二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 549章 相変異 ( No.805 )
日時: 2013/03/27 04:17
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「っ!? ズルズキン!」
 トノッパーが消えた直後、ズルズキンが吹っ飛ばされた。
 ズルズキンは防御力が高いので致命傷にはならなかったが、今のトノッパーの動きは全く見えなかった。
「速い……!」
 殻を破るで素早さが上がっているとはいえ、黙視できないほどのスピードとなると、龍の舞があるズルズキンでもきついだろう。
「エアスラッシュ!」
 ザートの下まで戻って来たトノッパーは、空気の刃を飛ばす。その数や大きさは初撃のものよりもパワーアップされているが、スピードは変化していない。
「龍の舞でかわせ!」
 ズルズキンは龍の如く力強く舞い、刃を回避する。
「ぶち壊す!」
 そして全てを破壊するかの如き勢いで拳を振りかぶるが、
「攪乱飛行だ!」
 瞬時トノッパーは姿を消し、次の瞬間にはズルズキンが吹っ飛ばされていた。
「追撃せよ! エナジーボール!」
 続けて自然の力を凝縮した緑色の球体が発射され、トノッパーはズルズキンに追撃をかける。
「ぐぅ、ぶち壊す!」
 だが寸でのところでズルズキンが拳を振るい、球体を破壊した。
(随分と速くなったとは思ったけど、それでも攪乱飛行だけか)
 攪乱飛行は先制技でも必中技でもないが、素早く動き回っては隙を見つけ、虚を突くように攻撃する技だ。その攻撃の仕方から、素早さを急上昇させる殻を破るとは相性が良いのだろう。
「ズルズキン、諸刃の頭突きだ!」
「トノッパー、エアスラッシュ!」
 ズルズキンは姿勢を低くし、頭を突き出して特攻。対するトノッパーは空気の刃を無数に飛ばしてズルズキンを切り刻むが、ズルズキンが止まる気配はない。
「エナジーボールだ!」
 自然の球体も発射し、ズルズキンに直撃しては爆発するが、それでもズルズキンは止まらない。
「そのまま突っ切って来るつもりか。ならばトノッパー、攪乱飛行!」
 真正面から迎え撃ってもズルズキンは止められないと判断し、トノッパーは目視できないほど高速で動き回り、ズルズキンの側面に体当たり。真正面からでは駄目でも、真横から衝撃を与えることでズルズキンを吹っ飛ばす。
「ズルズキン、反撃だよ! ぶち壊す!」
「無駄だ! 攪乱飛行!」
 ズルズキンは素早く起き上がって拳を構えるが、トノッパーもすぐさま追い打ちをかけ、またズルズキンを吹っ飛ばした。
「我がトノッパーの攪乱飛行は、最速のガルラーダすらを超える。攻撃速度と精度だけならば、我の手持ちでは最上位に位置するぞ」
 やはりトノッパーの強さは攪乱飛行にあるようだ。攻撃するにも攻撃をかわすにも使いやすい上、殻を破るで強化されているのでその性能は相当高い。
「トノッパー、攪乱飛行だ!」
 吹っ飛ばされてズルズキンが起き上がるが、またしてもトノッパーの攪乱飛行がズルズキンに直撃し、その場に倒される。
「くっそ、また攪乱飛行……!」
 殻を破るで威力が上がっているのはいい。ズルズキンの耐久力は高いので、そう簡単にやられはしない。しかし目に見えないほどのスピードだけは厄介だ。
(目視が難しいとかならなんとかならなくもないけど、まったく見えないのはな……しかも真正面からぶつかって来るならタイミングを合わせて迎撃できるけど、多方向から来るんじゃ対応しきれない。どうするか……)
 イリスはズルズキンが龍の舞を習得するに伴い、ズルズキンの技構成を一気に変更した。従来まではわりと加減の利く器用な技構成だったが、龍の舞を習得したことでズルズキンの短所である鈍さが解消され、小技を交えるスタイルから大技で一気にねじ伏せるスタイルへと変化させた。
 だが今回はそれが裏目に出てしまった。トノッパーは比較的小柄なポケモンで、しかも攪乱飛行を使用すれば激しく動き回る。大技ではどうしたって捕まえきれない。
(まあ、そんなことは悔やんでもしょうがないか。とにかく今は、どうやってトノッパーの攪乱飛行を止めるかを考えなきゃな)
 と思っているうちに、またトノッパーからの攻撃が繰り出された。
「攪乱飛行!」
 今度はフェイントを入れて真正面から突っ込んできたのか、後方に吹っ飛ぶズルズキン。ザートもイリスとズルズキンが攪乱飛行を破れないと知っていて、攪乱飛行を多用している。
「攻撃が避けられると分かっちゃえば、跳び膝蹴りも使えない。ズルズキン、諸刃の頭突きだ!」
 ズルズキンは姿勢を低くし、頭を突き出してトノッパーに突っ込む。しかし、
「無駄だと言っているだろう! トノッパー、攪乱飛行!」
 瞬時に消えたトノッパーは、ズルズキンの背後から激突し、ズルズキンを吹っ飛ばす。諸刃の頭突きの勢いもあり、ズルズキンは思い切り吹っ飛んで大岩に激突した。
「ズルズキン!」
 頑丈なのか、大岩は崩れなかったものの、ズルズキンは余計なダメージを受けてしまう。いくら耐久力の高いズルズキンでも、攪乱飛行を無限に耐えられるわけではない。そろそろ反撃しなくてはならないだろう。
 だが、
「攪乱飛行だ!」
 トノッパーの攻撃がズルズキンに直撃。ズルズキンはまた後方に吹っ飛ばされてイリスの下まで戻ってくる。
「もう攪乱飛行しか使ってないな……攻撃が単調だよ」
 とはいえ、ズルズキンの体力ももう残り少ない。攪乱飛行が確実に当たるとするなら、それを連発しているだけでトノッパーはズルズキンを倒せるのだ。他の技を使ってバリエーションをつけるまでもない。
「ズルズキン、諸刃の——」
「攪乱飛行!」
 ズルズキンが諸刃の頭突きを繰り出すモーションに入る直前にトノッパーはズルズキンに突っ込み、吹っ飛ばした。
(やっぱり速すぎて見えない……一体どこからあんなスピードが出るん、だ、か——?)
 イリスはふと気になって素早く図鑑を取り出した。そこにはトノッパーの説明文と、体の基本的な構造も載っている。
(……もしかしたら)
 図鑑を仕舞い、イリスはトノッパーを見遣る。スピードはあってもスタミナはないのか、トノッパーは立て続けに攻め立てたりはせず、今は様子を窺っていた。
(僕の知識が間違ってなければ、この方法でトノッパーを倒せるはず……やるか)
 イリスは視線をトノッパー単体からズルズキンも含めた全体に移し、ズルズキンに指示を飛ばす。
「ズルズキン、龍の舞!」
 ズルズキンは龍の如く力強く舞い、攻撃と素早さを高める。これでズルズキンの攻撃と素早さは通常の三倍だ。
「もう一回!」
 さらに舞い、続けて能力を高めるズルズキン。その様子を見てザートは、厳しい視線を浴びせる。
「なにか企んでいるようだな。ならばその策略を打ち砕くまで。トノッパー、攪乱飛行!」
 トノッパーは瞬時に消える。
 だがザートがトノッパーに指示を出す直前に、イリスもズルズキンに指示を出していた。
「横に跳べ!」
 トノッパーが消えると同時に、言われるがままにズルズキンは大きく横っ飛びする。これはトノッパーの攻撃の軌道が読めたわけではなく、ただの勘だ。ズルズキンのスピードもかなり上がっているため、トノッパーが動くと同時に回避行動を起こせば、運が良ければかわせると思っただけだ。
 だがイリスの運は良かったのか、ズルズキンにトノッパーの攻撃は届いていない。どうやらかわせたようだ。
「龍の舞!」
 最後の龍の舞で、攻撃と素早さを四倍まで高めるズルズキン。無双と言っても過言ではないほど、ズルズキンの能力は上がっている。
 そしてこれでトノッパーを倒す準備が整った。
「ズルズキン、跳べ!」
 ズルズキンは砂地にも関わらず、思い切り地面を蹴り飛ばして真上に垂直に跳び上がる。龍の舞で素早さが上がっているので、かなり高く跳び上がった。
「ふん、トノッパーはホウエン最長の建造物、空の柱すらも跳びこえる跳躍力を持つポケモンだ。その程度の垂直跳びで、逃げられると思うな! トノッパー、攪乱飛行!」
 刹那、トノッパーが消えた。またズルズキンに突っ込んで吹っ飛ばすつもりなのだろう。
 だが、しかし、

「ズルズキン、ぶち壊す!」

 ズルズキンは攪乱飛行の直撃を喰らった。しかし直後に、トノッパーは砂漠の砂へと叩き付けられていた。
「なにっ……!? トノッパー!」
 驚愕の表情を浮かべるザート。吹っ飛ぶどころかすぐに切り返したズルズキンに驚いているようだ。
「ズルズキンが今まで吹っ飛ばされていたのは、トノッパーの特攻が高いからじゃない。攻撃を予測できなかったからだ。どこから飛んでくるか分からない攻撃に対しては、身構えられない」
 イリスは驚くザートに、淡々と説明する。
「そのトノッパーは群れを成してない個体、孤独相という奴だ。だから羽は発達せず、飛行能力も低い。空中にいるズルズキンに対しては、まっすぐに突っ込むしかなかっただろう」
「っ……!」
 それがイリスの狙いだった。ザートのトノッパーは飛行能力が低いゆえに、空中のズルズキンに対しては地上からまっすぐに突っ込むしかなかった。だからこそ攻撃の軌道が読まれ、ズルズキンに攻撃を耐えられてしまったのだ。
 手痛い一撃を喰らい、体力が残り僅かなトノッパーは体を震わせている。
「決めるよズルズキン! 跳び膝蹴り!」
 空中から膝を突き出して落下し、ズルズキンはトノッパーに膝蹴りを叩き込む。
「トノッパー!」
 その一撃で、トノッパーは遂に戦闘不能となった。