二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.186 )
- 日時: 2012/09/16 21:32
- 名前: 雲雀 (ID: QGuPLo0Y)
【好きを憧れで捩じ伏せる。/ベルフェゴール&フラン】
『好き』だと、軽すぎて伝わらない。
『愛してる』だと、重すぎる。
この思いを伝える言葉<オト>を、自分は知らない。
だって、恋をするにはあまりにも幼すぎたから。
その言葉を口にするには、あまりにも残酷すぎたから。
重ねる思いと、重ねる言葉は、あまりにも無邪気すぎて、
終わりさえ、見えずにいる。
『 』
「あーあー。もう終わりかよ」
頬についた返り血さえ拭わずに、目の前の人物は冷たくそう言い捨てた。
もう動くことはない亡骸を視線だけで辿ってから、改めてその人物を見る。
夜の森に似つかわしくない、金色の髪。
でもどこか、月のようだと思う自分もいた。
空に浮かぶ月とは、遠くかけ離れた、残酷な人間だというのに。
心臓がゆるやかな音を刻む。
こちらの視線に気付いたのか、その人物もこちらを振り向く。
「なんだよ、カエル」
不快感を隠そうともしない声に、緩く目を細めた。
少し霞む視界。
その世界の中で悟る。
先程、自分が目の前にいるこの残酷な人物と、空に浮かぶ月を重ねた理由を、今。
惹かれたのだ。
目の前にいるこの人物に、その圧倒的残虐性に、自分は。
赤みを帯びた金色の髪が、血臭をまといながら近づいてくる。
誘われるように、上を向く。
「さっきから、なんなんだよ」
苛立ちを含んだ声。
何も言わない自分に腹を立てたのか。
そう思うと、息だけで笑いそうになった。
でも、自分の表情をつくる神経は余程死んでいるのか、口角が上がることはなかった。
「おい!」
彼の声を心地いいと思った。
表情こそ変わらないものの、心のどこかで、その声に安らぎを覚えた。
何故?惹かれたと一言で言っても、決して恋をしたという訳ではないのに。
「なに黙ってんだよカエル!」
頭部に不快感を覚える。
またいつものように、ナイフでも刺されたのだろう。
でも、今はそれどころじゃなかった。
疑問の答えが見つからない。
考えても、考えても、思考は同じことを繰り返すばかり。
けれど、ひとつだけ言えるなら。
彼を月と重ねたあの瞬間よりも、鼓動は一段と速く脈を打つ。
頭上から激しい怒声が響いた。
これ以上黙していたら命が危ないし、それに今はこれ以上の答えが見つかりそうにもない。
伝えることはしないけど、せめていつも通りの言葉をあなたに送る。
「なんですかー?堕王子」
(*きを*れで捩じ伏せる。)
それは愛なのか、恋なのか。
■後書き
書いていて、自分でも意味が分からなかった。
これの意味が分かった人は神様です。