二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 459章 青海波 ( No.663 )
- 日時: 2013/02/08 23:49
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「あ、そうだ。ねぇイリス」
「はい? なんですか?」
ひとしきり歓声を受け、熱狂が収まってきた頃、ホミカはイリスを呼び留めた。
「イリゼから色々聞いたけどさぁ、あんた、あんまあいつの言うこと鵜呑みにしない方がいいよ」
「え? はあ……」
あまりにも唐突に言われたので、なんのことだか分からず、曖昧に返事をしてしまうイリス。しかしホミカは構わず続けた。
「ここはこうする、こう動く、そういうの他人の意見で決めてない? それも悪いことじゃないけど、ポケモンもバトルも、そんでもって人生も、大事なのは自分がどうしたいか、なにをしたいかってこと。もっと自分のしたいように生きる方が断然楽しいし、後悔もしない。少なくともあたしはそうやって生きてるよ」
なにやら一つ二つ年上程度の少女に人生を説かれてしまったが、言いたいことは分かる。
そしてイリゼの名前が出たことで、イリスは一つ思い出した。
「あの、ホミカさん。僕も聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
「んー? なに?」
「父さんがどこにいるか、知ってたりしませんか?」
ホミカはイリゼと連絡を取っていたようなので、もしかしたら知っているかもしれないと思って聞いてみたが、
「いや……確かにイリゼには世話になってるけど、特別親しいってわけじゃないしねぇ……」
どうも知らないようで、軽く肩を落とすイリスだったが、あ、でも、とホミカは続けた。
「前に連絡取った時は、セイガイハシティにいるって言ってたかな」
「セイガイハシティ……」
以前、イリスたちがヒオウギでプラズマ団と戦っていたが、それと同時進行でプラズマ団はセイガイハにも進攻していたらしい。ただ、大きな動きも見せずに撤退したようだが。
イリゼが今どこにいるのかは分からなかったが、手掛かりは見つけた。
イリスの次に向かう場所は、セイガイハシティだ。
セイガイハシティはサザナミタウンに次ぐリゾート地で、サザナミタウンがプラズマ団の襲撃を受けた今、暫定的なイッシュ一になっている。
イッシュ地方でもかなり北に位置しているセイガイハシティへの交通手段は、かなり制限されている。ジャイアントホールを抜け、二十二番道路を通過するか、海辺の洞穴と二十一番水道をを北上するしかない。現在はマリンチューブという海底トンネルが設計されているらしいが、あと一、二年かかるとのことだ。
ジャイアントホールはキュレムの影響もあり、近づくの避けたいので、イリスは海辺の洞穴を抜けてセイガイハシティへとやってきた。
「ここが、セイガイハシティ……」
海面が太陽光を受けてキラキラと光り輝いている、どことなく南国の雰囲気が漂う街だった。特徴なのはやはり、桟橋の上に建てられた民家だろう。イリスからすれば、浅瀬になっているとはいえ、わざわざ海の上に家を建てる意味が分からない。
「とりあえず、父さんを探さないと」
とは言うものの、イリゼがここにいたというだけであり、今もいるかどうかは分からない。そもそもイリゼが真実を言っていたかどうかも疑わしい。
だがここに手掛かりがあると仮定しなければ始まらないのも確かだ。ロキはいつの間にか消えてしまい、前夜と今朝、二回ほどイリゼと連絡を取ろうとしたが、やはり繋がらなかったのだから、今はがむしゃらにでも探すしかない。
そう思って桟橋を歩いていたら、突如、海面からなにかが飛び出した。
「っ!?」
激しく水飛沫を立ててイリスの前に降り立ったのは、人だ。日焼けした褐色の肌に、青系統の色が基調の、ヒレが付いた水着。後ろに流れ気味に暗青色の髪には白い斑点があり、首からは水中用ゴーグルを下げている。
正に、海の男というような出で立ちの男だ。
「おはんがイリスか?」
「へ? えっと、はい……」
男は開口一番、そんなことを聞いてきた。イリスが困惑しつつ曖昧に返すと、男は快活に笑い、
「そうかそうか、おはんがイーちゃんの息子か。やっぱ似とる」
「……イーちゃん?」
イリスは首を傾げる。文脈から察するに、おそらくイリゼのことを指しているのだろうが、あの父親がそんな愛称で呼ばれているというのは少し意外だった。
それはともかく、この男はどうもイリゼの知り合い。そしてイリスのことも知っているということは、なにかイリゼに言われているのだろう。一体なんなのかと思えば、
「おいはイーちゃんから頼まれごとしとったい。いっとついてくるとえーよ」
と言って歩き出した。訛った言葉遣いなのでよく分からなかったが、ついてこいと言っているのだろう。
「あ、ちょっと!」
イリスのことなど気にもしていないような足取りでずんずん進んでいく男にイリスは必死でついて行く。しばらく歩くと、浜辺に出た。
「あ、あの……」
たまらずイリスは男に問いかけようとするが、その時、海面からぶくぶくと泡が立つ。
次の瞬間、水面からなにか巨大な生き物が浮上してきた。
「……!」
その生き物は、ポケモンだ。それもかなり大きい。ドランのドラドーンとタメを張れるほどの巨体だ。
「でかい……!」
「これでも普通のホエルオーにしてはこまんちろったい」
たぶん、普通のホエルオーよりも小さいと言いたいのだろう。しかし13m近くの巨大な生き物を小さいと言える感性は、残念ながらイリスは持ち合わせていない。
「ほな行こーかい」
男は見上げるほど巨大なホエルオーに足をかけると、そのままぴょんぴょんと跳ねるような動きでホエルオーの背に乗った。
「おはんもはよきぃ」
いやいや、無理だろ。と言うことすらイリスにはできない。
男は馴れているのだろう、軽快に上っていったが、イリスにそんなことができるはずもない。今まで長いこと旅をしていたので、体力にはそこそこ自信があるが、ホエルオーの湿った体をよじ登るなんて不可能だ。
「……無理ですよ」
辛うじてか細い声を絞り出したイリス。すると男は、
「? そーかい。ほなホエルオー、ブルンゲルを呼んできぃ」
ホエルオーは少しだけ体を沈ませる。すると数十秒後、水面から新しいポケモンが飛び出した。
ピンク色の海月のようなポケモン。浮遊ポケモンのブルンゲル、その雌個体だ。
「って、うわっ!」
ブルンゲルは出て来るや否や、触手をイリスの体に巻きつける。何事かとイリスは抵抗するが、ブルンゲルは意に介さずふわふわと浮き上がり、イリスをホエルオーの背に乗せる。
「よーし、出発進行じゃあ!」
そしてホエルオーは、沖に向かって進みだした。一体どこに行くというのだろうか。
それよりも前に、イリスはこの男に聞きたいことがあった。
「あの……あなたは、誰なんですか? 父さんの知り合いのようですけど……」
「ん? おお、悪いな! おいの名前はシズイ、イーちゃんの親友じゃい。そんで、セイガイハジムのジムリーダーでもある」
「えっ? ジムリーダー?」
イリゼの親友というのはともかく、ジムリーダーというのは意外だった。そして、ということはいま向かっている先は——
「お、見えてきやったよ。あれがセイガイハジムじゃ」
視線の先には沖が広がっている。が、その中にどんとそびえているのが、一つの建造物。ポケモンリーグ公認のシンボルの付いたジムだ。
「海のど真ん中にジムがあるなんて……」
内装がジェットコースターだったり、大砲が置いてあったり、ライブハウスがジムを兼ねていたりというのも大概だが、海のど真ん中にあるというも驚きだ。
「ほい、到着じゃ」
ジムの周りは桟橋に囲われており、ホエルオーの体を滑り降りて桟橋へと降り立つ。
ホエルオーはまた海中に潜っていった。シズイは桟橋をスタスタを進んでいき、建物の中に入る。イリスもそれにつられ、ジムの中に入った。
ジムの中はかなり広い。普通のものよりも遥かに大きなバトルフィールドは海水で満たされており、水面には蓮のような葉っぱがいくつも浮いている。
「ほいじゃージム戦、始めよーかい」
「……え?」
どういうわけか、イリスとシズイはバトルをすることになった。
使用ポケモンは五体で、他は一般的なジム戦ルールと同じく、イリスは入れ替え可能、シズイは不可というものだ。
シズイはどこからかいくつものモンスターボールが入った網を取り出すと、その中の一つを手に取った。
「まずはおいからポケモンを出させてもらうったい。気張ってけー、ママンボウ!」
シズイの一番手は介抱ポケモン、ママンボウ。ピンク色のマンボウのような姿のポケモンだ。
「やっぱり水タイプ。なら最初はこのポケモンかな。出て来て、デンリュウ!」
イリスの初手は、電気タイプのデンリュウ。デンリュウは蓮の上でバランスを取りつつ、戦闘態勢に入った。
イリス対シズイのバトルが今、始まる——
はい、今回はシズイ登場です。彼は鹿児島弁らしいのですが、かの地の方言はわざと分かりにくい構造になっているようですね。つまり白黒がなにを言いたいかというと、シズイの方言が上手くかけていないかもしれませんがご了承くださいということです。一応、調べながら書いているのですが、それでも限界があるもので……それはともかく、シズイ戦が始まりました。イリスにとっては初めての水中フィールドですかね? では、次回もお楽しみに。