二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 556章 他力 ( No.812 )
日時: 2013/03/27 20:11
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「戻りなさい、バッフロン」
 ゲーチスは戦闘不能となったバッフロンをボールに戻す。
「ふむ、まさかワタクシが先手を取られるとは。少し油断してしまいましたかな」
 先手を取られても、余裕を崩さないゲーチス対照的に、Nは厳しい眼差しでゲーチスを見据えている。
「まあよいでしょう。次で取り返せばいい話です」
 ゲーチスはそう言って、次のボールを取り出し、放り投げる。
「罪なる民に罰の刃を! キリキザン!」
 ゲーチスの二番手は、刀刃ポケモン、キリキザン。
 非常に人型に近く、全身スーツ風で各部にはプロテクター。腹、腕、頭にはそれぞれ鋭い刃が鈍く煌めいており、怪人のような姿をしている。
「キリキザンか。だったらまずは、カクレオン、ドレインパンチ!」
 カクレオンは淡く発光する拳を握り、地面を蹴って一直線にキリキザンへと突っ込んでいくが、
「キリキザン、瓦割りです!」
 ギリギリまでカクレオンを引きつけ、キリキザンは手刀を勢いよく振り下ろす。カクレオンは効果抜群の一撃を喰らい、地面に思い切り叩き付けられ、戦闘不能となった。
「……ありがとう、カクレオン。戻っていてくれ」
 Nは申し訳なさそうに、戦闘不能となったカクレオンをボールに戻す。
「キリキザンは悪と鋼タイプ……なら、次は君だ。コーシャン!」
 Nが次に繰り出すのは、吉凶ポケモン、コーシャン。
 暗い紫色の体毛に覆われた猫のような姿のポケモンで、尻尾は二又に分かれている。
 コーシャンは炎と悪タイプを併せ持つポケモンだ。キリキザンは瓦割りを覚えているものの、鋼技も悪技も半減し、コーシャンは炎技で弱点を突ける。全体的なタイプ相性ではこちらが有利だ。
「コーシャン、まずは瞑想だ!」
 コーシャンはすぐに攻撃せず、目を瞑り、精神を集中させて特攻と特防を強化する。
「小賢しいですね。キリキザン、瓦割り!」
 キリキザンは手刀を構え、コーシャンへと突っ込んでいく。
「コーシャン、猫の手!」
 対するコーシャンは光る手をかざす。すると手からは灼熱の熱風が放たれた。
「ぬぅ、熱風ですか……かわしなさい、キリキザン」
「もう一度。猫の手だ!」
 再び光る手をかざすコーシャン。今度は電撃が放たれ、四方八方に撒き散らされる。
「キリキザン、退避」
 キリキザンは大きく飛び退り、襲い来る電撃をかわす。
「今度こそ、瓦割りです!」
 そして手刀を構え、再びコーシャンへと突っ込んでいった。
「猫の手!」
 三度猫の手を使用するコーシャン。次に手から出て来たのは、一発の影の球だった。
「シャドーボールですか、温いですね。キリキザン、弾きなさい!」
 キリキザンは飛来するシャドーボールを弾き飛ばし、打ち消す。そしてそのままコーシャンに接近し、手刀を振り下ろした。
「かわすんだ!」
 寸でのところでコーシャンは転がるように手刀を回避。キリキザンと距離を取る。
「猫の手だ!」
 そしてまたしても猫の手。手から出て来たのは、四方八方に飛び散る電撃だ。
 キリキザンこの電撃を、さっきと同じように身を退いて回避する。
「放電……これじゃない。コーシャン、もう一度!」
 どうやら何か一つの技を狙っているらしいNは、執拗に猫の手を指示。コーシャンも手を光らせ、虚空から無数の岩を落下させる。
「岩雪崩など、恐れることはありません。キリキザン、辻斬り!」
 降り注ぐ岩石を、キリキザンは両腕の刃を切り刻んでしまう。
「さて、どのような技を狙っているかは分かりませんが、それが出る前に決めますよ。キリキザン、瓦割り!」
「コーシャン、猫の手!」
 駆け出すキリキザンに対し、コーシャンが手から放ったのは波状の電撃だった。電撃は高速かつまっすぐにキリキザンへと向かっていき、キリキザンに直撃する。
「電撃波……これでもない。コーシャン、もう一度!」
 コーシャンはまたしても手を光らせると、尻尾に水を纏い、キリキザンに接近。尻尾を叩き付けた。
「アクアテールですか。炎タイプの癖に味な技を使うではありませんか。キリキザン、シザークロス!」
 キリキザンは交差させた腕を振るい、コーシャンを十字に切り裂く。
「瓦割りです!」
「っ、かわして猫の手!」
 振り下ろされる手刀をかわし、コーシャンは手を光らせる。そして今度は足に炎を灯して跳躍し、キリキザンの顔面にドロップキックのような蹴りを浴びせ、身を捻りながら後退。静かに着地する。
 今のブレイズキックで、キリキザンには大きなダメージを与えられだろう。しかし一撃で倒せなかったのは、コーシャンにとってはあまり良いことではなかった。なぜなら、
「キリキザン、メタルバースト!」
 次の瞬間、キリキザンは鋼の光線を発射する。
「やばい……コーシャン、ダークリゾルブ!」
 コーシャンも急いで闇のオーラをドーム状に放つ。
 メタルバーストは直前に受けたダメージを1.5倍にして反射する技。ブレイズキックで大きなダメージを与えたのはいいが、中途半端に体力を残してしまったがゆえに、かなり強力な光線を発射されてしまった。
 鋼の光線と闇のオーラがぶつかり合う。ダークリゾルブも瞑想で強化されているのだが、少しずつ光線がオーラを押していき、やがて突き破った。
「コーシャン!」
 光線の直撃を受けて吹っ飛ばされるコーシャン。ダメージは大きいだろう。
「くっ、コーシャン、猫の手だ!」
 立ち上がってコーシャンは手を光らせる。が、またNの目当ての技は出ず、コーシャンは宇宙の力を見に宿すだけだった。
「キリキザン、シザークロスです!」
「かわせ!」
 キリキザンが交差した腕でコーシャンに斬りかかるが、コーシャンはバックステップで回避。さらに後ろに下がり、キリキザンと距離を取った。
 「コーシャン、猫の手!」
 コーシャンはまたしても手を光らせる。そして、コーシャンの手からは青白い火の玉が無数に飛び出した。
「来た……!」
 Nの表情が少し明るくなる。どうやらこの技——鬼火を狙っていたようだ。
 鬼火はゆらゆらとした不規則な動きでキリキザンを取り囲むと、少しずつキリキザンの体を焼いていき、火傷状態にする。
「小癪な。キリキザン、瓦割り!」
 手刀を構え、キリキザンは地面を蹴って飛び出す。が、しかし、
「コーシャン、猫の手だ!」
 コーシャンは手を光らせ、その手を地面に叩きつける。すると地面は大きく揺れ、動き、キリキザンも足を止めてしまった。
「地震……キリキザン!」
「まだだ! 猫の手!」
 キリキザンは立ち上がろうとするが、そこにコーシャンの追い打ちが放たれる。光る手から飛び出したのは、波動の球体だった。
「今度は波動弾……キリキザン、辻斬り!」
 膝立ちのまま、キリキザンは腕を振るって高速で飛来する波動弾を切り捨てる。もし喰らってれば一発で戦闘不能なっていただろう。
「シザークロス!」
 すぐさま駆け出してキリキザンはコーシャンに接近。コーシャンを十文字に切り裂き、
「瓦割りです!」
 続け様に手刀を振り下ろす。
 効果抜群を含むこの二連続攻撃はコーシャンも堪えたと思ったが、キリキザンは火傷で攻撃力が下がっており、コーシャンはコスモパワーで防御が上がっている。コーシャンの受けたダメージはさほど大きくないだろう。
「キリキザン、辻斬り!」
「コーシャン、かわして猫の手だ!」
 キリキザンの斬撃を転がるようにかわし、コーシャン手を光らせる。そこから飛び出したのは、一発の波動弾だ。
「ぬぅ、辻斬り!」
 高速で飛来する波動弾を、キリキザンは腕の刃を一閃して切り裂き、消滅させる。
「キリキザン、瓦割りです!」
 そしてキリキザンは、コーシャンを仕留めるべくさらに追撃しようと、再度地面を蹴って勢いよく飛び出し、手刀をコーシャンへと振りかざすが、
「猫の手!」
 コーシャンがかざした光る手から空気の刃が飛ばされ、キリキザンは切り裂かれた。
「ぬぅ、キリキザン!」
 その攻撃にキリキザンは怯んでしまい、また動きを止めてしまう。

「コーシャン、フレアドライブ!」

 その隙にコーシャンは燃え盛る爆炎を纏い、突貫。怯んだキリキザンに激突して吹っ飛ばした。
 キリキザンはゴロゴロと地面を転がり、壁に激突。火傷やその他諸々のダメージが溜まっていたため、体の各所は焼け焦げ、完全に戦闘不能となっていた。
「戻りなさい、キリキザン」
 ゲーチスはキリキザンをボールに戻す。
「下手な鉄砲も数撃てば当たるということでしょうか。あれだけ猫の手を使えば、一発くらいは目当ての攻撃も出るでしょう。あなたは運が良かったにすぎません」
 しかし、とゲーチスは続ける。
「その幸運は、そう何度も続きませんよ」
 そしてゲーチスは、三体目のポケモン——即ち、最後のポケモンが入ったボールを、手に取る。
「正直、ワタクシはこの戦いにさほど意味があるとは思えないのですがねぇ……最初はああ言いましたが、キュレムさえ復活すれば我々の勝利は確定。ワタクシがポケモンバトルで負けた程度で、それを諦めるでしょうか?」
「…………」
 Nは黙ったまま答えない。
「答えは否です。なので、こんなお遊びのような前哨戦に意味はありません——が、まあ、最後まで戦うのも一興でしょう」
 と、何が言いたいのか分からないまま、ゲーチスは最後のボールを放る。
「さぁ、出て来るのです。深淵の化身よ——」