二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.223 )
- 日時: 2013/02/23 18:19
- 名前: 雲雀 (ID: Ma3wYmlW)
【朝に見る。】
シンタロー/四男、常識人。
コノハ/双子の片割れ、ブラコン。天然。
クロハ/双子の片割れ、ブラコン。常識人。
遥/長男、ブラコン。天然。
「ぐぅっ……!?」
腹にありえない衝撃を受けて、目を覚ました。
反射的に手で触れれば、自分ではない誰かの手。
俺は一瞬で自分のおかれている状況を理解し、出来ればこのような状況になる前に目覚めたかったと心底後悔した。
あまりの痛みに悶絶しながらも、そいつの名前を呼ぶ。
「こ、の……」
俺の腹に拳をめり込ませている本人、コノハは俺の隣でスヤスヤと気持ちよさそうに眠っていた。
俺の安眠を返しやがれこの野郎。
とりあえずコノハの手を腹からどかし、まだ痛む患部をおさえながら時間を確認する。
六時二十分。いつもならまだ寝ていられるが、今日は朝食当番だ。
俺をのぞく他の奴らは、普通の人間ならありえない量の食事をとる。
渋々ベッドから起き上がり、身支度をはじめた。
キッチンに立ち、何人分かわからない大量のホットケーキを作り続けて、何十分経っただろうか。
手が痛い。朝から卵わって牛乳入れてホットケーキミックスぶちまける作業を繰り返すとかなんの苦行だ。
既に皿には食えと言われたら吐き気がしそうなほどの量のホットケーキが盛られている。
あいつらは何故太らないんだ?今度病院にでも行って、是非調べてきていただきたい。そして暫らく帰ってくるな。
「シンタローおはよー」
「うわっ!?」
脳内でこの苦行に対する不満をぶつぶつと呟いていたら、不意に後ろから抱きつかれた。
振り返れば、白い髪と赤い目が目に入る。
「コノハか……急に抱きつくな。フライパンひっくり返すだろうが」
「……ごめん」
コノハは申し訳なさそうに肩を落とした。が、依然として抱擁をといてくれない。
ヘルプミー。助けろ誰か。地味に今朝の傷が痛む。
「おはよー!二人ともー!」
「ぐふぅっ!?」
コノハのそれに加え、更に左からミサイルよろしくと言わんばかりの抱擁が飛んでくる。
もう俺にとっては攻撃でしかないそれを食らわせた本人は満面の笑みで俺とコノハを見てから、
「二人とも今日も仲良しだねー!」
とか言ってくる。
あれか?今日は俺の命日か何かか?
朝から走馬灯を見てばかりのような気がする。
「おはよー遥」
いつもの無表情で、コノハが挨拶を返す。
それに、遥もおはよー。と笑みを返した。
俺も一応……っていやいやいやいや、今はそんな場合じゃない。
一刻も早く、このダブルホールディング状態から抜け出さなければ。
「二人ともとっとと離れ、」
「「えー……」」
「えー……じゃない離れろ!」
というか俺の身体をいたわってくれ。
今までに受けたダメージのせいで、ライフはほぼ0なんだ。
「……お前ら何やってんの?」
とそこへ、新聞を片手にクロハが怪訝そうな顔をして入ってきた。
ありがとう。今日、抱きついてこなかったのはお前だけだよ。
そして、出来ればこいつらをどうにかしてくれるとありがたい。
「あ、クロハおはよー」
「おはよー」
「はよ……いやだからその状況はなんなんだよ」
新聞をテーブルの上におき、キッチンに入ってくる。
そして俺のことを見てから、盛大にため息をついた。
「いい加減離してやれ」
「「えー……」」
「どこの餓鬼だお前ら……後ろ、」
後ろ、と言われてはっとした。
ばっと振り返り、俺は思わず叫ぶ。
「ホットケーキぃぃぃぃいいいいいいっ!」
この長い会話の中、一度もひっくり返されることのなかったホットケーキ。
恐る恐るひっくり返してみれば、案の定、裏面は真っ黒になっていた。
いったいこいつが何をしたというんだ……。俺はそっと手をあわせた。
「はぁ……って、うわ、もう結構時間やばいぞ」
「あ、本当だ。どうする?さぼる?」
「とりあえず一時限目は遅れるって先生に言っとこっか。コノハー、電話とってー」
「ん、」
コノハの手がゆっくりと俺から離れる。
あと一人はどうやって引き剥がそうかと考えていたら、クロハが丸めた新聞紙で遥の頭をぶっ叩いて剥がしてくれた。
「人の頭叩いちゃ駄目だって言ってるでしょクロハ」
「人前で弟に抱きついてる奴に言われたくねーよこのブラコン。とっととあのホットケーキの山どうにかしてこい」
クロハの言葉に、そうだった!と遥は目を輝かせてテーブルに向かう。
コノハは遥に頼るまでもなく電話を済ませたようで、リビングに戻ってきた。
「お腹すいた……」
「食べよ食べよ」
嬉しそうにホットケーキに蜂蜜を塗りたくる兄弟たち。はっきり言って、見てるだけで胸やけがする。
そんな二人の会話を聞きながら、そういえば、とクロハの方を見た。
「サンキュ、クロハ」
「ん……?あぁ……あれくらい、一人でどうにか出来るようになれよ」
ぽんぽんと軽く頭を叩かれたあと、ぎゅう、と抱きしめられた。
さっきの二人よりはいくらか柔らかいそれに、ため息をつく。
「結局お前も抱きつくのかよ」
「俺だけ抱きついちゃいけないなんて法律はない」
「あぁ、そう……」
本当に、朝から疲れた。
(シンタロー?クロハ?早く食べないと冷めるよ?)
(ほら、二人とも早く早く!)
(……って、もう半分食ったのかよ!)
(朝早く起きて作った意味って……)
ベッドに戻って二度寝したい気分である。
■後書き
兄弟にしました。御免なさい。
楽しかったので、気が向いたら続きを書こうと思います。
メカクシ団の皆も出せたらいいな……いや、出せよ。
原作を無視しっぱなしで、本当にすみません。