、現状ではヘルガーが優勢とも言えるかもしれない。
 火炎放射と悪の波動がぶつかり合い、炎が波動を飲み込んだ。
「続けてダークロアー!」
 そのままヘルガーは闇の咆哮を発し、ヤミクラゲを攻撃。効果はいまひとつだが、悪巧みで特攻が上がっている今のヘルガーなら等倍以上のダメージを与えられる。
「よっしゃ、いい感じだ。ヘルガー、もういっぺん悪巧みだ!」
 ヘルガーは三度脳を活性化させ、特攻をさらに上げる。これでヘルガーの特攻は最大限に達した。
「喰らいな。ヘルガー、火炎放射!」
 ヘルガーは文字通り最大火力の火炎放射を放つ。辺り一面を焼き尽くしてしまうような業火だ。
「くっ……ヤミクラゲ、耐えなさい」
 熱気がトレーナーにまで届いているのか、レイは眉根を寄せる。いや、熱気だけではない。火の手までもレイのところまで届きそうな勢いだ。
 そして、事実それは起こってしまった。

 ヘルガーの炎が、レイの長い髪に燃え移った。

「!」
「……っ!」
 レイ、そしてザキも目を見開く。
 身長とほぼ同じという長いレイの髪は、ヘルガーの放った火炎放射が飛び火してしまった。
 しかしレイはすぐに体を丸めるようにしゃがみこんで、ヤミクラゲに指示を出す。
「ヤミクラゲ、大洪水です!」
 ヤミクラゲの行動も早かった。体から河川が氾濫したかのような大量の水を放ち、燃え盛っていた炎を全て消火。そしてしゃがんでいたレイも水に飲まれる。
 ヘルガーは炎を消しながら襲い掛かってくる大洪水を、跳んでかわそうとするが、
「動くなヘルガー!」
 ザキが声を荒げてそれを制止。ヘルガーは動かず、そのまま大洪水に飲み込まれてしまった。
 そして、大洪水によってもたらされた大量の水が引く。
「…………」
 レイは無言で立ち上がった。全身ずぶ濡れになっていたが、確かに髪の炎は鎮火した。しかし燃えてしまった君の長さは背中くらいになってしまい、毛先も焦げている。
「……悪ぃ。まさか、こんなことになるとは思ってなかったぜ……」
 ザキは声のトーンを下げ、気まずそうに頭をかく。しかしレイは気にする風でもなく、
「別に、気にしませんよ。正直、前の髪は長すぎて鬱陶しいと思っていましたから。散髪の手間が省けたと思っておきます」
 いや、それでも焦げた毛先とかを切り揃えたりする必要があるのだが、レイは嘘か真か、そんなことを言う。
「もしそれほど気になるのなら、あなたのヘルガーでおあいこにしましょう……というより、わざと避けさせませんでしたよね」
「………」
 レイの指摘に、ザキは黙り込む。
 ヘルガーは大洪水の直撃を受け、倒れていた。効果抜群に加えて耐久力の低いヘルガーは、その一撃で戦闘不能だ。
 ヘルガーは大洪水が来た時に、跳躍して避けようとした。しかしザキがそれを止め、結果的にヘルガーは戦闘不能となった。だがヘルガーが回避行動を起こそうとするより前に、ザキはレイの髪にヘルガーの炎が燃え移ったのを見ている。
「わたしに気を遣ったつもりなのか……まあ、関係ありませんけど。あなたは自分自身の首を絞めているだけです。悪巧みで特攻が最大限のヘルガーは驚異的、あのまま居座られてはどう対処したものかと悩んでいましたが、わたしにとってはとんだ好都合でした。しかし、あなたにとっては高火力の戦力を一匹失ったことになります。あなたの無駄な行いで、戦況はわたしに傾きましたよ」
 淡々とした、それでいて鋭く冷たいレイの声が、サンギの町に響く。
「……人が黙って聞いてりゃぁ、言いたい放題言いやがるな。あれは俺が勝手にやったことだっつーの。他人がごちゃごちゃ口出ししてんじゃねぇ」
 ザキは乱暴な口調で言って、次のボールを手に取った。
「次はこいつだ。出て来な、エレキブル!」
 ザキの二番手は雷電ポケモン、エレキブル。黄色い体に黒い模様が規則的に浮かび上がり、電気コードのような尻尾は二又となっている。
「エレキブル、グランボールダ!」
 エレキブルはヤミクラゲを囲むように大小様々な岩を浮かべ、それらを一斉にヤミクラゲへと放つ。
「全方位に悪の波動です!」
 ヤミクラゲも襲い掛かる岩に向かって悪意に満ちた波動を連射するが、大洪水の反動で特攻が下がっているヤミクラゲでは、全ての岩を破壊することは出来ず、残った半分くらいの岩の直撃を受けてしまった。
「地震だ!」
 さらにエレキブルは地面を揺り動かし、地を伝う衝撃波を生み出してヤミクラゲを攻撃。
 ヤミクラゲは特防は高いが防御はそうでもない。ヘルガー戦でのダメージ、グランボールダと地震の連撃により、かなりダメージが蓄積されている。
「決めるぞエレキブル! ワイルドボルト!」
 エレキブルは全身に弾ける電撃を纏い、ヤミクラゲに向かって全力疾走。水中ならいざ知らず、地上でのヤミクラゲの機動力などたかが知れている。
 結果、ヤミクラゲはワイルドボルトの直撃を受けて吹っ飛ばされ、戦闘不能となった。
「戻ってください、ヤミクラゲ」
 レイは淡々とヤミクラゲをボールに戻し、次のポケモンを繰り出す構えに入る。
「電気タイプ、そして岩タイプの技……となるとやはり、このポケモンしかいませんね。おいでなさい、ヨノワール!」
 レイの二番手は、手掴みポケモン、ヨノワール。暗色のずんぐりとした体、腹には大きな口があり、頭にはアンテナ。顔はのっぺりとしており、かなり不気味な意匠だ。
「また変なのが出て来やがったな。エレキブル、グランボールダ!」
 エレキブルは拳を地面に打ち付けて無数の岩石を浮かび上がらせる。そしてそれらを一斉にヨノワールへと放ち、ヨノワールを岩石で覆ってしまうが、
「ヨノワール、地震です!」
 突如、ヨノワールを球状に覆っていた岩石が弾け飛んだ。ヨノワールは平然としいる。どうやらダメージはあまり通っていないようだ。
「もう一度地震!」
「ケッ、こっちも地震だ!」
 ヨノワールとエレキブルは同時に地面を揺らし、地震を放つ。どちらも途中でぶつかり合い、せめぎ合うこともなく相殺された。
「怒りの炎です!」
 ヨノワールは腹の口から燃え盛る業火を放つ。業かは怒り狂ったような蠢き、エレキブルへと迫っていく。
「突っ切れエレキブル! ワイルドボルト!」
 エレキブルも弾ける雷電をその身に纏い、ヨノワールへと駆けていく。その途中で業火が襲い掛かるが、気にせず突っ切った。
「っ、サイコパンチです!」
 怒りの炎を突っ切られたヨノワールは念動力を込めた拳を突き出すが、これもエレキブルを止めることは出来ず、ヨノワールはワイルドボルトの直撃を喰らう。
「もう一発くれてやるよ。ウッドハンマー!」
 さらにエレキブルは、樹木の力を宿した拳を固め、思い切りヨノワールを殴りつける。しかし、ヨノワールも黙ってはいない。
「ヨノワール、喰らいつく!」
 ヨノワールは腹の口をガバッと開き、エレキブルを飲み込んでしまうような勢いで喰らいついた。
「なっ……ちっ、エレキブル、引き剥がせ! ウッドハンマー!」
 エレキブルは拳を何度もヨノワールに打ち付けるが、ヨノワールは頑として離そうとしない。
「わたしのヨノワールからは逃れられませんよ。そして、この距離なら外すことも相殺されることもないでしょう。ヨノワール、地震です!」
 ヨノワールは大地を揺るがす一撃を秘めた拳を、エレキブルに振り下ろした。
 エレキブルは絶叫する。当然だ、効果抜群となる地震の衝撃を直接体に叩き込まれたのだから。しかし、エレキブルはまだ戦闘不能に放っていなかった。
「しぶといですね。ですが次で終わりです。ヨノワール、地震!」
 ヨノワールは再び拳を振り上げ、エレキブルへと振り下ろすが、
「エレキブル、ワイルドボルトだ!」
 その瞬間、エレキブルは全身に激しい雷電を纏う。バチバチと弾ける電撃は、喰らいついているヨノワールにも伝っていく。それも、弱点となる腹の中へと流れていった。
 弱点に流れ込んだ電流に驚いたのか、ヨノワールはバッとエレキブルから離れてしまう。地震は失敗、喰らいつくからも解放された。
「エレキブル、突っ込め!」
 そしてそのまま、エレキブルはヨノワールへと突撃した。隙だらけだったヨノワールは吹っ飛ばされて地面をガリガリと削っていく。そして——

 ——エレキブルも、その場に倒れ込んだ。



今回はザキ対レイのバトルです。ちなみにレイは7Pの中ではわりと好きな方です。そういえば7Pって誰が人気なんでしょうか? 作者としては少し気になります。白黒は一番フレイ、二番レイ、三番解放状態のドランという感じです。ちなみにワースト一位はガイア。リーダーのはずなのに登場回数が一番少ない上に個性が薄くなってしまった……まあそれはさておき。前回はドランの手持ちについて書きましたが、今回はレイの手持ちについて。レジュリアは女性的かつ氷タイプという理由で。残り三匹は悪っぽいという理由です。テッカニンは微妙なラインですが。それでは次回も今回の続きになると思います。お楽しみに。