二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.158 )
日時: 2012/04/30 11:55
名前: 雲雀 (ID: Rk/dP/2H)

■この小説は「緋色の欠片」の物語を作者が勝手に作りかえたものになります。
未プレイの方及び捏造が苦手な方はお控えください。
珠紀と守護者の関係が本編とは全く別のものになっており、
珠紀は玉依姫ではなくなっています。
実際の作品のイメージを崩されたくない方も同様にお控えください。






【記憶の果て/祐一×珠紀】



初めて彼のことを見たのは、小学生の時だった。
透き通るような白い髪、全てを見透かしているような金色の瞳。
どこか作りものめいたような気さえするほど、彼はきれいだった。
けれど、教室で彼に話しかける者は少なく、彼はいつも一人だった。
みんな遠巻きに見つめては、こそこそと何かを話している。
恐らく、彼が守護五家のひとつである狐邑家の人間であったことがそうさせたのだろう。



寂しくないのかな。
話しかけてみようか。



そう考えてはみたものの、彼がひとつ年上ということもあって勇気が出ず、結局話しかけじまいだった。
でもその日の放課後、たまたま彼が私より少し先を歩いているのを見つけた。



「あ……」



彼のところへ走りよろうとした刹那。
横から黒髪の少年が走ってきて、彼の肩に手をまわした。



「祐一!」



その名前を呼ばれると、彼は少し嬉しそうに微笑んでいた。
黒髪の少年の横から、赤髪の少年や紫色の髪の少年も出てきて、彼の周りには人だかりができた。
なんだ、と思う。
私が話しかけなくても、彼のことを思ってくれる人はたくさんいるではないか、と。
胸に鈍い痛みを感じつつ、でもどこかで、彼が一人でなくてよかったと、感じていた。



それから数日後の帰り道、私はまた彼を見つけた。
でも今回は歩いていたわけではなく、木にもたれて眠っているところだった。
少し躊躇って、彼の肩を揺らす。



「祐一くん」



そう呼ぶと、彼の瞼が静かに開いた。
全てを見透かすような金色の瞳と目が合う。
思わず、息を呑んだ。
一瞬、時間が止まったような錯覚を覚える。



そして彼は、とても怯えたような眸で、私を見た。



「っ……」



私の全てを否定するような眸だった。
心には鉛か何かで引っ掻きまわされたような釈然としない痛みがあった。
でも、このままにしておいたら、彼が風邪をひいてしまう。
そう思い、無理に笑った。



「こんなところにいたら、風邪ひくよ」



手を差しのべる。
彼は呆然としているようだった。
もう一度だけ、笑って、



「一緒に帰ろう」



そう、言葉を紡いだ。






それから数年経った現在も、私は祐一先輩と同じ高校に通っている。
相変わらず、教室で彼に話しかける者は少ないようだが、彼が昼食などにつかっている屋上からは楽しそうな話し声が聴こえるから、きっと大丈夫なのだろう。



それからまた数ヶ月して、帰り道を一人で歩いていると、彼が一人で少し前を歩いているのを見つけた。
呼び起こされる、鈍い胸の痛み。
秋の夕暮れのせいもあってか、どこか切なくも感じた。



「祐一先輩!」



後ろから聴こえる、女の子の声。
その声にハッとしたものの、まるで何かに射抜かれたように、振り向くことが出来なかった。
彼が振り返り、その歩を止める。
女の子の声の後に、いつかに聴いたことのある「祐一!」という男の子の声も聴こえた。
あの日のように、また彼の周りには人だかりができる。
まるで、私ひとりがあの時間に取り残されているような錯覚さえ覚えるた。



きっとあの子が、玉依姫なのだろう。
彼がこれから先、ずっと守っていく人。
いつかに、母が教えてくれた。
玉依姫と守護者のことを。
彼女がいなければ、世界は終わる。
彼女はそれほどに、大切な人。
私なんかよりも、ずっと重い運命を背負った人。
眸を、閉じる。



離れていく笑い声、遠すぎる思い出。
何もかもが、儚い幻のようで、
我知らず、涙が頬を伝った。



そして、本当に、本当に、一瞬。
彼が、振り向いたような気がした。









■後書き

思いつきで書いたら文章が成り立っていませんでした。
少しずつ、書き直していきたいと思います。