二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: エピローグ ( No.852 )
- 日時: 2013/04/14 15:27
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- 参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html
人生にエピローグなんてない。それでもあえて、区切りをつけるとしたら……プラズマ団との激闘の終結を、僕の一つの物語の終止符とするならば、やはりエピローグは必要だろう。
エピローグと言うより後日談と言った方がしっくりくる気がしなくもないけど、そこはせめてもの格好つけと言うか、気取らせてもらいたいところだ。
さて、プラズマ団との戦いが終わり、平和な世界——平和なイッシュ地方が戻って来たわけだけど、それでもプラズマ団が残した爪痕は大きい。とりあえずジャイアントホールはポケモンリーグ本部や旧PDOの人たちの手を借りて完全に封鎖し、キュレムに人の手が届かないようにすることで再発防止に努めている。その他プラズマ団が破壊活動を行ったところも、同じように街の人たちなどが慈善活動として復旧してくれた。完全に元通りになるには時間がかかるけど、今のところ心配はいらないだろう。
まあこれを読んでいる人からすれば、今のイッシュ地方よりも気になることがあるのかもしれないね。街よりも復旧が難しいのは、やっぱり人。具体的には、プラズマ団員たちの行方だ。
プラズマ団は世界各国から大量の人材を集めていたようで、全ての団員を服役させるほどの収容数は、今の警察にはないそうだ。なので明らかに悪行を働いた下っ端だけを拘束し、特に何もしていない者や、改心の余地がある者は無罪放免にされている。
けれどもそれは下っ端の話。直属部下と言われる面々は、そう簡単にはいかない。中には無罪になったり減刑されたり、逃亡したものもいるのだが、多くは国際警察に引き渡され、現在服役している。当然と言えば当然だ。
直属部下と言う、言わばダークトリニティを除けばプラズマ団で三番目に高い地位にいる者たちがこの始末だ。7Pたちは問答無用で極刑に処されるのかと言われれば、実はそんなことはなかったりする。というかこれは僕も驚きなのだが、7Pの大半は服役していない。どころかほぼ全員が無罪なのだ。
話を聞くに、7Pのアシド。彼はプラズマ団として活動していた頃に膨大な研究データを秘蔵していたらしく、そのデータは世界の科学力や技術力を大きく進歩させるものだそうだ。彼はそのデータを引き渡す代わりに自身の無罪放免、そして他の7Pの減刑を要求した。つまりは取引だ。
色々と検証したりした結果、国際警察は取引に応じ、7P全員を減刑、アシドは無罪となり、どこか別の地方へと行ってしまった。個人的にはあの男を野放しにしておくのは危険だと思うのだが、父さんは何も心配いらないと言っていたから、まあ大丈夫なのだろう。自己中心的な男だったが、プラズマ団という組織でとはいえ、仲間を助けるようなことをしたのは驚きだが。
次に7Pフレイとフォレス。この二人も無罪なのだが、この二人に関しては所在がつかめないままとなっている。逃亡、というより行方不明だ。船や飛行機の乗客リストも洗ったそうだが、それらしき名前はないとのこと。どの道二人とも無罪なのだから、それほど気にすることはないだろう。少なくともフレイに関しては、ミキちゃんの証言だと問題ないそうだし。
そう言えば、その二人が気にしていたらしい7Pのレイ。彼女の行く末についてはかなり驚かされた。
彼女はアシドの取引で刑が軽くなり、未成年ということもあってなのか実質的に無罪となっていたのだが、彼女には身寄りがなかった。そこまでは予想の範疇なのだが、なんと彼女を引き取ったのはあのザキさんなのだ。口では嫌々言いながら、今でも彼女やミキちゃん、ロキさんやユキさんと一緒に暮らしている。ミキちゃんは、最初は戸惑っていたが、姉が出来たみたいだと喜んでいた。少しだけその家庭を覗かせてもらったことがあるが、遠くない未来、ミキちゃんには本当に姉が出来そうだった。
逃亡で思い出したが、7Pのエレクトロ。彼はプラズマ団に入る前はなんとテロリストで、逃亡中に艱難事故に遭って記憶喪失になったらしい。だからこそゲーチスに引き込まれたのだろう。
エレクトロはプラズマ団での罪はほぼ無罪だったが、テロリストとしての罪状が重なり極刑になりそうだったのだが、リオさんたちが弁護して最終的には軽い刑罰となり、数年の服役になった。何故リオさんたちがエレクトロを庇ったのかは謎だが、まあ彼女たちにもいろいろあったのだろう。
謎と言えば、結局7Pで最も謎だった人物、ドランが何者だったのかは分からず仕舞いだった。恐らく人間でない何かなのだろうが、それを知るのは7Pと、最終決戦の時に戦ったムントさんだけ。しかし7Pは口を割らず、ムントさんにも黙殺される。そこまで秘密にされると気になってしまうが、何か言えない事情でもあるのだろう。
ただ気になったのは、ムントさんが古い石製の牙を持ってソウリュウのシャガさんと何か話していたことだ。シャガさんから話を聞くと、その牙はソウリュウシティの深部で静かに安置されているらしい。一体何だったのだろうか、あの牙は。
最後に、7Pのリーダーを務めていたガイア——否、ザート。彼女は減刑を受けても無罪にはならず、結局服役することとなったのだが、彼女はそれを自然に受け入れていた。最後に戦ったよしみというか、ちょっとした用事で一度だけ彼女と面会したが、その時、こんなことを言われた。
「英雄よ、プラズマ団は消え去ったが、我の思想は消えていない。我は伝説の力を世界に伝える……が、武力でそれを知らしめるのは効率が悪いと、今回の戦いを通して理解した」
効率とか言っちゃうのかよ、と思ったりもしたが、ザートの表情は真剣そのものだったので、僕は黙って聞いていた。
「我はこのように拘束されており、しばらくはなにも出来ん。だから英雄、お前に一つ頼みがある。伝説のポケモンと共に戦った貴様なら、伝説の力が理解できるはず。だから頼む、その力の強さ、そして偉大さ。それを、世界の民に伝えてくれ」
要は、伝説のポケモンはどれほど凄いのかを、世界の人たちに教えてくれということだろう。今回の戦いを通して、僕も伝説のポケモンがどれほど強大な力を持っているのかは理解した。扱いを誤れば、世界を滅ぼしかねない力を持っていると理解した。だからザートの要求は二つ返事で了承した。彼女は満足そうに目を閉じて、その時の面会は終了した。
とまあこんな感じで、概ねあの戦いでの因縁は片付けたわけだ。今にして思えば、僕が旅をしていた理由は、プラズマ団と戦うためにあった。プラズマ団を倒すことこそが旅の目的で、プラズマ団を倒そうとするからこそ強くなれた。そう思えば、悪の組織というのも、完全に悪ではないのかもしれない。好意的に解釈するなら、僕はプラズマ団のお陰でここまで強くなれたし、成長できた。
だがプラズマ団が僕の人生の目標なら、プラズマ団が解体した今、僕は目標を失ったことになる。
まあでも、よく考えれば僕がプラズマ団と戦ってきたのは三年くらいだ。あの戦いが終わっても僕は十五歳。確かにあの戦いは僕にとって一つの区切り、終止符となったわけだが、それで僕の旅が終わるだなんて思っていない。そうだな、父さんやロキさんみたく、他の地方を旅するのもいいかもしれない。イッシュにずっと残っていたのも、英雄なんて責務があったからで、もう僕は英雄ではないわけだし。
ともかく、プラズマ団との戦いは終わった。だけどそれは、少なくとも僕にとってはただの一通過点でしかない。僕の人生はまだ長い、僕の物語はまだ半分以上が白紙なのだ。もっと書き連ねていかなくてはならない。
僕たちの戦いはまだまだ続く、なんてことを言うと週刊誌の打ち切りみたいだけど、戦わなくとも僕たちの旅、僕たちの物語っていうのはずっとずっと続いていくものだと思う。もし僕が死んでも、僕が生きてきた痕跡は残る。そこからさらに新しい物語が紡がれれば、それは僕の物語が続いていることと同じ。つまり、人の物語というのは繋がって、永遠に続いていくものなんだと思う。
ま、冗長に言葉を並べても仕方がない。文人のように綺麗に、そしてトレーナー風にまとめるなら、こういうことかな——
——僕たちの旅は、人とポケモンの繋がりがある限り終わらない。僕たちは、いつだって人やポケモンと繋がっている——