二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 27章 黄昏 ( No.66 )
日時: 2011/08/02 20:20
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

サザナミタウン。
海辺に別荘が並ぶイッシュ最大の避暑地にして観光地。そして夏にはバカンスに来る人も多いとの事。
ちなみにこの街の別荘の大半は四天王、カトレアの物で、西の端にはブルジョワール家という富豪の別荘がある。
イリス達一行——とは言っても、シザンサスはサザナミタウンに用があったらしく、この街に来た時に別れたので、今はイリスとNの二人だけだ。
その二人はポケモンセンターの宿舎にて、談話していた。
「ミクリさんに負けたのがそんなに悔しかった?」
「別に。勝ち負けるのが勝負だからね。負けて悔しくはあるけど、なんだかな……」
イリスは二段ベッドの上段に寝転びつつ言う。何か、心の中にわだかまりがあるのだ。
「……ちょっと、外を歩いてくるよ」
イリスはベッドから降りて外へと出る。Nはそれを追わない。追っても、何もできないだろうし、イリスなら地力で何とかすると思っているからだ。



イリスはポケモンセンターから出ると、夕日が綺麗な浜辺に座り、一人黄昏れる。
「なーんか……昔の事思い出した気がするな……」
イリスは昔の事なんてあまり覚えていない。それよりも今起こっている事の方が、よっぽど印象深いものだからだ。
「父親の顔も忘れちゃったしな……」
イリスの父親はイリスが六歳前後の時に蒸発した。正直その歳ならば父親の顔くらい覚えていても不思議ではないのだが、覚えていないのだ。
「写真もないしなー……なんか見覚えのない女の子の写真はあったけど……そういえばチェレンも昔、僕の傍によく女の子がいたって言ってたっけか……全然覚えてないな……」
誰かがいたような気はするものの、霞がかったように見えてこない。
「あー……。……あ?」
イリスはバタンと砂浜に寝転ぶと、すぐ傍に人がいることに気付いた。
(今の今まで気付かなかったとか、どんだけ物思いにふけってたんだよ、僕は)
イリスは心の中で自分を毒づきながら、その人を見る。
その人はまだ若い——十七、十八くらいの女性、背が低めで童顔っぽいのでもっと若い——もしかすると少女と言っても良いくらいの年齢かもしれない。
髪は青色のショートヘアーで、服装はかなり薄い水色——パッと見白色に見えるほど——のワンピースを着ていて、避暑地に来たお嬢様といった風の人だった。
「……? ああ、すいません。すぐ隣でボーっと立ってて……お邪魔でしたか?」
「いえ、そんな事ないですよ。お構いなく」
その人はこちらに気づいたらしく(イリスが言える事ではないが遅い)イリスに頭を下げる。
その声は落ち着いていて、口調は丁寧なものだ。あまり良い例えではないとイリスは思うが、7Pのエレクトロとレイを足して二で割った感じだ。
「私、レイカといいます。あなたは?」
「僕はイリスです。しがないポケモントレーナーですよ」
イリスは起き上がりつつ名乗る。起き上がった理由は察してほしい。
「……なにか、悩んでいるように思われましたが、どうしたんですか?」
レイカは訊ねてくる。イリスはどう返したものか悩みつつ口を開く。
「何ていうんですかね……バトルに負けたらいろいろと思い出してしまいまして、頭の中が混乱してるというか……負けを実感した反動で脳に障害が起きているというか……できれば前者の方が良いですけど……」
イリスは曖昧に返答する。イリスもよく分かっていないのだ。
「……もしよければ、バトルのお相手ならしますよ?」
「ああ、それはありがたいのですが、そういうのじゃないんです。なんというかこれは、原因そのものに対して何かアクションを起こさないと解決しない類のものですよ……勘ですけど」
イリスはレイカの申し出を断る。今イリスに必要なのは、闘いではない。
「まあ、その起こすアクションにしたって何をするかとか全然分かってないですけど。それに、切っ掛けというか、そういう後押ししてくれるものが必要そうですね……」
レイカはそれを聞き、考え込む。イリスは半分期待しながらレイカの返答を待ち、そして
「それなら、海上レースに参加してはいかがでしょう?」
「海上レース?」
「はい。明日、サザナミ湾で海上レースという、サザナミタウンの観光業の一環として行われるイベントがあるんです。私もそれに参加するのですが、イリスさんもどうですか?」
「海上レースねぇ……」
イリスはしばし考え、結論を出す。
「まあ、出るだけ出てみましょうか。もしかしたら何か掴めるかもしれませんし、何か思い出すかもしれませんし、何かがどうにかなるかもしれませんしね」
そしてイリスは明日、サザナミタウン主催の海上レースに参加することとなった。



「イリス、何見てるの?」
夜、イリスとNはポケモンセンターの宿舎にて、談話を再会。
「サザナミタウンで明日行われる、海上レースのチラシ。僕、これに出ようと思うんだ。優勝者には賞品もあるみたいだし」
「へえ……。……イリスが出るなら、僕も出ようかな。面白そうだし」
「出る出ないは君の自由だよ。……さて、寝るかな。明日は別に早くないけど、体力を回復させなきゃね」
そう言ってイリスは眠りにつく。

そして明日、サザナミ湾には恐怖の集団が襲い掛かるのであった。



今回は知る人ぞ知るレイカが登場しました。え?ジムリーダーやってる普通のミクリがいるのにレイカがいるのはおかしい?ふっ、そんな事は作者都合の一言で済ませれば……すいません、あやまりますごめんなさい。レイカ登場の際に捻じれてくる裏設定は見逃してください。レイカは非公式のポケモン、アルタイル・シリウスに出てくるジムリーダーなのですが……ああ、どうにもあとがきが長くなって文字数がやばいですね。すみませんが、レイカについて知りたい人は、個人的に調べてください。では、次回は海上レースです。水の都のパクリ?人聞きの悪い、そんな訳ないじゃないですか。では、次回もお楽しみに。