二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.142 )
- 日時: 2012/03/23 17:19
- 名前: 雲雀 (ID: Rk/dP/2H)
【月下で踊る白うさぎ】
「ギルティはね、人食いうさぎなの」
ぽつり、と少女が呟いた。
少女の腕に抱かれているのは、顔を白と黒の包帯で拘束されたうさぎの人形。
ふたつある耳にも無造作に包帯が巻かれ、ふたつとも冷えた床に向かって垂れ下がっている。
首には真っ赤なスカーフを巻いて、真っ黒な衣装の裾にはヒラヒラしたレースがついている。
愛されているけれど、愛されていない人形。
壊れているけれど、壊れていない人形。
「ギルティはたくさんの人間を喰い殺した……たくさん……たくさん」
少女の白い指が、人形の頬を撫でる。
人形は微動だにしない。
「彼は罪に問われた……たくさんの人間を殺した罪。自分の瞳が血色に染まるまで人間を殺し続けた罪」
生まれながらにして異端な存在。
人間は彼を異端者と呼んだ。
そして人間は、彼から様々なものを奪った。
手足を拘束し、視覚を奪い、聴覚を奪い、味覚を奪った。
「だからギルティは、包帯をたくさん巻いているの」
少女が微笑む。
人形は首をかくりとまげ、噎せ返るほどの血臭が、部屋にたちこめる。
「ギルティは突然変異で肉食だったのよ。でも、馬鹿な人間が可愛いと言って彼に近づいた……彼は、人間を殺した」
それはなんでもない普通のうさぎの物語。
彼はただ、飢えていただけ。
自分の求める獲物に、自分の糧となる獲物に。
踏み越えたのは人間、彼じゃない。
それでも人間は、彼を裁こうと言うのか。
人間が出した判決は有罪。
人食いうさぎは人間の手によって囚われた。
「だからこの子は【GUILTY】……有罪、なの」
ぴったりでしょう?
「彼の魂は今でもここに眠ってる……彼の飢え、渇き、抗えない欲望もここにある……」
人形に巻かれた包帯が、紅く滲み出した。
垂れ下がった耳からも、同様に流れ出る。
それは涙か、血か、彼の中に眠る渇望なのか、誰にも分からない。
「彼は生きているかって?ふふ……じゃあ彼の喉を貫いたこの包帯を外してあげて。そして体の自由を奪ったこの拘束具をほどいてあげて……」
真っ赤な瞳が見えたなら、あなたが囚われた証拠。
真っ白な耳が見えたなら、彼の声を愛しく思う。
血が滲む口が見えたなら、牙を突き立てられる数秒前。
代償なんて、分かりきったことでしょう?
■後書き
ギルティ、ディール、ロンド、サーガ、この言葉を使って小説を書いていきたいと思います。
今回使ったのは「ギルティ」で、「有罪」という意味です。