二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.140 )
- 日時: 2012/03/09 19:09
- 名前: 雲雀 (ID: Rk/dP/2H)
【思慕の狂想曲—シボノラプソディー—】
いっそ出会わなければ良かったのに、とは思えない。
小説などでは、よく主人公がそう言っている。
でも私は、君に関する全ての記憶が消えてしまえばいいと思ってる。
そうすれば、切なくなることなんてないから。
もう、君のことを目で追うこともなくなるから。
きっと、忘れてしまったほうがいいんだって、ずっとそう思ってる。
どうせ好きでいたとしても、君と会えるのはあと一年だけ。
この学校を卒業すれば、もう二度と君に会えなくなる。
なら、好きでいても仕方がない。
だから、いっそ記憶が消えてしまえばいいと、そう思った。
でも、それでも、君を忘れてしまうのは怖い。
君の目に私はうつっていないんだろうけど、
私の目にうつるのは、いつも君だけだから。
どうして、いつも期待しては諦めて、諦めては期待して、
目が合ってはすぐに逸らして、そっと振り向いては見つめるだけで、
どうして、こんなにも焦がれるんだろう。
言葉を交わすことは、ここ数ヶ月、全くしていない。
クラスも違うし、仲が良いわけでもない。
男に生まれてたら良かったって、何度も思った。
もし男だったら、友達として、君の傍にいれたかもしれないのに。
こんな想いも、芽生えずに済んだのに。
馬鹿みたいな独りよがり。
いつまで続けるんだろう。
短くてもあと一年。
長くてもあと一年。
君に会える時間は変わらない。
会えなくなっても、君はこの心に居続けるんだろう。
私が君を忘れない限り、私が君を切り離さない限り。
誰が人のなかに「好き」という感情を植え付けたんだろう。
こんなの苦しいだけなのに。
何をしてても、君のことが頭から離れなくて、
そのたびに、届かないと諦めて、
閉じた瞼の裏に君の笑顔が浮かぶ。
今すぐ会いたくなるのも、もう二度と会いたくないと思うのも、
結局は君のことが好きなだけで。
もう好きでいるのはやめようって、
何度も、何度も、繰り返して、
でも君の笑ってる横顔を見ると、急に意思が揺らいで、
笑顔を自分にも向けてほしい、その声で名前を呼んでほしい。
そんなことを考えてしまう。
きっとこの人は私を好きにならないって、初めから分かっていたのに。
私にだけじゃなくて、他の人にも優しいんだって、初めから知っていたのに。
頭で理解していても、心には到底敵わない。
冷静に考えようとしても、心の痛みはとれない。
笑っている君の横顔を見て、決めた。
この一年は、君を想い続けよう。
そして会えなくなる日がきた時、
君の幸せを心から祈ろう。
他の何にかえても、私が守り抜きたいもの。
それは君だから。
だから、あと一年だけは、
君を好きでいさせてください。
その笑顔を、心に刻みつけるから。
その声を、心に焼き付けるから。
あなたが歩んでいく道が、幸せなものでありますように。
■後書き
今日「三送会」があって、卒業生というわけではないのに、なんとなく寂しくなりました。
片想いの相手がいる人は、卒業はかなり切ないものなのでは、と思って、今回の小説に至りました。