二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.111 )
- 日時: 2012/01/19 21:14
- 名前: 雲雀 (ID: 7aD9kMEJ)
【巡りゆく桜の記憶/総司×千鶴】
目が覚めると、真っ先に自分の手が目に入った。
今まで眠っていたはずなのに、自分の手は何かを求めるように宙へと伸ばされていた。
頬には濡れた感触があり、心には掻き乱されたような痛みがある。
伸ばした手をゆっくりと自分の方へと引き戻す。
まるで、求めた何かを拒んだような仕草でもあった。
「夢……」
何か夢を見た気がする。
とても悲しい夢。
きっとこの胸に残る痛みは、その夢のものだ。
でも、何を見たのか、何がこんなにも心を掻き乱したのか、何も思い出せない。
「うーん……」
今日は学校の入学式でもあるというのに。
なんとなく釈然としない。
それらの考えを振り払うように、千鶴は首を振った。
「とにかく学校……」
ベッドから起き上がり、着替えをすませるために壁にかけられた制服へと手を伸ばす。
心にはまだ、悲しみが残ったままだった。
◇
「わぁ……っ」
四月の初めなだけあって、学校の桜は満開だった。
こぼれんばかりの笑顔でその光景を見つめていると、ふと木の下に誰かが座っていることに気付いた。
淡い色のセーターを着た男子生徒。
桜と共に揺れる髪はとても柔らかそうだった。
「え……?」
その光景に、涙があふれる。
心のどこかで、喜びと悲しみがせめぎ合っていて、上手く表現できない。
「ん……?」
彼が振り返る。
でも彼から目が離せない。
やがて、長い前髪からのぞく翠緑の瞳と目が合った。
「……何?君……泣いてるの?」
かけられた言葉は酷く懐かしくて、
けれど思い出せないもどかしさに、掌を握り締めた。
「あ……」
何故、その名を知っているのか。
何故、こんなにも懐かしいのか。
何故、こんなにも求めているのか。
何故……こんなにも愛しいのか。
「……総、司……さん……?」
その名前を聞くと、驚いたような顔をされる。
それは自分も同じで、何故その名を知っているのか分からない。
なにも思い出せないけれど、でも、それでもきっと。
変わらないあなたの姿を求めて、きっと私はこの場所を選んでいた。
「千、鶴…………?」
返ってきた名前に、また涙があふれて。
我知らず、微笑んでいた。
夢と重なったあなたの姿。
桜が舞う中で見るあなたの姿はとても儚くて、
手を伸ばしても届かなくて、
だから切なくなったのか。
この手を伸ばすことを躊躇ったのか。
でもこの心はずっと、あなたと再び出逢うことを望んでいた。
だから、こんなにも愛しいのか。
伸ばした手に重なるぬくもり。
そのぬくもりで色づいていく、甘く切ない記憶の欠片。
安らぐあなたの腕の中で、果てしない想いが目を覚ます。
「やっと、あなたに会えた——————————」
■後書き
先に謝ります。御免なさい。
無理矢理文章にしたので、いつもより粗末な文章になっております。
「薄桜鬼」のSSLで、もしも生まれ変わって出会えていたら、こんな感じではと……思いまして……。
書き直せたら、書き直したいと思います。