二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:468章  対策 ( No.676 )
日時: 2013/02/11 22:08
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 メタゲラスの装甲すらも引き千切るようなグライオンのハサミギロチン。その一撃必殺の攻撃で、メタゲラスは戦闘不能になってしまった。
「う……戻ってくれ、メタゲラス」
 イリスはメタゲラスをボールに戻す。
 これでイリスの手持ちは残り二体。しかしイリゼにはまだ四体残っている。戦況はかなり絶望的だ。
「いや……でもまだ、僕にはこのポケモンがいる。頼んだよ、ダイケンキ!」
 イリスの五番手のポケモンは、ダイケンキだ。グライオンに対しては有利になタイプを持つ。
 イリゼはダイケンキの姿を見ると、怒ったように眉根を寄せる。そして、ぼそりと呟いた。
「やっぱ来やがったか……てめぇのエース」
 エース、という部分を強調したイリゼは、ボールを二つ取り出す。
「戻れ、グライオン」
 するとグライオンをボールに戻し、もう片方のボールを構える。
「てめぇにはかつてない敗北を味わわせてやるよ。出て来い、トリトドン!」
 イリゼが交代で繰り出すのは、ウミウシポケモン、トリトドン。青色の体色で、頭部から背中にかけては深い緑色。体は軟体動物のようにぐんにょりしている。
 トリトドンは地域によって色や体つきが異なる稀有なポケモンで、この個体は東の海と呼ばれる個体だ。
「こいつは俺がシンオウ地方に行ったときに捕まえたポケモンでな……まあ、そんなことはどうでもいいか。ほら、早くかかってこいよ」
 くいくいっと人差し指で挑発するイリゼ。勿論、イリスはそんな安っぽい挑発にはのらない。が、先手は取った。
「言われなくても! ダイケンキ、シェルブレード!」
 ダイケンキは両脚からアシガタナを抜刀し、二刀流に構える。そして
トリトドンに斬りかかろうとするが、
「な、え……?」
 アシガタナに纏った水のエネルギーが消えた。否、吸い寄せられている。その先にいるのは、トリトドン。
「俺のトリトドンの特性は、呼び水。水タイプの技を吸い寄せ、無効化し特攻を上げる。シズイのマンタインの特性は貯水だが、あれは受動的に水技を吸収するもの。だが呼び水はもっと積極的に引き寄せる。避雷針の水タイプ版だと思えば、分かりやすいか」
 静かに説明するイリゼ。つまり、トリトドンに水技は効かず、むしろ強化してしまうことになる。
 ならば、マンタインの時と同じように、ダイケンキでは分が悪い。あの時はリーテイルだと対応できなかったが、今度の相手はトリトドン。マンタインほどのスピードはないし、草技で四倍の弱点を突ける。地面技も無効化できるので、出さない手はない。
「ダイケンキ、ここはリーテイルに任せよう。戻——」

「トリトドン、とうせんぼう!」

 イリスがダイケンキをボールに戻そうしたその時、トリトドンが大きく鳴き、イリスとダイケンキの間の地面が隆起した。それによりボールから放たれる光はダイケンキには届かず、ダイケンキはボールに戻らない。
「っ!」
 隆起した地面はやがて戻っていくが、もしイリスがまたダイケンキを戻そうものなら、それを邪魔してくるだろう。とおせんぼうというのは、そういう技だ。
「とおせんぼう、相手を逃げられなくする技だ。シズイのブルンゲルみてぇに継続ダメージなんざねぇが、トリトドンがいる限り、お前は交代ができない。さあ、次行くぜ。トリトドン、ポイズンバブル!」
 トリトドンは口から毒々しい色の泡を大量に吐き出す。恐らく、毒素を含んでいるのだろう。
「ダイケンキ、吹雪だ!」
 ダイケンキは凍てつく猛吹雪を放ち、泡を凍りつかせていく。が、泡の数は相当多く、吹雪では消し切れない。やがて残った泡がダイケンキに触れ、ダイケンキの体を毒で蝕む。
「そういやお前、ホミカに勝ったんだよな? だったら見せてみろ。毒状態でも、俺に勝ってみせろよ」
「ぐぅ……!」
 イリスは呻くことしか出来ない。呼び水で水技は無効化され、とおせんぼうで交代を封じられ、ポイズンバブルで毒状態にされた。こんな状況で、勝てという方が無茶だ。
 しかしそれでも、イリスは勝たなくてはならない。イリゼを、越えなければならない。
「ダイケンキ、メガホーン!」
 ダイケンキは鋭い角を思い切り突き出してトリトドンを攻撃。効果はいまひとつなので、決定打にはならない。さらに、
「トリトドン、自己再生だ」
 トリトドンは自分の体を自身で修復し、メガホーンの傷を癒す。回復技まで持っているようだ。
「ぼさっとしてんなよ。トリトドン、次は大地の力だ!」
 奇妙な声でトリトドンが鳴くと、地面から立て続けに土砂が噴出し、ダイケンキを攻撃する。呼び水の効果があるとはいえ、その威力は何気に高い。
「くっ、吹雪!」
「大地の力!」
 ダイケンキは猛吹雪を放ってトリトドンを攻撃するが、トリトドンは動じず地面から土砂を噴き出してダイケンキを攻撃。自分で回復できるトリトドンにとって、多少のダメージは無に等しい。それより、毒でダメージを受けるダイケンキをさっさと倒す方が先決のようだ。
「ダイケンキ、最大出力で吹雪!」
 ダイケンキは吹雪の出力を高め、トリトドンを攻撃していく。しかし、
「自己再生だ!」
 トリトドンは傷ついた体を自己修復。ダメージはほとんどなくなってしまった。
「まだまだ攻めるぞ! ポイズンバブル!」
 そして毒素を含む泡を大量に吐き出した。泡は吹雪を避けるように宙を舞い、ダイケンキに襲い掛かる。
「くっそ、なんだよこれ……!」
 思わずイリスは呟いてしまう。
「こんなの、勝てるわけない……なんなんだ、ダイケンキを狙ったみたいな戦法取りやがって……あれ? ダイケンキを、狙った……? ……!」
 そこで、イリスは気付いた。
「やっと気付いたか、大馬鹿野郎。遅すぎだ」
 イリゼは毒づくが、それを気にしてられるイリスではなかった。
 イリゼの今までのポケモンは、どこか妙だった。最初はイリスが繰り出すポケモンに対して異常なまでの強さを発揮していたが、次に出されたポケモンに対してはあっさりやられることがままあった。
 思い返してみれば、アズマオウはデンリュウの雷を無効化する避雷針と、弱点を突くドリルライナーを持っていた。ダグトリオはデンチュラの電気技を無効にし、ことごとく攻撃を回避しながらストーンエッジを撃ってきた。ジバコイルは物理主体のフローゼルの攻撃をリフレクターで防ぎ、ロックオンと電磁砲のコンボで確実にフローゼルを倒した。グライオンは鈍重なメタゲラスに対してスピードで挑み、攻撃を避けながら防御力の関係ない一撃必殺で決めにかかった。
 そして今、目の前にいるトリトドン。呼び水で水技を無効化、ダイケンキの技を半分封じ、とおせんぼうで交代もさせない。ダイケンキには決定打がなくなり、自己再生で受けたダメージも回復する。
 今までイリゼが繰り出してきたポケモンはすべて、イリスの手持ちのポケモンに対して有利なポケモンたちだった。完全に近い対策を施し、一方的に勝負を優位に進められるようなポケモンたちだった。
 つまり、これは、
「なにも今まで、俺はただ寝てたわけじゃないんだぜ。俺は、お前のすべてのポケモンに対して、完封できるような対策を施してきた。お前の持つ十二体のポケモンは、すべて対策済みなんだよ。だからお前は俺には勝てない。俺はお前のポケモンに対して、有利なポケモンを出すだけなんだからな」
 汚いとか卑怯とか、そんなことを叫びたくなるが、しかしこれも戦術だ。
 そして遂に、ダイケンキは膝を着いた。毒とトリトドンの攻撃によるダメージが蓄積し、もうすぐ限界を迎えるのだろう。
「トリトドン、止めを刺してやれ! 大地の力!」
 トリトドンの鳴き声に呼応し、地面から土砂が噴射される。ダイケンキはその土砂に吹き飛ばされて岩壁に激突。戦闘不能となった。
「ダ、ダイケンキ……」
 ダイケンキが、ここまで一方的にやられたことは今まで一度もない。それだけに、イリスの衝撃は大きかった。
 震える手でダイケンキをボールに戻し、次のボールを手に取る。
「……リーテイル、出て来て」
 イリスが最後の繰り出すのは、当然の如くリーテイル。トリトドンに対して、非常に有利なタイプだが、
「戻れトリトドン」
 イリゼはトリトドンをボールに戻す。そして次に交代で出て来るのは、リーテイルに有利なポケモンなのだろう。
「出て来い、ゼブライガ!」
 イリゼの最後のポケモンは、白黒の体に雄々しき鬣を持つポケモン。雷電ポケモン、ゼブライガ。
「さあ、今から俺が、お前の弱さを教えてやる。心して聞きやがれ」
 そんなイリゼの言葉は、イリスの胸中を抉るのであった。



イリゼ戦その三。決着しなかった! でも次回こそ終わるはずです。イリゼはイリスのポケモンすべてに対して対策を施し、有利にバトルを進めてきました。特にダイケンキなんか完封されてます。よくやりますね。ともあれ、イリスの手持ちは残りリーテイル一体に対し、イリゼがやられたのはダグトリオとジバコイルだけ。一対四の状況ですから、仮にゼブライガを倒せてもアズマオウ、グライオン、トリトドンが待っています……でも、トリトドンは四倍弱点、グライオンは攻撃技がハサミギロチンのみだから、あとはアズマオウの吹雪だけ警戒すれば勝てそうですね。ともあれ次回はイリゼ戦決着です。お楽しみに。