二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 538章 死神 ( No.790 )
- 日時: 2013/03/22 19:49
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
テッカニンがやられ、レイの残りポケモンは半分。レイは次のボールを手に取る。
「おいでなさい、ヨノワール!」
レイの三番手は、手掴みポケモン、ヨノワール。
死神のような姿をしており、暗褐色の体に黄色いライン。胴体には恐ろしげな顔のような模様があり、大きく口が開いている。足はなく、頭部には黄色いアンテナが立っている。
「ヨノワールか……なら普通に戦った方がいいな。ブーバーン、ジオインパクト!」
ブーバーンは全身に銀色のオーラを纏い、ヨノワールに突っ込んでいくが、
「ヨノワール、地震です!」
ヨノワールも拳を地面に叩きつけて地震を引き起こし、衝撃波でブーバーンを吹っ飛ばす。テッカニンとのバトルで疲弊していたブーバーンは、効果抜群の一撃を喰らって戦闘不能となった。
「ぐっ、戻れブーバーン」
ザキは悔しそうにブーバーンをボールに戻す。
「ヨノワールはゴーストタイプ。地震があるとはいえ、あいつじゃぁな……」
しばし逡巡し、ザキは三体目のポケモンが入ったボールを取り出す。
「やっぱこいつか。出て来い、エレキブル!」
ザキの次なるポケモンは、雷電ポケモン、エレキブル。
ずんぐりした黄色い体に黒い縞模様、二又の黒い尻尾は電気コードのようになっており、背中にはコンセントの差し込み口に似た模様もある。
「……地震を持つヨノワールに対して、電気タイプのエレキブルですか」
「まあな。残る一体はそいつにはきついし、地震ぐらいどうにでもなる」
「そうですか。では見せてもらいましょう、ヨノワール、地震!」
ヨノワールは再び拳を地面に叩き付け、強力な地震を引き起こすが、
「エレキブル、地震だ!」
エレキブルも足で地面を踏み鳴らし、地震を発生させる。お互いの地震がぶつかり合うが、攻撃力ならエレキブルの方が高いので、エレキブルの地震が押し勝ちヨノワールを襲った。
「ワイルドボルト!」
間髪入れずにエレキブルは駆け出し、全身に弾ける電撃を纏ってヨノワールに突撃する。
「くっ、サイコパンチです!」
「ウッドハンマーだ!」
念力を纏った拳で引き剥がそうとするヨノワールだが、エレキブルも樹木の力を宿した拳を振るい、ヨノワールを殴り飛ばす。
「地震!」
そして再び地震を引き起こし、ヨノワールを追撃。
「もう一発行くぞ! 地震だ!」
「させません! ヨノワール、サイコパンチ!」
エレキブルが三度地震を引き起こそうとするも、ヨノワールは素早く念力の拳を飛ばしてエレキブルを攻撃し、地震を中断させる。
「怒りの炎です!」
そして今度は口から燃え盛る憤怒の炎を放つ。炎は怒り狂うように蠢き、エレキブルを襲う。
「ちぃ、振り払えエレキブル! ワイルドボルト!」
エレキブルは弾ける電撃を身に纏い、怒りの炎を吹き飛ばしてヨノワールに突貫する。
「止めますよヨノワール。地震!」
ヨノワールも急いで地震を引き起こし、エレキブルの纏っていた電撃を吹き飛ばして動きを止める。
「サイコパンチです!」
そしてすぐさま念力の拳を飛ばして攻撃。
「怒りの炎!」
ヨノワールの攻撃は止まらず、ヨノワールは大きく口を開き、憤怒の業火を放とうとするが、
「させるかよ! エレキブル、グランボールダ! ヨノワールの口を塞げ!」
エレキブルは地中から大小様々な岩石を浮かび上がらせる。そして、それらの岩石を一斉にヨノワールの口の中へと詰め込んだ。
「っ! ヨノワール!」
口を塞がれて、ヨノワールは怒りの炎を出せず、動きも鈍っている。
「エレキブル、地震だ!」
エレキブルは地面を揺らし、発生した地震をヨノワールに直撃させて吹き飛ばした。
「くぅ、ヨノワール、こちらも地震です!」
地震を受けた衝撃で炎と岩を吐き出したヨノワールは、態勢を立て直し、地震を引き起こして反撃に出るが、
「お前の地震なんざ敵じゃねぇんだよ! エレキブル、もう一発地震!」
エレキブルも同じように地震を繰り出す。
双方の衝撃波がぶつかり合うが、勝敗は既に出ていた。エレキブルの地震が打ち勝ち、そのままヨノワールに襲い掛かる。
「ワイルドボルト!」
ヨノワールが怯んでいる隙に、エレキブルは激しい電撃を身に纏い、ヨノワールへと突貫する。
「怒りの炎です!」
ヨノワールは口から憤怒の業火を放つが、エレキブルはその程度では止まらず、業火を突き抜けてヨノワールに激突した。
「追撃だ! ウッドハンマー!」
「ヨノワール、サイコパンチ!」
エレキブルの樹木の力を込めた拳と、ヨノワールの念力を纏った拳がぶつかり合うが、素の攻撃力だけでなく技の威力でも負けているヨノワールは、エレキブルに押し切られて殴り飛ばされてしまう。
「くっ、怒りの炎!」
吹っ飛ばされながらも、ヨノワールは口から怒りの炎を放とうとする。しかし、
「グランボールダで塞げ!」
エレキブルがそれを許さない。地中から飛び出した無数の岩石がヨノワールの口を塞いでしまう。
「今だ! ワイルドボルト!」
岩石を詰め込まれた時が攻め時と見たのか、エレキブルは電撃を纏ってヨノワールへと突っ込んでいく。
「ヨノワール、喰らいつく!」
対するヨノワールは、口の中に詰め込まれた岩石を、あろうことかそのまま顎の力で噛み砕いてしまった。同時に、口の中で溜まっていた怒りの炎が噴射される。
「地震です!」
そしてすぐさま地面を殴りつけ、地震を引き起こし、エレキブルの電撃を吹き飛ばして動きを止める。
「っ! エレキブル!」
直後、動きの止まったエレキブルにヨノワールの吐き出した炎が直撃。口の中で圧縮されていた分、勢いと威力が多少なりとも上がっていたようだ。
「んだよ今の……喰らいつくっつーか、噛み砕くだな、ありゃ」
ヨノワールの口には岩を詰めとけば有利になると考えていたザキだが、怒りの炎の威力が変に上がってしまったため、一概にそうとも言えないようだ。それに喰らいつくでも噛み砕くでも、詰めた岩を砕かれてしまえば、この手はもう使えないだろう。
「エレキブル、ワイルドボルト!」
エレキブルは弾ける電撃を纏ってヨノワールへと突っ込んでいくが、
「ヨノワール、地震です!」
ヨノワールも地震を放ち、エレキブルの動きを止めてしまう。
(またか……!)
エレキブルが突っ込もうとすれば、地震で動きを止める。そしてすぐに追撃が飛んでくる。
「怒りの炎!」
直後、ヨノワールの口から憤怒の炎が放たれ、エレキブルに直撃。エレキブルの身を焼き焦がしていく。
「振り払え! ワイルドボルト!」
エレキブルは再び電撃を纏って炎を振り払い、そのままヨノワールへと突っ込んでいく。最初に距離を詰めたので、次に地震を繰り出す余裕はないはず。だが、
「ヨノワール、喰らいつく!」
逃げるどころかヨノワールはエレキブルに向かっていき、大きな腹の口を開いてエレキブルに齧り付いた。
「なっ……!? エレキブル!」
完全に動きを止められた。腕ごと喰らいついて来たため、エレキブルは纏った電撃でしか抵抗ができない。その電撃も、ヨノワールには大した効果はない。
「ヨノワール、今のうちに決めてしまいましょう。怒りの炎!」
ヨノワールはエレキブルに喰らいついたまま、口から怒り狂うように燃え盛る憤怒の業火を放つ。
そんなことをすれば当然、エレキブルは至近距離から業火の直撃を、しかも逃げることも打ち消すこともできずに喰らってしまう。
「エレキブル!」
情け容赦なくエレキブルを焼き焦がしていく業火。両腕を封じられ、身動きの取れないエレキブルがヨノワールから脱する方法は——
「これしかねぇ……! エレキブル、グランボールダ!」
エレキブルは身を焦がされながらも大きく咆哮する。すると、地中から大小様々な岩石が浮かび上がる。
これらの岩石は、ヨノワールの口を塞ぐためのものではない。ヨノワールの口は、もうエレキブル自身が塞いでいるようなものだ。
なのでエレキブルは、浮かび上がらせた岩石を、ヨノワールの体に向けて一斉に放つ。
「っ、ヨノワール、耐えなさい!」
ガガガガガッ! と痛々しい音が響き渡り、ヨノワールは岩石に身を打たれる。防御もせずグランボールダの直撃を何発も喰らっては、相当なダメージになる。そのため遂にヨノワールは、エレキブルを解放してしまった。
「くっ、逃がしましたか。ならば再び捕えるだけです! ヨノワール、喰らいつく!」
「させるかよ! 今度はそのままぶっ飛ばしてやる! エレキブル、ワイルドボルト!」
ヨノワールは大口を開けて、霊界に誘う死神の如くエレキブルに襲い掛かる。
エレキブルは激しく弾ける電撃を身に纏って地面を蹴り、ヨノワールへ突貫。
両者の大技がぶつかり合うが、結果は淡泊だった。
競り合うことなどなくエレキブルがヨノワールを吹き飛ばし、ヨノワールは戦闘不能。だが、エレキブルもワイルドボルトの反動で力尽きてしまった。
「……戻れ、エレキブル」
「ヨノワール、戻ってください」
ザキとレイは同時に倒れたポケモンをボールに戻す。これで、お互いにポケモンはあと一体。
レイは最後のボールを握り締め、ぼそりと呟いた。
「……なぜ」
こんなにも感情が揺さぶられるのだろう、と。
この怒りにも似た感情は、どうしてもあ頃を思い出す。今のレイを形作る、忌まわしきあの時を——