二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: LILIN  ( No.11 )
日時: 2011/12/05 13:24
名前: そう言えばこしょうの味知らない (ID: 1kkgi9CM)

「教会?」

自分でも素っ頓狂な声を挙げたと思った。
その声色の意図を理解したのかスミレも少々訝しみながらもその続きを話した。

「あぁ、A−11地区にある教会で育ったと本人がさ。本来なら孤児院って意味合いで言いたかったんじゃないかな?」

それもそうだ。地上の装甲の大規模工事が始まったのは、見積もって十数年前のことだ。差し当たり、債権のたまった建物や、歴史ある建造物すら全て一掃されているのが事実だった。そこに歴史ある建造物とされるような古い教会が存在するなど、そう容易いことではない。

それにしても……

「孤児院か」

ふと、昔の事を思い出してしまう。
今となっては、本当にどうでいいと傷つけていた自分がいたこと。いつも無表情で、喧嘩ばかりして、ついに成長してみれば周りが筋肉だらけで勝ち目がなくなり、委縮していた愚かな自分。半分笑って、半分あきれ顔になって俯瞰する。馬鹿め。お前にはちゃんと----------

「……なんか思い当たる節があるみたいだな」
「あぁ、いや違うんだ。つい自分のことを、な」

……あ。

どちらのものか、不意に声がもれた。

「そうか。ごめん、変なこと思い出させて」
「そんな、別にいいんだ。今となって変な心地でまとめ上げられているちっぽけな過去にすぎないんだから」

気にすることはない。そう弁解しながら宥めようと……ん。

胸元に入れておいたケータイが突然震えだし、着信音の讃美歌が高々と屋上にこだました。

「電話?」

同時にスミレが着信を知らせる。

「あぁ、きっと司令部。そろそろ戻るとするよ」
「そう、じゃぁあたしもそうすっかな」
「そうしろそうしろっと」

とりあえず、俺はポケットから取り出し……取り出し……
………………。

「何やってんの?」

またしても訝しぎみに声を掛けられる。

「あぁ、えっと。これ……どう……すればいい?」
「……は?」

既に冷え込んだ来た屋上で、長々と。マリアは静寂を包み込み、優しく、そして一人寂しく歌っていた。