二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.156 )
日時: 2012/04/18 23:30
名前: 雲雀 (ID: Rk/dP/2H)
参照: http://www.otomate.jp/dialover/

■この小説は「DIABOLIK LOVERS -ディアボリックラヴァーズ-」のラジオで聴いた台詞をもとに書かれています。
主人公の表記は一切ありません。
相手の方はカナトと表記させていただきます。
完全に作者の想像なので、作品のイメージを崩されたくない方はお控えください。






【堕ちる瞬間】



今日、彼氏と別れた。
と言っても、一方的に振られただけなのだけれど。
私のどこが駄目だったのかな、とか。
考えたところで、今更遅いから。
今はただ、数ヶ月前の記憶を思い出して、溢れてくる涙を拭うことで必死だった。



不意に、部屋のドアが乱暴に開けられる。
こんな開け方をする奴は、一人しかいない。
なんでこんな時に、と思いつつ、泣いているところを見られたくないという思いから、ベッドの中に潜り込んだままでいた。



「はぁ……」



長いため息。
一発で慰めにきたのではないと分かった。
いっそ来なくて良かったのに。
今は出来るだけ一人でいたい。
かけている布団を、更に深く被った。



「おばさんに様子見てこいって言われたから、見に来たけど……振られたんだってな、だっさ」



相変わらず、悪態だらけの言葉。
彼氏が出来てしばらく会ってなかったけど、全く変わっていないようだ。
慰めの「な」の字もない。
おばさんということは、お母さんが頼んだのか。
せめて自分で来てくれればいいのに。
カナトが来るより、そっちの方が数倍良かった。



「お前には、魅力って言うのがないんだよ。昔から。しかも、魅力のみの字もな」



そんなことを言われる筋合いはない。
そう言い返したかったけれど、嗚咽を堪えるのに必死で、言葉が出てこない。
この捻くれた幼馴染が悪態をつけばつくほど、優しかった彼の言葉を思い出して、切ないほどに胸が痛い。
また、涙が溢れた。



「挙句に女子力もないから、女として最低だし、振られるのも当然だよ」



ああ、そうか。
と、心のどこかで納得する。
それじゃあ、彼が嫌いになるのも仕方がない。
もう少し、女らしくすれば良かったかな。と、自嘲めいた笑みがこぼれる。
喧嘩ばかりしていた幼馴染の言葉が自然と受け入れられるなんて、余程弱っているらしい。



「自業自得……」



かすかに、笑う声が聴こえた。
でも、今はそんなことどうでもよかった。
もう一度だけでいいから、彼に会いたい。
そんな私の心を知ってか知らずか、カナトが近づいてくる気配がする。
腕にかかる重圧。



「手間かけさせんな。面倒くせぇ……」



囁くような、声。
ぶっきらぼうなのに、今までにないくらい、優しい声音。
胸が高鳴る。



顔を隠していた布団を強引に引き剥がされ、カナトと目が合う。
彼は少し苛立っているようだった。



「あんな奴と付き合うから、こんな風になるんだよ」



赤く腫れた瞼を見てか、頬に流れる涙を見てか。
そんなことを呟く。
そして、



「最初から、俺のものになっとけば良かったんだ」



艶やかな笑みを浮かべる口元。
その意味に気付くまで、あと数秒。









■後書き

何がしたかったんだろう。
梶さんの声が素敵すぎて、気づいたら書いてました。御免なさい。