二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.214 )
日時: 2013/01/06 17:05
名前: 雲雀 (ID: QGuPLo0Y)

【伝えたいことがある。/シンタロー&コノハ】






 8月15日の屋上は、君がいなくなったあの日から、何一つ変わっていなかった。

 憎らしいほどの青い空。
 無機質に広がるコンクリート。
 心を覆い隠すフェンス。

 未だに色あせない、君の笑顔。


「文乃……」


 久しぶりに、その名を口にする。
 どんなに呼んだって、もう届かない、伝えられない。
 この世界には、そんなことがあふれている。そのことを、2年前のあの日、初めて知った。
 

「ごめ、ん……」


 君が泣いていたあの日、なんて声をかけたらいいのか、解らなかった。
 俺なんかが声をかけても、更に傷つけてしまうだけのような気がして、怖くて、何も言えなかった。
 そのとき、ありきたりな言葉でもいいから、何か伝えていれば、君は今でも。
 ずっと、その笑顔を。


 ——同じ、痛みだったはずなのに。


 君が抱えていた痛みは、俺の痛みと。
 ずっとこの世界から消えたくて、でもあの日、君は俺を助けてくれた。
 今までどうでもいいと思っていたものが、君の手にかかると、まるで魔法にでもかかったように、きれいに思えた。
 解りきってしまったくだらない問題でも、君は凄いと言って、笑ってくれて。
 明日終わったって構わなかった日々が、どうしようもないくらい、大切に思えて。

 でもあの日、君はいなくなった。
 君は俺を助けてくれたのに、俺は君を助けることができなかった。
 何度も、何度も、君は自分自身を傷つけて、俺に笑いかけてくれた。
 とても楽しそうに、この世界のことを語って。
 だから、きっと君は、この世界が大好きなんだろうなって、勝手に思ってたんだ。
 俺だけが、救われて——


 俺が、あの日々を壊したんだ。
 ただ、自分が傷つきたくないがために。


 「でも……」


 でも、今度こそ。


「シンタロー」


 後ろから名を呼ばれて、振り向く。
 声の主である白い髪の青年は、それから小さく笑みを浮かべて、


「作戦開始」


 その言葉に、ふっと笑ってから。


「——了解」


 今度こそ、この思いを伝えるために。






(大丈夫、あの日からずっと、)
(君の笑顔を忘れてない。)









■後書き

 そして、君に会えたなら。

 透明アンサーを何度も書こうとしているのですが、難しいですね。
 「ずっと続いていてくれた様な日々は」ここのフレーズは、聞くたびに本当に切ないです。
 きっと、じんさんにしか書けない切なさなんでしょうね。
 小説を読むために、今から涙腺を強くしておかないと←
 透明アンサー大好きです。
 じんさん、これからも頑張ってください。