二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 447章 二人 ( No.629 )
- 日時: 2013/01/20 00:31
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
ドルマインの雷に身を貫かれたシャンデラは、ゆっくりと下降していき、じきに地に落ちる。そしてガラスのような体を横たわらせ、動かなくなった。
「そんな……シャンデラ……」
リオの呼び掛ける声にもシャンデラは反応示さない。炎こそまだ灯っているが、シャンデラはもう戦えるような状態ではない。
「シャンデラ……シャンデラ!」
しかしシャンデラは動かない。今にも消えそうな炎を弱々しく灯すだけだ。
「しかし、まだ炎を灯すだけの力は残っているようですね。先のが手向けなら、今度は情けです。シャンデラが風雨に晒され続けるのはさぞ応えることでしょう。次こそ、一撃で仕留めます」
ドルマインはさっきと同じように電気を蓄積させ、力を溜める。
「ドルマイン、雷です!」
そして轟音と共に落雷が喚起される。雲間から呼び起された稲妻は、シャンデラへと向かっていき——
「ダイケンキ、ハイドロカノン!」
突如、ドルマインが吹き飛んだ。
ドルマインより一回りも二回りも大きい巨大な水の弾丸が、球状の体躯を吹っ飛ばし、壁にめり込ます。そのせいか、シャンデラに落ちるはずの落雷は、途中で消えてしまった。
「英雄……」
エレクトロは弾丸が飛んできた方に向き直り、二つの姿を視認する。
一つは海獣のような姿の貫禄ポケモン、ダイケンキ。ハイドロカノンを放ったのはこのポケモンだろう。
そしてもう一つは、イリスだ。
「間に合った……のか……?」
イリスは周囲をキョロキョロと見渡す。どうやらこの状況を把握しているわけではないようだ。
「リオさん……?」
イリスの目に留まったのは、シャンデラに寄り添い、顔を伏せたままのリオだった。そしてシャンデラの今にも消えそうな灯火と、動きのない状態を見て、気付く。
「まさか、リオさんのシャンデラが……!?」
「ええ、貴方の想像通りです。彼女のシャンデラは、私とドルマインが屠りました」
こともなげに言うエレクトロ。その言葉を聞くや否や、イリスはエレクトロに向き、厳しい表情で睨み付ける。
「お前……!」
「何をそれほど怒っているのか、私には理解しかねますね。私はただ一般的なポケモンバトルのルールに則って彼女と戦い、勝利しただけです。ただ、途中で降りだしたこの雨は、彼女とっては災厄の風となり、私にとっては勝利を呼ぶ風となっただけの話です」
鋭い眼光を向けられながらも、エレクトロは涼しい顔で受け流す。
「卑怯とか卑劣とか、非道とか邪道とか、そのようなものは我々にとっては日常茶飯事です。それに、ならば不意討ちを仕掛けてきた貴方こそ、非難されるべきでしょう」
壁にめり込んだドルマインを一瞥し、エレクトロは言う。そう言われてしまえば、返す言葉もない。そもそも不意打ちでなければ、あのハイドロカノンはドルマインには当たらなかっただろう。
「くっ、でも……」
言われてしまったことは言い返しようがなかったので、イリスは別のことを考えていた。
雨の影響を受けて強化されたハイドロカノンは、ドルマインを戦闘不能寸前にまで追い込んでいたため、もうエレクトロの手持ちはないに等しい。
イリスは他の7Pの所在こそ知らないが、それでもここでエレクトロを捉えるチャンスだと踏んだ。
(リオさんが全く動かないってことは、たぶん手持ち全てが戦闘不能。だったエレクトロも同じように、あのドルマインが最後のポケモンだと推測できる。ここであいつを捕まえられれば、プラズマ団の戦力は格段に下がるはず。攻めるなら今だ)
イリスはダイケンキに構えさせたまま、新しいボールに手を伸ばす——
「どうやら、私を捕まえる算段を立てているようですね。確かに私の戦力は先ほどのドルマインで尽きてしまいましたが、しかし私が後先考えずに総力戦を行うとお思いですか?」
エレクトロはパチンと指を鳴らす。すると、物陰から二つの何かが飛び出す。
「っ! お前ら……」
警官の着るような制服に身を包んだ二人の少年。両方ともよく似た——というよりほぼ同じ顔つきをしているが、片方は濁りきった目をしている。
普通の目をしている方がツユサ、濁った目をしているのがウズメ。エレクトロが配下に置く双子のプラズマ団だ。
「ツユサ、ウズメ。例のポケモンたちの使用を許可します。そこの英雄を叩きのめしなさい」
「うーい」
「へーい」
やる気があるのかないのか、気の抜けた返事を返す二人。
ここでまさかの増援だったが、しかしイリスはそれほど悲観していなかった。むしろ余裕の笑みすら見せている。
「何が出るかと思ったら、この二人か。それなら楽勝だ。二人いっぺんにかかってくればいいよ」
もう一つのボールを握るもポケモンを繰り出すことはせず、ダイケンキ一匹で戦おうとするイリス。
一見すれば二対一でイリスが不利、イリスの判断はおかしいものであったが、イリスはこの双子の実力を見て知っている。下っ端にも劣る実力の二人といった感じで、はっきり言って雑魚同然と認識していた。
「随分と余裕ですね。言っておきますが、彼らも伊達に聖電隊の配下を務めてはいませんよ。以前戦った時の実力が、この二人の真の実力だと思ったら大間違いです」
エレクトロはドルマインをボールに戻しつつ、忠告するような言葉をイリスに告げる。
「ツユサ、ウズメ。お行きなさい。その英雄こそが、貴方たちの嫌悪する、幸せ者です」
ピキッと、ツユサとウズメの目の色が変わったような気がした。
(……? なんだ? なんか、双子の空気が変わった……?)
二人から違和感を感じつつ、額から一筋の汗を流す。
「さーて、そんじゃ始めるかー。レッツゴー! ストータス!」
「エレクトロ様の命令だし、しょうがないかー。行ってこい! ニートン!」
ツユサが繰り出したのはストータス。ウズメが繰り出したのはニートン。どちらも7Pのフレイも所持しているポケモンだ。特にイリスにとっては、ストータスには嫌な思い出がある。
(でも、あいつのストータスほどの強敵ではないはず。だったら、ダイケンキでも十分戦える)
ダイケンキは前脚から一振りの刀を抜き、目の前の二体を睨み付ける。
タチワキコンビナートには、無数のクレーターが出来ていた。次の日には報道必至な惨状である。
野生のポケモンたちは当然ながら逃げ出し、この場所にポケモンはいない。そう思うのが自然だが、しかし二体だけ、そこにはポケモンが存在していた。
一体は空に浮かぶ超巨大ポケモン、神龍ポケモンのドラドーン。そしてドラドーンが見下ろしている、顎斧ポケモン、オノノクス。
ドラドーンは悠然と空に浮かんでいるが、オノノクスは全身傷だらけで、仰向けに倒れ込んでいた。
「ぐっ、オノノクス……!」
ムントは倒れたオノノクスを見つめ、歯を食いしばっている。
「やっぱり」
そんなムントを見下ろしているドランは、ぼそりと呟いた。
「やっぱり君も、ドランには敵わなかったね。ドランを倒せるのは、あとはゲーチスくらいなものだけど、君でもダメか」
ふぅ、とドランは声で分かるくらい深く息を吐く。そしてゆっくりと降りてくるドラドーンの背に乗り込んだ。
「アシドに呼ばれてるんだ、みんなを迎えに行かないと。じゃあね、ムント君。次会う時はもっと強くなってることを望んでいるよ。それに、ドランと君、神聖なる龍の使役者に、相応しい場を設けるよ。今度はそこで決着をつけよう。それじゃあ、ばいばい」
そして、ドランは去っていく。深い龍の爪痕を残したまま、ムントの前から姿を消した。
今回は少し短めです。リオとエレクトロのバトルは、雨によりリオの敗北。続いてイリスとツユサ&ウズメのバトルに移行します。とはいえ、あまり長くはしないつもりですが。そして後半はムントとドランのバトルのその後です。思えばドランが7Pの中で一番、謎に包まれていますよね。まあその謎も、もう少しで明らかになる……はずです。まだあとがきのスペースが残っているので、フレイの手持ちについてでも書きます。フレイは分かりやすいですね。フレイのイメージタイプである炎タイプのストータスを含め、ニートンとノコウテイは気だるげな彼女に合わせました。メタグロスは逆に、ごつくて生真面目そうなポケモンということで選びました。ちなみにフォレスこそ本当にバラバラです。アルデッパが彼のイメージタイプである草タイプという理由で選ばれていますが、それ以外に関連性はありません。それではそろそろあとがきも終わりにします。次回は残念ながら未定です。まあ、適当に予想してください。次回もお楽しみに。