二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 542章 爆炎 ( No.794 )
- 日時: 2013/03/23 22:46
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
「最後は頼んだよ、フィニクス!」
ミキが最後を任せるのは、不死鳥ポケモン、フィニクス。
紫色の体に、赤く燃え盛る炎の翼を持つポケモン。その姿は不死の鳥にも龍にも見え、いずれにせよ神聖かつ神秘的な空気を醸し出している。
「やっぱフィニクスなんだねー……君の最後の力、見せてもらおっかー」
「言われなくても! フィニクス、ダイヤブラスト!」
フィニクスは出て来て早々に動き出した。流れるような素早い動きでストータスに接近すると、翼を羽ばたかせ、白く煌めく爆風を放つ。
「もう一度、ダイヤブラスト!」
「ジャイロボール!」
フィニクスは連続でダイヤブラストを放とうとするが、二度目はストータスのジャイロボールで弾かれる——かに思われたが、爆風により生じた衝撃波を受け、ストータスの回転は途中で止まってしまった。
「……?」
その様子を見てミキは疑念を抱く。何かストータスに異変が起こっているように感じた。
だがフレイは、
「つっよいねー、そのフィニクス。ポリゴンZに匹敵するくらいの特攻なんじゃないのー?」
「え? うん、まあ……」
確かにフィニクスは特攻を徹底的に強化し、ミキの手持ちではポリゴンZと並ぶほどの火力を誇っている。
けれどポリゴンZはストータスに決定打を与えられなかった。四倍の弱点を突いたハイドロポンプでさえ、ストータスには通用しなかったほどだ。それがフィニクスのダイヤブラストなら通じるというのは奇妙である。
何かがおかしい。ミキは直感的にそう感じた。
「行っくよーストータス、グランボールダ!」
けれどもストータスは攻撃を止めない。地面から大小様々な岩石を浮かび上がらせると、それらをフィニクス目掛けて一斉に放つ。
「っ、ハリケーン!」
フィニクスは翼を大きく羽ばたかせ、竜巻の如き暴風を巻き起こす。それによりフィニクスに向かってきた岩は風で飛ばされ、そのままストータスへと襲い掛かる。
「まった擬似的な岩タイプ攻撃……鬱陶しいなー」
とはいえ、やはりその程度ではストータスにまともなダメージを与えることなど不可能。ミキもこれで削ろうなどとは思っていない。
「ストータス、もう一発グランボールダ!」
「ハリケーンで吹き飛ばして!」
ストータスが再び浮かび上がらせる岩石に対し、フィニクスは事前にハリケーンを放って迎撃態勢に入る。しかし、
「っ!? フィニクス!」
無数の岩はフィニクスの真下から飛び出し、次々とフィニクスに直撃する。効果抜群の直撃を連続で受け、フィニクスは早々に致命傷を負ってしまう。
「流石に真下はフィニクスでも対応できないよねー。囲って攻めるだけがグランボールダじゃないんんだよー」
間延びした口調でフレイは言う。今のは完全にミキのミスだ。
「うぅ、だったら早くこのダメージ分を取り返さなきゃ。フィニクス、接近して! ダイヤブラスト!」
フィニクスは滑空するようにストータスへと近付くと、宝石のように煌めく爆風を放ち、ストータスに直撃させる。
「大地の怒りが通じないのが辛いなー。ストータス、グラン——」
「ダイヤブラスト!」
フレイの指示が終わるより早く、フィニクスは煌めく爆風を放ってストータスを攻撃。そして、
ザリッ
ストータスの足元から、そんな音が聞こえてきた。空耳でも幻聴でもない。これは確実に、ストータスが後ずさった音だ。
(効いてる……?)
後ずさったということは、それだけフィニクスの攻撃を受け切ることが出来なかったということ。退いた距離は短いが、今まで効果抜群の攻撃を何発も撃ち込んでも全く動じなかったストータスを、ほんの数cmでも動かしたのは快挙と言ってもいい。
だがミキは困惑するばかりだ。ポリゴンZのハイドロポンプやカブトプスのスプラッシュなど、四倍の弱点を突く技で攻撃した時に全く動きを見せ無かったストータスが、フィニクスのダイヤブラストで後ずさるなど、どう考えてもおかしい。フィニクスの特攻は、現段階ではポリゴンZとほぼ同程度。突く弱点の数も、技の威力もダイヤブラストはハイドロポンプに劣っている。ならば当然、ハイドロポンプの方が大きなダメージを与えられるはずだ。なのに、ストータスに効いているのはダイヤブラスト。
(そういえば、最初に撃ったダイヤブラストより、それ以降に撃ったダイヤブラストの方が効いているような……)
これは完全な憶測というか、本当にそんな気がするだけなのだが、ミキにはそんな風に見えていた。
この時、ミキの脳裏では一つの仮説が浮かんでいた。荒唐無稽でミキ自身もありえないと思うような仮説だが、ミキが思いつくのはこのくらいだ。
ミキはストータスに起こった異変の真実を確かめるべく、攻撃を再開する。
「フィニクス、ダイヤブラスト!」
「ストータス、ジャイロボール!」
立て続けにフィニクスは煌めく爆風を放つ。ストータスも高速回転して衝撃波を防ごうとするが、今度はザリザリと地面を削り、明らかに後退している。
「ダイヤブラスト!」
一際大きく翼を羽ばたかせ、フィニクスは宝石のように煌めく爆風と衝撃波を放つ。その衝撃波で、ストータスの回転は止まった。
「ハリケーン!」
直後、またしてもフィニクスは翼を羽ばたかせ、災害に匹敵する嵐を巻き起こす。ストータスは至近距離から嵐の渦中に飲み込まれ、押されるように吹き飛ばされた。
「……やっぱり」
ストータスが吹き飛ばされたのを見て、ミキは確信する。
「そのストータス、バトルが進むに連れて、防御力が落ちてるんだね……!」
ミキのポケモン三体を立て続けに破ったストータス。今までストータスは強固だというイメージが強く、実際イリスやミキが最初に戦った時、彼女のストータスには手も足もでなかった。
だが彼女はストータスを出すと、決まって早期決着を狙おうとしてきた。とはいえ彼女の性格からだらだらと引き伸ばす場面を少なからずあったが、それでも大抵のポケモンはストータスの圧倒的な火力で早々にやられることが多い。
もしそれが、バトルが長引くことでストータスの耐久力が落ちるからだとすれば、全て辻褄が合う。ミキはそう思ったのだが、
「うーん、甘く見て四十点ってとこかなー。確かにストータスの防護力は、最初にポリゴンZとやりあった時より格段に落ちてる。でもそれは時間の経過じゃないんだー」
フレイは足をぶらぶらさせながら、そのように答え、そして続けた。
「正確にはあたしのストータス——つーかあたしのポケモンは、体力と防御、特防が比例してるんだよ。簡単に言えば、体力が多ければそれだけそのポケモンの防御、特防は高くなり、逆に体力が少なくなると脆くなっちゃう。ニートンもメタグロスもノコウテイも、最初の方は結構頑張って耐えてたけど、後からごっそり削られちゃったっしょー? あれはそういうことなんだー」
体力と防御力が比例する。確かに、その特徴はノコウテイとのバトルの時、顕著に表れていた。ノコウテイは体力が多かったゆえにポリゴンZの破壊光線をも耐えることが出来た。あの時フレイが言った言葉も、そのことを指していたのだ。
「でも、体力の防御力が比例するなんて、そんなことがありえるの……?」
「ありえちゃうんだなーこれが。アシド曰くあたしの能力? ってやつっぽいよー? ま、あたしはフォレスと違って、前々から薄々感づいてたけどねー」
少しだけ以前のフレイの雰囲気を取り戻した彼女だが、すぐにその空気は霧散する。
「ちなみにね、あたしの力は体力と防御力の比例だけじゃないんだよ。ねえミキちゃん、おかしいと思わなかった? あれだけ攻撃を撃ち込んだのに、ストータスの噴火の威力が変わってなかったこととかさ」
「それは……」
思った。あの時はストータスには全くダメージがなかったのかと心が折れかけたが、今にして思うとおかしい。
ストータスの防御力は体力と比例する。そして今のストータスの防御力はかなり落ちている。ということはつまり、ストータスには確実にダメージが蓄積していたはずだ。
噴火は体力が少ないほど威力が下がる技なので、普通ならダメージの蓄積したストータスでは、そこまで高火力の噴火は撃てない。にもかかわらず、フレイのストータスは威力の変わらない噴火を連発していた。
「あたしのポケモンはね、体力の関係する技の効果が働くとき、それまでにダメージを受けて下降した耐久が効果発動時のみそのまま体力として還元されるんだ……つまり」
一旦言葉を区切り、フレイは目を閉じる。ほんの少しの間の後、フレイはゆっくりと目を開き、瞳の奥に静かな炎を灯していた。
「あたしのストータスは、いつだって最大火力の噴火が撃てるんだよ!」
刹那、ストータスが動き出した。前傾姿勢になり、甲羅をフィニクスへと向けている。
そして、
「ストータス、噴火!」
直後、ストータスの甲羅から熱く燃え盛る大量の石炭と爆炎が噴射された。熱気だけで全てを溶かしてしまいそうなほど高温で、放たれる勢いも自然現象として発生する噴火と遜色ないくらいに凄まじい。最大火力どころか、今までを超える火力だ。
勢いが凄まじ過ぎるゆえに、回避は不能。相殺なんてもってのほか。 フィニクスは、ストータスが放つ爆炎に飲み込まれた。