二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.1 )
日時: 2013/01/03 20:45
名前: 雲雀 (ID: QGuPLo0Y)

【その声に。/祐一×珠紀】






 窓の外はもう、夕暮れに染まりつつあった。
 ふと、そのことに気づいて、私は窓の傍にそっと歩み寄る。
 遠くにある山々を包み込んでいく夕日、そのあたたかな光が、今は何よりも心地いい。
 でもその風景に、どうしようもない切なさを覚える自分がいた。
 きれい過ぎるこの風景のせいなのか、優しく包み込んでくれるあの夕日のせいなのか、それとも。

「珠紀……?」

 後ろから、私の名前を呼ぶ声がした。
 振り返れば、まるで静かなこの空気に溶け込むような彼の姿。

「祐一、先輩……」

 驚いて、その人を見る。
 いつも通りの無表情だったその人は、私の顔を見るなり、驚いたように目を見開いた。

「泣いて、いるのか……?」

「え……」

 伝えられた事実に、思わず自分の頬に触れる。
 微かな熱が、指先を濡らした。

「あ、」

 急いで涙を拭い、いつも通りの笑顔を浮かべた。

「なんでもないんです!ただちょっと、この風景がきれい過ぎて……」

 切なくなっちゃって、と曖昧な返事をする。
 でも本当に、そうとしか言いようがなかった。
 現に今も、涙が流れていることに気がつかなかったのだから。

「不安か……?」

 その声にはっとした。
 気づかないうちに逸らしていた目を彼に向けると、

「大丈夫だ。かならず……守るから」

 そう言って、小さく笑んでくれた。
 その言葉に、胸の痛みが増す。






(きっと私は、その言葉も、その笑顔も、)
(ずっと前から、知っていたんだ。)









■後書き

 だからこの切なさは、きっと。

 書き直しました。
 玉依姫が見た彼と、重なって見えたから、切なく思った。そんな感じにしました。