二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.201 )
日時: 2012/11/04 10:37
名前: 雲雀 (ID: QGuPLo0Y)

【守りたい人/ACT4】



<愛してるに耳を塞ぐ。>






 まるで世界の終わりを告げるように、陽光は次々と藍色の空へ溶けていった。
今は山間から漏れる微かな光だけが、この世界を照らしている。
 目の前を歩く彼の背中も、その空の色に溶けていってしまいそうで、悲しさを押し隠しながら、必死で追いかけていた。
風が、通り過ぎていく。



「珠紀」



 不意に、彼が私の名前を呼ぶ声がした。
ずっと追っていた背中が、目の前で止まったのを見て、心のどこかで安心しながら、自分自身も歩を止めた。
その背中から、目を逸らしながら。



「慎司とは……うまくやれているか?」



「え……」



 彼らしくない質問の内容に、少し戸惑った。
なんて答えればいいのだろう。
今更、いったい何を伝えたら……。






——珠紀先輩のこと、ちゃんと信じてますから。






 大切な人の声が、蘇る。



 信じているから、と。
 だからこそ、ちゃんと想いを告げてきてほしい、と。



 それで、あなたの心が救われるなら。



 彼は私の心の中に、他に誰かがいるのを承知で、私を受け入れてくれた。
今日だって、わざわざ別々に帰ることを許してくれた。



 それなら、私もこの想いに決着をつけなければいけない。
 大切な人達を、これ以上悲しませない為にも。






「——……はい。慎司くん、とても優しくて、温かくて……私には、勿体ないくらいです」



 今度は、目の前にいる彼の方を向いて、 



「慎司くんへの想いを手放してまで、手に入れたいものなんてありません」



素直に、自分の心を告げた。 



「……そうか」



 彼の吐息が、悲しげな音を紡ぐ。
でもどこか、満足そうな響きだった。






 永遠とも思えるような時間が、通り過ぎていく。






「祐一先輩」



 もうひとつ。
 あとひとつだけ。



「先輩は」



 あなたに伝え忘れたことがある。



「私のことを……」



 これが、本当に最後の告白だから。






「一時でも……愛してくれたことはありましたか……?」






 冷たい風が、頬を撫でた。
世界はいつの間にか、漆黒に包まれていたようだ。



 彼がこちらを振り向く。
そして、今まで見たどんな表情よりも優しく、美しく、微笑んだ。






「好きだった」






 頬に、彼の指が触れた。
 その温度を悲しく感じたのは、これが最後だと分かっていたからだろうか。



「玉依姫としてでも、守護者としてでもなく、一人の女性として、お前を」






 愛していた。









 身体を包む彼の温度が、この世の何よりも優しく感じられて。
 気づけば、私の目からは、涙がこぼれていた。



「私も、」



誰よりも、あなたのことが、



「好きでした」









(愛してるに、)
(「     」)









■後書き

 御免なさい。久々に小説を書いたせいでどうしようもないくらい文章がおかしいです御免なさい少しずつ書き直します。というか、帰ってきたら速攻で書き直します御免なさい。