二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.217 )
日時: 2013/01/21 19:34
名前: 雲雀 (ID: Ma3wYmlW)

◇君が幸せならそれでいい。



 お別れの日の朝。
 君はまだ、ベッドの中で眠っていた。
 そっと頭を撫でれば、聞こえてくる穏やかな寝息。
 こみ上げてくるのは、どうしようもないくらいの愛しさと、悲しみ。
 自分はもう、この子の傍にいてあげることが出来ない。
 本当は、もっと傍にいたかった。でも、もう駄目なんだ。
 全て、君を守るためだから。

「ごめんね」

 君は明日、この世界をどんなふうに受けとめるんだろう。
 どんな目で、この世界を見るんだろう。
 君の世界が、幸せで満ち溢れていたらいいな。

 こんな僕に、幸せをくれてありがとう。
 最後まで守れなくてごめんね。
 最期まで守らせて。

「ごめ、ん……」

 何故、自分たちなんだ。
 そう思ったことが、一度もなかった訳じゃない。
 両親がいて、帰るところがあって、幸せに生きている人間なんて、いくらでもいる。
 でも君は、僕がいてくれるだけで充分だって、幸せだって、そう言ってくれた。
 君は僕に、生きる意味をくれたんだ。
 だから、たとえ何をしてでも、この子を幸せにしようと思った。

 この子だって、ただの子供なんだから。
 幸せになる権利ぐらい、あるでしょう?
 こんな世界で朽ち果てるのは、自分一人でいい。

「どうしようもないお兄ちゃんで、ごめんね……」

 この選択が、君を傷つけることになるなんて、そんなの初めからわかってた。
 でも、それでも。君にだけは、こんな汚い世界は見てほしくなかった。
 普通の子供のように、幸せに生きてほしかったんだ。


「ありがとう」


 ねぇ、お願い。
 僕のことなんか忘れて、どうか、幸せになって。






(そこに自分がいられたら、なんて、)
(絶対に願わないから。)









■後書き

 ずっと、見守ってるよ。

 どうしようもないくらいの愛情って、こういうことかな。そう思って、書きました。
 幸せなものを書きたいのに、書けない。