二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 449章 年季 ( No.638 )
日時: 2013/01/24 23:20
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 バトルが始まる直前、ロキはレイに向かって忠告の言葉を投げかけた。
「先に言っておくけど、降参するならいまのうちだよ? ボクだって、女の子を虐める趣味はない。それに水に濡れた子が相手なんて、ビジュアル的にいいものとは言えないだろう? ボクだって自分の株を下げたくはないしね」
「今更そんなこと言うか……」
 もはや呆れるザキ。しかし彼こそが、この場でロキの力を一番理解している人物でもあるため、その忠告が決して的外れでないことも分かる。ただ、その事実がザキの逆鱗を掠めていることも、また事実である。
 ともあれ、そんなロキの忠告を、案の定レイは突っぱねた。
「不要な世話です。わたしとて7Pとしての自覚はあるつもりです。急に出てきたどこぞの輩にほいほい負けるほど弱いつもりはありません」
「そうかい、それは残念だ。でもバトルが始まれば君、きっと後悔するよ? 君とボクとじゃ年季が違う。それにボクに負けたら、君自身がどんな目に合うかも考えてみなよ。ボクは無抵抗の君をどうにでもできるんだよ?」
「おい、さっきと言ってること違うぞ」
 あくまで逃げようとしないレイ。ほぼノーダメージとはいえ、残りはレジュリア一匹だ。逆に言えば、このレジュリアに絶対的な自信がある、ということでもあるのだろう。
「御託は結構ですから、早く始めましょう。こちらもあなたがたのコントに付き合っているほど暇ではありません」
 コント呼ばわりされた挙句に一括りにされたザキは何か言いたそうに眉根を寄せたが、口をつぐんだ。なにか言ってロキがそれに反応すれば、また話がややこしくなりそうだったからだ。
(昔っからどっかふざけたとこのある人だったけど、少なくとも一年前に蒸発するまでは、こんなに酷くはなかった。一体この一年でなにがあったんだ……?)
 ザキの知人友人は一年で様変わりしたものが多いが、それは父親も例外ではない、ということかもしれない。
 ともかく今はバトルである。
「こちらか行かせてもらいますよ。レジュリア、放電です!」
 レジュリアは両手を広げ、撒き散らすように電撃を放つ。広範囲を攻撃する放電は、アメリシアの機動力ではそうかわせないが、
「アメリシア、守るだよ」
 アメリシアは防御壁を展開して放電から身を守った。
「潮吹きだ」
 そしてすぐさま攻撃に転じる。雨、タイプ一致、体力満タンの状態から放たれる潮吹きの勢いは凄まじいの一言に尽き、ロケットでも発射するかのような勢いで潮水が天に昇っていった。
 潮水はやがてレジュリア目掛けて落下する。その勢いは噴き上げられた時以上に凄まじい。
「レジュリア、アイスバーン!」
 しかしレジュリアは氷の衝撃波を放ち、襲い掛かる潮水を完全に凍結させてしまう。凍らせてしまえば、勢いは関係なくなり、如何に強力な潮吹きでも完全に無力化できる。無論、レジュリアのように特攻が高いからこそできる芸当だが。
「わたしのレジュリアの冷気は、他の氷タイプのポケモンの追随を許しません。一点突破に限れば、伝説のポケモンにすら匹敵すると自負しています。雨を降らせて自分を有利にする作戦だったのかもしれませんが、水タイプのポケモンを繰り出した時点で、あなたの敗北は確定したようなものです」
 淡々と、しかし得意げに語るレイだが、ロキは表情を崩さず、その言葉を一笑に付す。
「そんなことを言っている時点で、やっぱり君はまだお嬢ちゃんだよ。なにをそんなに怒っているのかさっぱりだけど、そんなに興奮するから、周りが見えていないじゃあないか」
「? なにを言って——」
 直後、レジュリアの頭上で凍り付いていた潮水が、砕け散った。そしてレジュリアは、大量の潮水に全身をくまなく打ち付けられる。
「っ!? レジュリア!」
 その一撃で、レジュリアの体力はかなり削られたよようだ。まだ戦闘不能ではないが、足元がおぼつかない。
 なにがあったのか理解できず困惑するレイに、ロキはさもそれがあたりまえのことであるかのように説明を始めた。
「潮吹きを放つ直前、潮水の塊を二分割してそれぞれ打ち上げたんだよ。それも水量や勢いを調整してね。つまり噴き上げられた潮水の塊は二つあり、調節した水量と勢いによってタイムラグを生じるから、それぞれが時間差で落ちてくる。君が凍らせたのは一発目で、二発目の警戒を怠ったのがまずかったね」
「…………」
 種を明かすロキを、レイは驚きと同時に鬼気迫る眼力で睨み付けるが、
「言っただろう。君とボクとじゃ、年季が違うって」
 ロキはどこ吹く風で受け流す。年季の違いと言うなら、こういう面にも表れていた。
「さて、続けて行くよアメリシア。雷」
 アメリシアは雷雲を呼び出し、レジュリアに向けて稲妻を落とす。雷は威力は高いが命中率が低い。しかし雨天状態の今ならほぼ必中だ。手負いのレジュリアではかわすのは難しいだろう。
「サイコバーン!」
 なのでレジュリアは念動力で爆発を起こし、衝撃波を放って雷を相殺する。
「続けて放電です!」
「守る」
 すかさず攻撃に移るレジュリアだが、アメリシアの守るで放電は防御されてしまった。
「気合球!」
「守るだ」
 レジュリアは連続で攻撃を仕掛ける。気合を凝縮した球体を生成し、アメリシアへと発射するが、またしても防御されてしまう。だがレイは焦りも苛立ちも見せず、攻撃を繰り返す。
「そろそろ……レジュリア、放電!」
「守るだよ」
 三度目の放電を放つレジュリア。アメリシアは今までと同様に守るで防御しようとするが、防御壁は展開されず、電撃をまともに受けてしまった。
「守るは万能な防御技ですが、連続で使用すると成功率が下がります。故に連続攻撃には弱い。レジュリア、サイコバーンです!」
 放電を受けて麻痺してしまったらしいアメリシアは、守るを使うことができずにサイコバーンの直撃を喰らった。
「やるねぇ。でも、それくらいは想定済みさ。アメリシア、自己再生」
 放電とサイコバーンの連続攻撃で大ダメージを負ったアメリシアは、自然治癒能力を活性化させて自身の傷を癒す。
「大方、アメリシアにとりあえず手傷を負わせて、潮吹きの威力を下げるつもりだったんだろうけど、そう簡単には行かないよ」
「…………」
 ロキの物言いに、レイは押し黙った。どうやら図星のようだ。
「さて、と。あまり長々と戦っていては、君にもザキくんにも悪い。そろそろ決めさせてもらおうか。アメリシア、雷だ」
 アメリシアは再び雷雲を呼び、轟く稲妻を落とす。稲妻は一直線にレジュリアへと向かっていくが、
「レジュリア、サイコバーン!」
 レジュリアが引き起こした念動力の爆発によって、稲妻は消滅してしまう。
 しかし、アメリシアの攻撃は止まらない。
「潮吹き」
 アメリシアは凄まじい勢いで潮水を空へと噴射した。
「レジュリア、潮水が落ちてきたところに、アイスバーンで相殺です」
 時間差で落ちてくる潮水に備えてだろう、事前に指示を出すレイ。今度は三連続、四連続と来るかもしれないと気を引き締めるが、その意気込みはあまり意味がなかった。なぜなら、

 大量の潮水が、まるで滝のようにレジュリアへと落ちてきたのだから。

「っ!」
 いくらレジュリアでも、この水量は凍り尽くせない。落ちてきたところを凍らせようと、次から次へと潮水が襲い掛かってくるため、結果的にアイスバーンを意味をなさず、レジュリアは潮水に飲み込まれてしまった。
「レジュリア……!」
 またしても潮吹きの直撃を受けたレジュリアは、かなりボロボロになっていたが、まだ戦闘不能ではなかった。しかし、
「雷だ」
 間髪入れずアメリシアは超高電圧の雷を落とす。そしてレジュリアは、轟音と共に襲い掛かる稲妻に貫かれ、その場に倒れ込んだ。
「くっ……!」
「さあて、これで君の手持ちは全て戦闘不能だね。どうする? ボクは君をどうこうしようとする気はないけど、ボクの息子は、そういうわけにもいかないみたいだよ?」
 ロキはアメリシアをボールに戻し、ザキを一瞥しつつレイを揺さぶるようなこと言う。
 しかし今のレイに抵抗する術はない。ザキにはポケモンがいないとはいえ、身体能力で勝るとも思えない。部下が何人かいれば、逃げ切れた可能性もあるのだろうが、退かせたことが裏目に出てしまった。
 ひとまずレジュリアをボールに戻して、レイは周りを見渡す。と、その時だった。

「やっほー、レイ。迎えに来たよ」

 雲間を縫うようにして、巨大な何かが現れた。胴は太く長く、頑丈そうな鱗がその身を覆っている。そしてその背には、一つの人影。
「ドラン、さん……」



なんか終わり方が微妙な気がしますが、いつだったかもう言わないと言った気がするので気にしないことにします。今回はロキ対レイですが、ロキの圧勝です。まあ、雨で自分を有利な状況にしてましたからね。守るもありましたし、大技の多いレジュリア相手なら有利でしょう。そして最後にはドランが出て来ました。なぜ出て来たのかは……まあ、大方予想できると思います。では次回はイリス対ツユサ&ウズメのバトルにする予定です。お楽しみに。