二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 558章 離断 ( No.814 )
日時: 2013/03/28 16:25
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「ハサーガ、ドラゴンバイト!」
「リーテイル、エアスラッシュ!」
 地中からハサーガの頭が三つ飛び出し、リーテイルに襲い掛かる。リーテイルも高速で空中を飛びまわり、牙を回避しつつ空気の刃を飛ばしてハサーガを切り裂いていく。
「怒りの炎だ!」
 だがハサーガも、弱点である殻を被った頭を攻撃されなければ怯んだりはしない。三つのうち二つの頭は口から怒りの業火を吐き出す。
「流石に効果抜群の技は喰らえないな……リーテイル、急上昇!」
 リーテイルは一気に上昇し、ハサーガの炎をかわしつつ牙の届かないところまで飛ぶ。そして、
「出て来ないっていうのなら、こっちから引きずり出してやる。リーテイル、ありったけの力を込めてドラゴンビート!」
 リーテイルは大きく息を吸い込む。リーテイルの胸が大きく膨らむほど、肺活量の限界まで空気を吸い込み、一気に吐き出す。
 次の瞬間、空気を震わせる龍の音波が砂漠に響き渡った。耳をつんざき、鼓膜を破るほど大音量の咆哮は一直線に砂漠の地面へと発射され、思い切り砂を舞い上げる。
 大量の砂が吹き飛び、身を隠していたハサーガの姿が露わになった。
「今だリーテイル! リーフブレード!」
 ハサーガが姿を現したことで、リーテイルは一直線にハサーガへと向かう。狙うのは唯一殻を被った頭だ。
「させん! ハサーガ、怒りの炎!」
 ハサーガは三つの頭から憤怒の業火を吐き出すが、リーテイルは次々とそれらをかわしていく。
「ドラゴンバイト!」
 最後に残った殻を被っていない頭が牙を剥いてリーテイルに襲い掛かるが、直線的に向かってくる攻撃などリーテイルには通用しない。少し高度下げ、リーテイルは潜り抜けるように回避する。
 そして、遂にハサーガの殻を被った頭へと接近した。
「もらった!」
 飛行時の加速に合わせて一回転し、リーテイルはスピードを上乗せした尻尾の葉っぱを振り下ろす。
 が、しかし、

「掛かったな! ハサーガ、ぶち壊す!」

 リーテイルが葉っぱを振り下ろす寸前でハサーガは動き出した。最後の頭で凄まじい勢いの頭突きを繰り出し、リーテイルを吹っ飛ばす。
「なっ、しまった……リーテイル!」
 思わぬ一撃を受け、大きく吹っ飛ばされるリーテイル。空中でなんとか態勢を立て直すが、不意を突かれたこともあってダメージは大きい。
「そうだよね……殻を被ってる頭が弱点だからって、攻撃できないわけじゃない。失念してたよ」
 イリスは反省し、再びハサーガ、ザートと相対する。
「次こそは決める。リーテイル、エアスラッシュ!」
「ハサーガ、潜る!」
 リーテイルは背中の葉っぱを羽ばたかせて空気の刃を無数に飛ばすが、ハサーガは一瞬のうちに地中に潜り、飛来する刃を全てかわしてしまう。
「ドラゴンバイトだ!」
 そして地中から三つの頭が飛び出し、牙を剥いてリーテイルへと襲い掛かる。
「リーテイル、かわしてリーフブレードだ!」
 一直線に襲い掛かるハサーガの牙をかわし、リーテイルは尻尾の葉っぱで首元などを切り裂いていく。
 弱点は殻のある頭だが、他の頭や体に攻撃してもダメージがないわけではない。弱点を攻撃して一撃で倒せる保証があるわけでもないので、今のうちにハサーガへのダメージを稼いでおく。
「エアスラッシュ!」
 執拗に襲ってくるハサーガから一旦離れ、リーテイルは背中の葉っぱを羽ばたかせて空気の刃を無数に飛ばし、ハサーガを切り刻む。
「続けてリーフブレード!」
 今度はエアスラッシュを受けて怯んだハサーガ接近し、尻尾の葉っぱで切り裂いていく。
「小癪な。ならばこれはどうだ? ハサーガ、怒りの炎!」
 三つの頭は口から憤怒の業火を吐き出す。このハサーガが吐き出す怒りの炎は通常の怒りの炎と比べて軌道が直線的だ。なのでリーテイルなら難なく回避できる。
 しかし、今回の怒りの炎は、それだけでは終わらなかった。

 突如、地中から火柱が噴き出す。

「っ!? リーテイル、ドラゴンビート!」
 三つの頭から放たれる炎をかわした直後、火柱がリーテイルに襲い掛かる。リーテイルは咄嗟に龍の鼓動の如き音波を発射して相殺したが、他の頭が続けて放った炎をかわし切れず、掠めるように受けてしまった。
「ぐっ、リーテイル!」
 姿勢を崩しかけるが、なんとか立て直すリーテイル。これ以上追撃されては困るので、一度距離を取る。
「今の火柱は、怒りの炎か……?」
 恐らく、地中から真上に向けて怒りの炎を発射したのだろう。まっすぐに放つ炎ならでは攻撃方法と言えるが、地中から撃てるのは視界が他の頭とリンクしているハサーガくらいなものだろう。
「今の攻撃も避けるか。流石は英雄、侮れん。ならば、次はこれだ! 怒りの炎!」
 次の瞬間、またしても地中から火柱が噴き出される。だが今回は一発ではなく、四本の火柱がリーテイルを取り囲む。
「ラストだ、怒りの炎!」
 そして最後に放たれた炎は、リーテイルの真下から噴出された。取り囲まれているリーテイルには、逃げ道が真上しかない。
「リーテイル、とにかく上昇だ! 逃げ切れ!」
 リーテイルは真上に向かって上昇し、迫り来る火柱から逃げる。だが一直線に上がってくる炎は意外と速く、少しずつリーテイルとの距離も詰められていく。
「振り切れないか……だったら打ち消す! ドラゴンビート!」
 逃げ切れないと見るや否や、リーテイルはすぐさま振り向き、龍の咆哮を放つ。
 咆哮は火柱に直撃し、火柱は消滅したが、
「捕えろ! ドラゴンバイト!」
 地中から四つ頭が飛び出し、リーテイルに襲い掛かる。火柱に囲まれていたので避けきれず、リーテイルの体には何本もの牙が突き刺さる。
「引きずり込め!」
 そしてハサーガはリーテイルに牙を突き立てたまま、地面へと叩き落とし、地中へと引きずり込もうとする。途轍もない圧力をかけられたリーテイルは、酷く苦しそうな表情をしている。
「まずい……リーテイル、脱出するんだ! ドラゴンビート!」
 うつ伏せで捕えられたことが幸いし、リーテイルは真下に向けて龍の音波を放つ。その衝撃で砂が吹き飛び、ハサーガの姿が全貌ではないものの露わになった。
「もう一発! ドラゴンビート!」
 再び咆哮し、リーテイルは音波をハサーガの、殻を被った頭に直撃させる。
 弱点を攻撃されたハサーガは思わず牙を離してしまい、その隙にリーテイルはハサーガと距離を取る。
「危なかった、あのまま地中に引きずり込まれてたら終わってたな……」
 戦慄するイリスは、バトルが長引くのは不利だと判断し、リーテイルに攻撃を指示する。
「リーテイル、エアスラッシュ!」
「潜る!」
 だが、リーテイルの攻撃は地中に潜ったハサーガには届かない。
「ドラゴンバイトだ!」
 直後に頭が四つ飛び出し、リーテイルに襲い掛かる。
「かわしてリーフブレード!」
 次々と向けられる牙を避け、リーテイルは尻尾の葉っぱを振るうが、ハサーガは止まらない。
(まずい……このままじゃリーテイルのスタミナがもたない)
 リーテイルはイリゼとの特訓で防御力が強化された。そのため、まだハサーガの攻撃を受けても耐えることは十分可能だろう。
 だがこの暑い気候に加え、ハサーガの猛撃を避け続けていればスタミナが切れるのは当然だ。もしリーテイルが動けなくなれば、その時こそ一巻の終わり。その前に何とかしなければならない。
「賭けてみるか……リーテイル、リーフストーム!」
 リーテイルは背中の葉っぱを羽ばたかせ、葉っぱの渦を発生させる。渦は次第に大きくなり、やがて嵐の如く強大となり砂漠の砂を舞い上げた。
「むっ……!」
 ドラゴンビートのように嵐は砂を吹き飛ばしていき、少しずつハサーガが姿を現す。同時に葉っぱもハサーガを切り刻み、ダメージを与えていく。
「行けるか……?」
 ハサーガが動かないこともあり、このまま押し切れるかかもしれないと期待するイリスだったが、その考えは甘かった。

「ハサーガ、ドラゴンバイト!」

 次の瞬間、ハサーガは嵐を突っ切ってリーテイルに突っ込む。そして四つの頭すべてが牙を剥き、リーテイルに突き立てた。
「しまっ……!」
 嵐の中では流石のハサーガも動けないと思ったが、そんなことはなかった。ハサーガはリーテイルを捕えると、今度はドラゴンビート対策にと仰向けにして地面に引き込む。
「ハサーガ! そのままリーテイルを砂漠の底へと引きずり込め!」
 背中の葉っぱに噛みついたハサーガは、ギリギリとリーテイルを引っ張り、地中へと引きずり込もうとする。
 地中に引き込まれれば、リーテイルはハサーガに一方的にやられるだろう。そのためリーテイルも必死で抵抗し、引き込まれまいとするが——

 ——ブチッ

 そんな音が二回、リーテイルから鳴り響いた。
「——!」
 その光景を目の当たりにし、イリスは目を見開く。ありえない、とでも言うように。しかし、目の前の光景こそが真実であることは明らかだった。
 言葉が出ない、声が出せない。それでもイリスは、仲間の名前を呼んだ。
「リーテイル——!」

 リーテイルの背中に生えた新緑の葉。リーテイルの二枚の翼は——砂漠の大蛇の牙に、喰い千切られた。