二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 457章 毒液 ( No.659 )
- 日時: 2013/02/07 21:11
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「戻りな、ドクロッグ」
ホミカはドクロッグをボールに戻す。これでホミカの手持ちは残り一体。対してイリスの手持ちは二体。リーテイルが毒を負ったのは痛いが、どれでもほぼノーダメージなので、有利にバトルが展開できるだろう。
しかし、それでもホミカは勝ち気な笑みを崩さない。むしろ不利な状況にも関わらず、自らの勝利を確信しているようですらあった。
「さあ、ライブもいよいよ大詰め。サビまで突っ切ってスパートかけるよ!」
照明が強くなり、BGMのテンポが速くなる。それに合わせ、ホミカたちの演奏も激しくなっていく。
「これがあたしのエースだッ! 爆裂ッ! ダストダス!」
一際大きな音が響いた瞬間、ホミカの最後のポケモンが繰り出される。
ゴミ捨て場ポケモン、ダストダス。産業廃棄物が寄り集まったような巨体に、破れたゴミ袋覆面のようにかぶった出で立ち。二本の腕は細長く、右腕の指先には三つの穴がある。
「ダストダスか……」
イリスは苦虫を噛み潰したような顔をする。
かつてイリスは、とあるプラズマ団の科学者のダストダスに冗談でなく殺されかけたことがあるのだ。
ジム戦なので危険な毒ガスなどは出さないだろうが、、その一件以来ダストダスはどうしても苦手意識を持ってしまう。
「……まあ、とにかくジム戦だ。リーテイル、後続のために少しでも削っておくよ。エアスラッシュ!」
リーテイルは背中の葉っぱを羽ばたかせ、空気の刃を飛ばし、ダストダスを切り刻む。
「いい気になれるのも今のうちだよ! ダストダス、ロックブラスト!」
「かわせ!」
ダストダスは指先の三つの穴から岩石を連射するが、リーテイルは横に逸れてかわす。そしてそのままダストダスへと接近する。
「ドラゴンビート!」
そして龍の鼓動のような音波を発射するが、
「かわしな、ダストダス!」
ダストダスは意外な跳躍力で跳び上がり、音波をかわしてしまう。さらに、
「リーテイルの上に着地!」
着地点をリーテイルに定め、その巨体でリーテイルを押し潰してしまう。
「なっ……リーテイル!」
ダストダスの下で必死にもがくリーテイルだが、ダストダスの重量では脱出はできない上、うつ伏せでのしかかられているので技を放ってどかすことも不可能だ。
「さあ皆! 楽しいパフォーマンスの時間だ!」
突然ホミカがそんなことを言いだすと、会場が再び一気に沸き上がる。そしてダストダスは足の下のリーテイルを引っ張り出し、
「ドレインパンチ! ラッシュ!」
伸縮自在の腕から放たれる拳でリーテイルを殴打する。それも四方八方から絶え間なく繰り出される乱打。ダストダスの性質をうまく利用した連続攻撃だ。
ひとしきりダストダスのタコ殴りが終わる頃には、リーテイルはかなり疲弊していた。効果いまひとつの技でも、あれだけ喰らえばダメージも蓄積する。
しかも、ダストダスの攻撃はまだ終わらなかった。
「サイコキネシス」
念動力でリーテイルを持ち上げ、空中で動きを止める。ご丁寧に体を横に向けているため、エアスラッシュやドラゴンビートで反撃することもできない。この辺り、手抜かりはないようだ。
「これでフィニッシュだ! ダストダス、ベノムショック!」
ダストダスは指先をリーテイルへと向け、三つの穴から今度は毒液を噴射する。
それなりの勢いはあるが、ハブネークのヘドロウェーブとは比べるべくもないその毒液をリーテイルは浴びる。すると次の瞬間、リーテイルは甲高く絶叫し、それきり動かなくなった。
「!? リーテイル!」
リーテイルは戦闘不能。だがイリスは納得がいかなかった。
確かに毒技はリーテイルに効果抜群で、ダメージも受けていたが、あの程度の勢いの攻撃一発で戦闘不能になるなど、ありえない。
そんなイリスの思いを察してか、ホミカはしたり顔で口を開いた。
「もしかしてベノムショックを知らない? この技はね、毒状態の相手にぶっ掛けると威力が倍になる超パンクな技さ。並大抵のポケモンじゃあ、まず耐えられないね」
リーテイルは並大抵のポケモンではないと抗議したいイリスであったが、しかしベノムショックでやられてしまったことは事実だ。黙ってリーテイルをボールに戻す。
「さあさあ、お客さんがお待ちかねだ。早く最後のポケモンを出しなよ」
ベースを弾きながら急かすホミカ。それを聞き流しつつ、イリスは次のポケモンをなににするか考えていた。
(どうする……毒菱がある以上、耐久型のデスカーンは使いにくい。ベノムショックは脅威だけど、猛毒もあるからここは耐久力のあるポケモンがいいな。となると、デンリュウ、ズルズキン……いや)
考えをまとめ、イリスは最後のボールを手に取り、構える。
「やっぱり最後はお前だ。頼んだ、ダイケンキ!」
イリスの最後のポケモンは、エースダイケンキ。
ダイケンキはフィールドに出ると、顔をしかめる。毒菱を踏んで猛毒状態になったのだ。
ホミカは場に出たダイケンキを一瞥すると、口の端を吊り上げる。
「へぇ……そのポケモンがあんたのエース?」
「? ええ、まあ……」
いきなり言われたので口ごもるイリス。それと、少し違和感もあった。
エースと言えばリーテイルもエースだ。毒こそ受けたが、ほぼ一方的にドクロッグを倒したのはなにも相性だけではない。それはホミカも分かるだろうに、ダイケンキだけを指してエースと言及するのは少し妙に思えた。
だが余計な詮索は後回し、今はバトルだ。
「ダイケンキ、シェルブレード!」
ダイケンキは前脚の鎧から一振りのアシガタナを抜刀し、ダストダスへと特攻する。
「迎え撃つよダストダス! ベノムショック!」
対するダストダスも、指先の噴射口をダイケンキへと向け、毒液を発射するが、
「受け流せ!」
ダイケンキは水のエネルギーを纏ったアシガタナの側面で毒液を受け、そのまま強引に横へ流してしまう。
「なにそれ!? ありえない!」
その様子を見て、ホミカは驚愕する。
そしてダイケンキはダストダスへと接近し、もう一振りのアシガタナも抜き、二刀流でダストダスを切り裂いた。
「メガホーン!」
加えて勢いよく角を突き出し、ダストダスを壁まで吹っ飛ばす。
「まだだダストダス! ロックブラスト!」
「弾き返せ! シェルブレード!」
ダストダスはなんとか立ち上がって岩石を連射するが、ダイケンキも後ろ足で立ち、器用にアシガタナを回転させることで岩石を全て弾き返してしまう。
「吹雪だ!」
ロックブラスト発射後の隙に、ダイケンキの猛吹雪が放たれる。吹き荒ぶ雪の風に、ダストダスの体も凍りついていく。
「やっば……ダストダス、ドレインパンチだ!」
ダストダスは拳を握り、まずは凍り始めた自身を殴って氷を粉砕。そしてそのまま腕を伸ばし、ダイケンキに乱打を浴びせようとするが、
「シェルブレード!」
二刀流のアシガタナを構えたダイケンキは、四方八方から襲い掛かる拳を全て捌ききってしまう。ダストダスの拳は斬られ、突かれ、弾かれ、絡め取られ、ことごとく防がれてしまい、ダイケンキに掠りもしない。
やがて乱打が止まり、ダストダスの腕もしゅるしゅると元に戻っていく。
「ダストダス、ベノムショック!」
「吹雪で迎え撃て!」
ダストダスは指先の照準をダイケンキに定め、毒液を噴射。しかしダイケンキも同時に吹雪を放っており、毒液は吹雪で凍らされ、ダストダスも吹雪の余波を受ける。
「まだまだ! ロックブラストだ!」
「ダイケンキ、シェルブレード!」
ダイケンキはシェルブレードを回転させながら突っ込み、ダストダスの放つ岩石を片っ端から弾いていく。そしてアシガタナの間合いまで接近すると、二連閃のシェルブレードでダストダスの巨体を切り裂いた。
「ドレインパンチ!」
攻撃後の隙を狙ったつもりなのか、ダストダスの拳がダイケンキに襲い掛かる。しかしダイケンキは素早くアシガタナを引き戻して拳を弾く。
「ベノムショック!」
続け様に放たれた毒液も、水のエネルギーを纏ったアシガタナで受け流され、ダイケンキはダストダスと距離を取った。
どうやらダイケンキはこのダストダスとは相性が良いようだ。ダイケンキのアシガタナを用いれば、ダストダスの技のほとんどに対抗できる。
だが、ホミカの表情は余裕、というより、突破口を見つけたと言うかのように口元が勝ち気に緩んでいる。そしてその口を開いた。
「あんたのダイケンキ、強いね。あたしのダストダスがここまで追い詰められるなんて思わなかったよ。でもそのダイケンキには穴がある。やっと攻略法を見つけたよ」
ライブハウスに響き渡るように、強く激しくベースを弾き、ホミカは叫ぶ。
「行くよ! あんたのじょーしきぶっ飛ばして、新しい世界に連れて行ってあげる!」
ホミカ戦その六です。遂にホミカのエース、ダストダスの登場。ベノムショックでリーテイルを下しますが、ダイケンキに苦戦。しかしホミカがその攻略法を発見します。分かる人は分かるでしょうが、ダストダスのバトルスタイルはアニメ版からの引用が多いです。ただ往復ビンタだとちょっと威力が低いので、ドレインパンチの連打にしました。こっちなら体力も回復しますしね。では次回、ホミカ戦決着です。お楽しみに。