二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.124 )
日時: 2012/02/10 21:40
名前: 雲雀 (ID: zTHJAdPC)

【架かる虹の麓へ】






——————————迷子の足音消えた


——————————代わりに祈りの歌を


——————————そこで炎になるのだろう


——————————続く者の灯火に






「エース……また歌ってるのか?」

彼がいつも口ずさんでいる唄。
それは幼い頃、何度かマザーの口から聴いた唄で、エースはその唄を気に入っているらしい。
最後になるかもしれない戦いの直前に歌っているのだから、余程気に入っているのだろう。
軽く右手を腰にあてながら、セブンはその言葉を口にした。

「まぁ……半分は癖だからな」

そう答えながら、エースは軽く笑った。
クールな印象を持たれがちだが、笑った顔はどこまでも少年らしい。
その会話に、「あ、」とデュースが声をあげる。

「そういえば私、本物の虹って見たことないんです」

「虹?」

「その唄の歌詞に、【架かる虹の麓にいこう】ってあるでしょう?それで思い出して……」

はにかんだような笑顔で、彼女は答える。
その会話はやがて0組の教室全体に広がった。

「そういえば〜、シンクちゃんも本物は見たことないかも〜。ね、ね。トレイは見たことある〜?」

「私もありませんね……本の記述でなら見たことはあるのですが。そもそも虹とは、」

「サイスはどお〜?」

トレイの説明を軽く無視し、近くで軽く口に手をあてていたサイスに問いかける。
トレイは無視されたことなど知らず、そのまま延々と語り続ける。

「あたしもないね。セブンは?」

「いや、ない。エースは?」

「僕もないな。エイトは見たことあるか?」

エースの問いに、エイトは軽く首を振る。
けれど、その次の人間に会話を繋げることはせず、簡単な説明をいれた。

「ここにいる全員、ほとんど同じような環境で生きてきたんだ。一人が見てないなら、全員見てないだろう」

「あー、それもそっかー」

ケイトが軽く関心したような感じで、エイトの背中をバシバシと叩く。
初めのうちこそ迷惑そうな顔をしていたが、やがて諦めたように深くため息をついた。

「ところでよ、虹ってどんなのなんだぁ?」

「あ、僕もよく知らなーい。ねーねー、どんなのー?」

二人の問いに軽くため息をつき、クイーンが説明をはさむ。
「ジャックも知らないのか」とキングは口をはさみかけたが、真意の読めないジャックの笑顔に、口を閉じた。

「虹というのはですね。簡単に説明してしまうと、七色からなる光の層のようなものです」

「へぇ〜、きれいそうだね〜。ね、キング」

ジャックがにこにこという効果音が聞こえてきそうな笑顔をキングに向ける。

「あぁ、そうだな」

キングが簡単に答えると、ナインが複雑そうな顔で声をあげる。
できれば無視したいのだが、そういう訳にもいかず、クイーンはナインの方に向き直った。

「おい、ちょっと待てゴラァ。光の層ってどういうことだ?あぁ?」

「ナインは深く理解しようとしなくていいです」

「そうだな……ナインは本物を見たほうが早そうだ」

全員が全員を見回して、軽く笑う。
それこそ、兄弟のように。

「結局、全員見てないんだな」

エースが口元の笑みをそのままに皆を見る。
先程まで、【ルルサス】や【万魔殿】といった世界の終わりを招くもののことで頭がいっぱいだったのに。
そのような思考回路がどんどんと解かれていく。

「あ、じゃあこの際、皆で見に行かない?ルルサスとシドの馬鹿をぶっ倒した後で!」

「お〜、いいねぇ〜」

ケイトとシンクの会話に、他の全員が笑って頷く。
いつもは慎重派の、トレイやエイト、キングでさえ。

「そうだな……、そんなにきれいなものなら、一度だけでも見ておきたいな」

「私も……今までの説明に信憑性を加える為にも、見ておきたいですね」

「顔がただ見に行きたいと言っているぞ」

「キングには敵いませんね……」

トレイが困ったように笑う。
その後ろで、セブンとサイスも視線を合わせた。

「私は見ておきたいが……サイスはどうだ?」

「はっ、餓鬼共のお守りなんて御免だけど、ここまで聞いたら見るしかないだろ?」

皮肉っぽく、サイスの口元が弧を描く。
それにつられて、彼女も笑った。

「それも、そうだな。ジャックやナインなんか、いつ問題を起こすか分からないしな」

セブンの言葉に、ジャックは軽く笑う。
約一名は本気で怒っている……ような気がする。

「ひっどいなー、セブンてばー」

「どういうことだ、あぁ?」

「あんたは分からなくていいんだよ」

サイスは左に寄った長い前髪を、軽く首を横に振ってどかした。
今までの会話を見て、クイーンとデュースが同時に笑う。

「ふふ……皆同じ、ですね」

「私だけかと思っていました……皆さんもなんですね」

エースは教室の扉の前に立って、皆の方を振り向く。
今まで見たことないような、優しい笑みで笑う。

「じゃあ、皆で虹を見るためにも、ここに帰ってこよう」

その言葉に、全員が再び頷き、
重い扉が、音をたてて開く。



「いつか、全員で」



0組の教室で交わされた、最後の言葉。
暗く深い絶望だけの未来じゃなく、希望で溢れる幸せな未来を連れていこう。
さよならが、来ないように。






(いつかきっと、)
(虹の麓へ)









■後書き

「ファイナルファンタジー零式」大好きなんです。
人数が多いため、だいぶ文章が酷いですが……本当に御免なさい。
そしてレムとマキナが大好きな方、本当に申し訳ありません。
雲雀も二人のことが大好きなのですが、最終章の教室で二人は出てこないので、未登場という形になってしまいました。
EDの「ゼロ」を聴いて、最後にこういう会話があったらいいな、という思いで書きました。
拙い文章で御免なさい。書き直せたら、書き直したいと思います。