二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 570章 懇願 ( No.838 )
日時: 2013/04/01 14:39
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「アーケオス!」
「ガマゲロゲ!」
 諸刃の頭突きがガマゲロゲに炸裂し、ガマゲロゲは大きく吹っ飛ばされる。
 同時にアーケオスも多大な反動を受け、ガマゲロゲとは逆方向に吹っ飛んでいった。
 ガマゲロゲはアーケオスの決死の攻撃を受けて戦闘不能。アーケオスも毒のダメージが蓄積したところに諸刃の頭突きの反動がとどめとなり、戦闘不能。つまり、両者共に戦闘不能だ。
「ありがとう。戻ってくれ、アーケオス」
「……戻りなさい、ガマゲロゲ」
 Nとゲーチスはそれぞれのポケモンをボールに戻す。
 これでNの手持ちは残り三体。対するゲーチスは残り二体と、現時点ではゲーチスが劣勢となっている。
 二人はそれぞれ次なるボールを構え、ポケモンを繰り出した。
「ドラピオン! 逃げ惑う民に破壊の弾圧を!」
「力を貸してくれ、ギギギアル!」
 ゲーチスの五番目のポケモンは、化け蠍ポケモン、ドラピオン。
 紫色の巨大な蠍のような姿をしているが、上半身と下半身が独立し、長く伸びた蛇腹状の関節で接続されているという独特なシルエット。両腕や尻尾の爪は鋭く煌めいている。
 対するNが繰り出すのは、歯車ポケモン、ギギギアル。
 大きな歯車と、顔のある歯車、中央の歯車、赤いコアのある歯車の四つからなり、スパイクの付いたリングギアが下部を囲んでいる。
「ギギギアル、まずはギアチェンジだ!」
 鋼タイプであるギギギアルには、ドラピオンの毒技は通じない。なのでギギギアルは無理に攻めず、ギアを入れ替えて攻撃力と素早さをあげ、準備を整える。
「ふん、だからなんだと言うのです。ドラピオン、こちらも爪とぎ!」
 ドラピオン地面で爪を擦って研ぎ澄まし、攻撃力と命中率を上げる。ドラピオンも攻撃する準備を整えてから攻めに移るようだ。
「もう一度です、爪とぎ!」
「ギアソーサー!」
 ドラピオンが再び爪を研ごうとするが、そこにギギギアルが二つの歯車を射出し、妨害する。
「小癪な、クロスポイズンです!」
 飛来する二つの歯車を、ドラピオンは毒を含んだ爪を交差させて振り、弾き飛ばす。
「ドラピオン、地震!」
 続けて尻尾を地面に叩き付け、強力な地震を引き起こすが、ギギギアルは素早く上空へと逃げ、地震を回避する。
「ギギギアル、ワイルドボルト!」
「クロスポイズンで押し返しなさい!」
 ギギギアルは弾ける電撃を身に纏い、凄まじい勢いでドラピオンに突撃する。ドラピオンも毒を含んだ爪を交差させて振るい、ギギギアルと競り合う。
 しばし押し引きがあったものの、最終的にドラピオンのクロスポイズンは電撃を切り裂き、そのままギギギアルを押し戻した。
「地震です!」
 そしてドラピオンは、すぐさま地面に尻尾を叩き付け、地震を引き起こす。
「っ、避けろ、ギギギアル!」
 宙に浮いていてもギギギアルの特性は浮遊ではない。衝撃波には当たってしまうので、急いで上昇して地震を避ける。
「ギギギアル、ギアチェンジ!」
 ギギギアルは再びギアを取り換え、攻撃と素早さを上昇させる。そして、
「ワイルドボルトだ!」
 弾ける電撃を纏い、ドラピオンに突っ込む。
「ドラピオン、クロスポイズン!」
 対するドラピオンはさっきと同じようにクロスポイズンで迎え撃つが、ギアチェンジでさらに増した攻撃力には敵わず、今度は押し切られてしまう。
「いいぞギギギアル。次はぶち壊す!」
 態勢を崩したドラピオンに、ギギギアルは全てを破壊するかのような勢いで突貫。ドラピオンを吹っ飛ばした。
「ギアソーサーだ!」
 続けて歯車を二つ飛ばし、ドラピオンの体をギリギリと締め付ける。この連続攻撃には、防御の高いドラピオンでも効いただろう。
「小賢しい……! ドラピオン、爪とぎ!」
 歯車に解放されると、ドラピオンは地面で爪を擦り、研ぎ澄ます。
「ギギギアル、ぶち壊す!」
「ドラピオン、クロスポイズン!」
 ギギギアルは全てを破壊するかのような勢いで特攻し、ドラピオンは毒を含む爪を交差させながら振るい、お互いの技が激突する。
 どちらも微動だにせず、しばらく静かな押し合いがあったが、やがてどちらも同時に身を退いた。
 だが、その後の反応は、ドラピオンの方が速かった。
「喰らうがいい! 炎の牙!」
 ドラピオンは素早くギギギアルに飛びかかると、炎を灯した牙で歯車に噛みつく。ギギギアルの防御は高いものの、効果抜群の攻撃では大きなダメージになる。
「くっ、引き剥がすんだ! ギギギアル、ワイルドボルト!」
「決してギギギアルから牙を離すな! ドラピオン、炎の牙!」
 ギギギアルは全身に弾ける電撃を纏い、その電撃でドラピオンを引き剥がそうとするが、ドラピオンは牙を喰い込ませたままギギギアルから離れようとしない。
「こんな距離じゃギアソーサーも使えない。なら……ギギギアル、飛ぶんだ!」
 Nの指示を受け、ギギギアルは上空へと浮遊する。それによってドラピオンは宙吊りにされるが、それでもまだ牙を離さない。
 だが、次の瞬間。

「ギギギアル、ぶち壊す!」

 ギギギアルは凄まじい気迫を発しながら地面に向かって突っ込む。ギアチェンジで三倍速となったギギギアルのスピードは相当なもので、途轍もない勢いで地面に激突する。
「ぬぅ、ドラピオン!」
 上空から思い切り叩き付けられ、ギギギアルと地面の板挟みとなったドラピオンは遂に炎の牙を止めてしまう。
「今だギギギアル! ワイルドボルト!」
 一旦ドラピオンから離れ、電撃を纏ってからギギギアルは再びドラピオンへと特攻するが、
「させん! ドラピオン、地震!」
 ドラピオンも地面に尻尾を叩きつけて地震を引き起こす。その際に発生した衝撃波でギギギアルの纏っていた電撃を消し飛ばし、動きも止める。
「炎の牙!」
「ギアソーサー!」
 ドラピオンはそのまま牙に炎を灯してギギギアルに飛びかかるが、ギギギアルも素早く歯車を二つ飛ばし、ドラピオンの動きを封じた。
「ワイルドボルトだ!」
 その隙に電撃を纏い、ギギギアルはドラピオンに突貫する。
「クロスポイズンで押し戻せ!」
 対するドラピオンは、力ずくで無理やり歯車を弾き飛ばし、毒を含んだ爪を交差させてギギギアルを迎え撃つ。
 しばらく双方はせめぎ合ったが、やがてドラピオンがギギギアルを押し返した。
「今度こそ決めろ! 炎の牙!」
 そしてドラピオンはすぐにギギギアルに飛びかかり、炎の牙を喰い込ませるが、
「ギギギアル、飛ぶんだ!」
 ドラピオンが齧り付いた瞬間、ギギギアルは上空へと急上昇した。それが何を意味するのかは、もうゲーチスにも理解できる。
「まずい……! ドラピオン、ギギギアルから離れるのです!」
 慌ててゲーチスは指示を飛ばすが、もう遅い。
「ギギギアル、ワイルドボルト」
 ギギギアルは激しい電撃を身に纏い、一気に急降下し——地面に激突した。
 その衝撃で中途半端に牙を抜いていたドラピオンは弾き飛ばされ、地面に叩きつけられる。横たわってピクリとも動かないところを見ると、戦闘不能になったのだろう。
 そして地面に自分から突っ込んでいったギギギアルも、ワイルドボルトの反動で体力が限界を迎え、戦闘不能。
 またしても、両者戦闘不能になってしまった。
「またしても……!」
 その光景を見てゲーチスは、さらに怒りの眼差しを、Nに向けるのだった。



 ホワイトキュレムの龍の波動をかわすポケモンたちに、イリスはひたすら指示を出す。
「ウォーグル、ビルドアップからシャドークロー! デンチュラはアクアボルト!」
 ウォーグルは筋肉を増強させてから影の爪でホワイトキュレムを切り裂き、デンチュラは電気を帯びた水流を直撃させる。
「デスカーン、鬼火! チラチーノ、とんぼ返り!」
 デスカーンは青白い鬼火を放つが、大地の力で止められる。地面から噴き出す土砂を避けつつ、チラチーノはホワイトキュレムに体当たりし、素早くこちらへと退避した。
「このままじゃこっちのスタミナが持たないな……デンチュラ、ギガドレイン! チラチーノ、アクアテール!」
 デンチュラとチラチーノはホワイトキュレムに接近し、体力を吸い取り、水を纏った尻尾を叩き込む。だが、効果は薄い。
 そうこうしているうちに、ホワイトキュレムは巨大な火球を生成し、振り下ろすようにして放ってきた。
「クロスフレイム……みんな、とにかく回避だ!」
 しかし火球は相当な大きさで、デンチュラとデスカーンに直撃、ウォーグルも火球を掠めてしまった。
 効果抜群のデンチュラは一発で戦闘不能、防御力の高いデスカーンも致命傷で、ウォーグルに至っては戦闘不能でこそないが、今にも墜落しそうだ。
「でも、もう少しで行けそうなんだよな……」
 なんとなく、漠然とした感覚ではあるが、イリスは感じる。キュレムとレシラムは剥がれかかっている。もう一押しで、分離するかもしれないと。
「N……」
 同時にイリスは、ゲーチスと戦うNに視線を移す。ホワイトキュレムと戦っている間、何度もNの方を見てしまう。今はちょうど、Nのギギギアルとゲーチスのドラピオンが相打ちになったところだ。
 あのギギギアルはNの四体目、対するゲーチスのドラピオンは五体目だ。となると、
「そろそろかな……頼むよ、Nに力を貸してくれ。そして今回も、あの三つ首の龍を倒すんだ、僕のエース——」