二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.216 )
日時: 2013/01/21 19:35
名前: 雲雀 (ID: Ma3wYmlW)

◆君が嫌いすぎてわらえる。






「お前は、自分の命と引き換えに世界を救えるとしても、きっとそうしないんだろうな」

 目の前にいる『俺』が、そう言って笑った。
 失望。その笑顔に名前をつけるなら、きっとそれ。
 むかつきはしなかった。
 だって、目の前のこいつは『俺』なのだから。
 なら、この会話はきっと自問自答。
 俺が俺に失望している。たったそれだけのこと。
 寧ろ認めてしまうくらいだ。俺は俺が大嫌いだって。

「俺は、お前が嫌いだ」

 目の前の『俺』が、俺を睨みつけた。
 自分と対峙することがここまで気持ちの悪いことだとは、できれば生涯知りたくなかった。
 でも、仕方ない。
 こうなったのも、全て俺のせいだ。

「俺もお前が嫌い。俺は俺が嫌いだから」

 無愛想に言葉を並べて、そいつを見返す。
 その言葉にくつくつと笑ってから、『俺』が俺を見る。

「自己嫌悪は自己愛の裏返しだ。愛してるよ」

 俺を好きな俺が嫌い。だからお前が嫌い。
 愛さないで、惨めになるだけだから。
 俺を好きになってくれる人なんて、この世界にはいないんだ。
 俺なら俺を愛してくれる。でも、それすらも嫌なんだ。
 どうしようもないくらい、自分が好きで、嫌いだから。

「……嫌い、大嫌い」

「好きだよ」

 被せるようにそう言って、『俺』が抱きしめてきた。涙が出る。
 もう世界なんて終わってしまえばいい。
 俺だけを残して、いや、違う。
 逆だ。俺だけを消し去って、無かったことにして。
 もうこんな世界、嫌なんだ。
 俺が生きている。その事実が、嫌なんだ。
 身体が離れる。目の前のそいつは静かに笑って、呟いた。

「愛してるよ、またいつか」

「ばいばい、大嫌いな『俺』」

 タイトルも知らない音楽が流れていたイヤホンをとって、世界の五月蝿さにため息をつく。
 そして、目の前にいた知りもしない少女を押しのけた。
 次の瞬間、感じるのは衝撃。
 遠ざかる世界の音。
 お前のことは嫌いだったけど、この世界に生きる俺以外の人間は大好きだったんだ。









■後書き

 そういうところが、好きだった。

 誰でも、自分の好きなところと嫌いなところはあると思います。
 自己嫌悪は自己愛の裏返しだと聞いたので、なるほど。と思いながら、書いていました。
 自分自身とは会いたくないですね。
 出来れば、一生。