二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 554章 神鳥 ( No.810 )
日時: 2013/03/27 17:30
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「退け、トノッパー」
 ザートは戦闘不能となったトノッパーをボールに戻し、
「我としたことが油断したか。まさかトノッパーの身体的特徴を逆手に取られるとはな」
 そんなことを言いながら次のボールを構えた。
「だが次はこうは行かんぞ。出撃! ガルラーダ!」
 ザートの三番手は、ガルダポケモン、ガルラーダ。
 鳥の姿に手足が生えたようなポケモンだ。真っ赤な体は光を発しており、背中には卵の殻がある。
「やっぱりガルラーダか。でもこっちは龍の舞で攻撃も素早さも最大、一気に決める。ズルズキン、跳び膝蹴り!」
 ズルズキンは勢いよく地面を蹴り、凄まじいスピードと勢いで強烈な膝蹴りを繰り出すが、
「ガルラーダ、殻を破る!」
 パキンッ、とガルラーダの背中の殻が砕け散る。そして直後、ガルラーダは急上昇してズルズキンの飛び膝蹴りを回避した。
 跳び膝蹴りはかわされると自分がダメージを受けてしまう技。ズルズキンは勢い余って地面に激突し、ダメージを受けてしまった。
「こいつも殻を破るか……!」
 歯噛みするイリス。カモドック、トノッパーときて、ガルラーダも殻を破るで上げてきた。
「ガルラーダ、ブレイブバードだ!」
 ガルラーダは空中で旋回すると、そのまま炎の如きエネルギーを纏い、倒れたズルズキンに突貫。凄まじい勢いで激突する。
「ズルズキン!」
 跳び膝蹴りのダメージもあり、効果抜群の一撃を喰らったズルズキンは戦闘不能となった。
「くっ……戻って、ズルズキン」
 イリスは悔しげにズルズキンをボールに戻す。龍の舞でかなり強化されていたので、せめて一撃喰らいは入れたかったが、それも叶わなかった。
 だがイリスはすぐに切り替えて、ガルラーダに対して繰り出すポケモンを選ぶ。
「相手は飛行タイプのガルラーダ。空中戦になるならウォーグルが戦いやすいけど……」
 イリスはザートの最後に待つであろうポケモンを思い浮かべ、ボールを掴んだ。
「今回は君に任せる。頼んだよ、フローゼル!」
 イリスが繰り出したのは、海イタチポケモン、フローゼル。
 オレンジ色の川獺のようなポケモンで、両腕には水色のヒレ。尻尾は二又で、首には黄色い浮き袋が付いている。
「フローゼルか。飛行タイプのウォーグルや、電気タイプのデンリュウではないのだな」
「まあね。でも、だからってガルラーダに対して不利なわけじゃない。フローゼル、スターフリーズ!」
 フローゼルは巨大な星型の氷塊を生成すると、それをガルラーダへと投げ飛ばすように放つ。
「氷技……ガルラーダ、鋼の翼!」
 ガルラーダは翼を鋼鉄の如く硬化させ、飛来する氷塊を粉砕する。その際、砕けた氷の欠片が一瞬だけガルラーダの視界を塞ぐ。そして、
「アクアジェット!」
 次の瞬間、正に瞬間的に距離を詰めたフローゼルが水を纏って突撃し、ガルラーダを吹っ飛ばした。
「っ! ガルラーダ!」
 ガルラーダは防御力が下がっているのでわりとダメージは受けたが、アクアジェット自体威力があまり高くないので、致命傷にはならない。
「だが、今のアクアジェット、かなりの速度だな。我がトノッパーの攪乱飛行にも匹敵するぞ」
 ザートは素直にフローゼルのスピードを称賛した。それほど、今のアクアジェットは速かったのだ。
「僕のフローゼルは、火力よりもスピードを重視したからね。父さんの晴天時のリーフィアには、まだ追いつけないけど」
 言って、イリスはフローゼルに次の指示を出す。
「フローゼル、スターフリーズだ!」
 フローゼルは巨大な星型の氷塊を生成すると、ガルラーダへと飛ばす。
「またか。鋼の翼!」
 ガルラーダも鋼の翼を叩き付け、氷塊を破壊する。氷の欠片が一瞬だけガルラーダの視界を塞ぎ、
「アクアジェット!」
 そこにフローゼルが水を纏って突っ込んで来る。しかし、
「同じ手は喰らわんぞ! 鋼の翼だ!」
 いくら速くても攻撃が来ると分かり、しかも一直線に突っ込んで来るのなら対応は簡単だ。ガルラーダはもう一度鋼の翼を振るい、フローゼルを吹っ飛ばした。
「卵爆弾!」
 ガルラーダは羽ばたき、上空から無数の卵を降り注ぐ。卵はフローゼルに当たると爆発した。
「くっ、フローゼル、アクアジェット!」
 フローゼルは水を纏ってガルラーダへと突っ込む。だが今度は一直線ではなく、大きく迂回するような軌道だ。スピードは落ちるものの、真正面からしか突っ込めないわけではないので、完全な対応は簡単ではないだろう。
「むぅ、ガルラーダ、鋼の翼!」
 ガルラーダは鋼のように硬化させた翼を振るうが、フローゼルは寸前で軌道を変え、下から突き上げるようにガルラーダに突っ込む。
「アイアンテール!」
 さらに空中で一回転し、こちらは鋼鉄の如く硬化させた尻尾をガルラーダの脳天に叩き込む。その一撃で、ガルラーダは地面に叩き落とされた。
「攻めるよフローゼル。瓦割り!」
 攻撃は止まらず、フローゼルは落下しながらも拳を固め、ガルラーダへと振り下ろすが、
「回避だ!」
 ギリギリのところで、ガルラーダは転がるように瓦割りを回避。そのまま飛び立った。
「喰らうがいい! 卵爆弾!」
 そして上空から無数の卵を投げつけ、フローゼルを爆撃する。命中精度はあまり良くないが、威力は高い。
「ブレイブバード!」
 続いてガルラーダは燃え盛る炎の如きエネルギーを身に纏い、勇猛果敢にフローゼルへと特攻する。
「あれはまずい……フローゼル、アクアジェット! ガルラーダを振り切れ!」
 フローゼルは水流を身に纏うが、ガルラーダには向かわず、むしろ逆方向へと飛び出した。
「逃がさん! 追え、ガルラーダ!」
 ガルラーダも全身を光らせながら逃げるフローゼルを追いかける。
 アクアジェットは確かに速いが、それは瞬間的な速さだ。このように追いかけっことなると、どうしても素早さで勝るガルラーダに分がある。
 結局フローゼルはガルラーダに追いつかれ、地面に突き落とされてしまった。
「まだ終わらんぞ! 卵爆弾!」
 ガルラーダは突き落とされて濛々と砂煙を上げるフローゼルに向けて無数の卵爆弾を放つ。
「くっ、これ以上は致命的か……スターフリーズ!」
 だがフローゼルも星型の氷塊を飛ばし、襲い掛かる卵爆弾を破壊。氷塊はそのままガルラーダへと迫る。
「鋼の翼だ!」
 ガルラーダはなんとか切り替えし、鋼の翼で氷塊を粉々に粉砕する。しかし、
「アクアジェットだ!」
 すぐさまフローゼルが飛び出し、ガルラーダに激突。この攻撃は流石に対応しきれず、ガルラーダは態勢を崩してしまう。
「続けて行くぞ! 瓦割り!」
「させん! 鋼の翼!」
 フローゼルは拳を握り、そのままガルラーダに突き出すが、ガルラーダも強引に硬化させた翼を振るう。
 拳と翼がぶつかり合うが、攻撃力は殻を破るを使用しているガルラーダの方が高い。よってガルラーダが押し切り、今度はフローゼルが態勢を崩してしまう。
「もらった! ガルラーダ、鋼の翼!」
「させない! フローゼル、アイアンテール!」
 ガルラーダは追撃にもう一度鋼の翼を振るうが、フローゼルも尻尾を硬化させて身を捻り、ガルラーダの胴体に尻尾を叩き込んだ。
 ガルラーダの翼はフローゼルには届かず、ガルラーダは吹っ飛ばされる。
「スターフリーズ!」
 これで決めるつもりか、フローゼルは巨大な星型の氷塊を生成。それを投げ飛ばすように、ガルラーダへと放つが、

「ガルラーダ、ブレイブバード!」

 突如ガルラーダは光り輝き、燃え盛る炎の如きエネルギーを身に纏って勇猛果敢に突貫する。
 今のガルラーダにとって、氷塊などは障害にもならない。軽く突き破って粉砕し、フローゼルへと迫る。
「くっ、フローゼル、アクアジェット!」
 ガルラーダが激突する寸前でフローゼルは水流を纏い、真上に飛び上がる。しかし当然、ガルラーダもそれを追いかける。
(逃げ切るのは無理。なら、追いつかれる前にガルラーダを倒すしかないけど……できるかな)
 一か八か。失敗すればブレイブバードの餌食となり、フローゼルはやられるだろう。
 ならば出来る限りにことをしようと、フローゼルは身を翻し、ガルラーダへと突っ込む。
「血迷ったか、英雄! 我がガルラーダと正面からやり合う気か!」
「違うよ。フローゼルに、そんな戦い方は似合わない」
 フローゼルとガルラーダの距離はすぐに縮まる。もう少しでお互いがぶつかり合う、その瞬間。

「今だフローゼル、アイアンテール!」

 フローゼルは纏った水を消し、回転しつつ鋼鉄の尻尾をガルラーダの背中に叩き込む。すると、ガルラーダは絶叫を上げて墜落した。
「っ、ガルラーダ!」
 ガルラーダの弱点は背中の殻。それが破られたとしても、弱点そのものを消すことは出来ない。背中を強打されたガルラーダは、力なく地面に横たわる。
「これでとどめだ! スターフリーズ!」
 最後にフローゼルは星型の氷塊を落とし、ガルラーダを押し潰す。
 効果抜群の一撃を受け、遂にガルラーダは戦闘不能となった。
「撤退だ、ガルラーダ」
 ザートはガルラーダを戻し、最後のボールを手に取った。
「……まだ、負けられぬ。我は、伝説の力を示さねばならないのだ……!」
 力強くボールを握り、ザートは憂いの念を募らせる。
 今の自分の原動力。伝説のポケモンへの信仰を忘れた、民衆、そして世界を——