二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.199 )
日時: 2012/12/16 18:24
名前: 雲雀 (ID: QGuPLo0Y)
参照: http://www.youtube.com/watch?v=41F23e7TBpI

【あの日、いつか。/シンタロー&コノハ】






 ガシャンという音と共に、金属で出来た屋上のフェンスが揺れた。
そしてフェンスを揺らした張本人である黒髪の少年は、下。
つまり、屋上から数十メートルも離れた地上を、食い入るように見つめていた。

 彼は、何もしようとはしない。
ただそれは、恐怖によるものではなく、諦めに近い感情によって、ということだけは知っていた。
そして、何も言わずに屋上から立ち去っていく。

 この場面は、もう何回も見ていた。
それでも、分からないことがひとつだけある。
彼は何故、ここへ来るのか。
 その答えを、知りたいと思った。
だから今日も、この夢は繰り返される。



——そして彼は、初めて『今まで』と違う行動をした。



「なんで……」



 そう呟いた彼の目には、涙が浮かんでいた。
本人はそれに気づいていないのか、涙を拭おうともせず、ただただ下にある地上を見つめている。



「なん、で……」



 彼の声に、嗚咽が混ざるのを感じた。
その背中はいつもよりも小さく、そして弱いもののように見えた。
彼の額がネットにぶつかって、カシャンという微かな音をたてる。



そして、






「また会いたい……」






そう、呟いた。






 その言葉でわかったのは、彼の願いはもう叶わないということだけ。
それでも彼は、ここへ来るのだろう。
願いが涙となって、消えていくその日まで。






「僕が君の願いを叶えられたら良かったのにね」



 彼の頭を撫でる。
でも、彼は自分の存在には気づかないだろう。
だって自分は、ここに存在していないのだから。






突きつけられたふたつの事実に、心を持たない少年は初めて、悲しみに似た感情を覚えた。









■後書き

 死ぬべきは俺で、君じゃなかったはずなのに。

 【これは彼の昔のお話】人一人は涙を流して、「また会いたい」と呟いた。この歌詞から、今回のお話を書かせていただきました。
 いや、シンタローのことではないと思うのですが、どうしても書きたくて……!
 原作が好きな方、本当に申し訳ありません。