二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.226 )
日時: 2013/03/28 21:00
名前: 雲雀 (ID: Ma3wYmlW)

【届くことのないさよならを】



「——A弥?」

 熱で意識が朦朧とする中、優しく僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。
 布団から顔を出せば、やっぱりと言うかなんと言うか、心配そうな顔のC太がいた。
 そして、僕の顔を見るや否や、安心したように微笑む。

「よかったぁ……ちゃんと生きてた」

「しー、た……」

 生きてたってどういう事だ、生きてたって。
 これくらいで死んでたら、僕はどれだけ貧弱なんだ。
 そう言おうとしたけど、両親のいないこの状況を気づかないうちに相当不安に思っていたらしく、気づけばC太の名前を呼んでいた。

「お父さんとお母さんは?」

「し、ごと……」

「だよねー……いなかったし……A弥何か食べた?」

 首を横に振れば、じゃあちょっと台所かりるね。とC太は部屋を出て行った。
 その後すぐに急激な眠気に襲われ、僕は意識を手放した。



               *



『助けたかったんでしょう?』

 携帯の向こうから、無機質な声が響く。
 この声を聞くのは、もう何度目だろうか。

『でも、いつも殺してしまうのね』

 頬に生温かい感触が伝ったが、無視した。
 携帯も全てを無視するかのように、淡々と言葉を紡ぐ。

『あなたには、助けられないのね』

 助け、られない。
 変えられない、結末。
 いつも、どうしても、どうやっても、すれ違う。
 後に残るのは、あいつからの思いだけ。

『死人には、言葉なんて紡げないわ』

 知ってる、そんなこと、もう、どうしようもないくらいに。
 でも、願い続けていたい。
 二人がまた、隣で笑い合える未来を。

『何度も、何度も……繰り返すのね』

 どうか、どうか。
 そう、何度も、何度も。



「——まるで、心中みたいだな」



 通話を切って、かけなおす。
 生憎、相手は出なかった。
 ぽつり、一言だけ呟いて、少年は青い空へと飛び降りた。



               *



「A弥?」

 お粥をつくり終えて部屋に戻れば、ベッドからは規則正しい寝息が聞こえた。
 近づいてA弥の顔をのぞきこめば、安心しきった顔で眠っている。
 
「もう、大丈夫だよ……」

 大丈夫。そう、繰り返す。



「A弥は、俺が守るから」










「——C太……?」

 いつも、僕の声は君に届かない。
 あの時も、ありがとうって、そう言いたかったのに。

 結局、ずっと何も伝えられないまま。
 いつの間にか、僕も君も、高校生になってしまった。

 今日も君は、僕の隣にいるんだろうか。
 明日も君は、僕の隣にいるんだろうか。



「……雨、振りそうだな」



 青い空が、雲に覆われていく。






(101回目の心中、)
(届いた言の葉は、誰のもの?)









■後書き

 この声は、君のもとまで届きますか。

 何がしたかったんだ。すみません、分かりません。
 【0と1のラブレター】の続きです。
 小説と漫画、両方とも買えました。CDは未だに買えてません。
 とりあえず、説明します。「平凡な日常」のところ、何度も繰り返していたので、よし本編も繰り返そうと勝手な事を考えました。
 はい、御免なさい。そして、何度も繰り返すうちにC太が気づいて、A弥が生きるためにはどうしたらいいだろうって考えて、今回の事のようになりました。
 C太ファンの皆さん、というか終焉ノ栞ファンの皆さん、本当に御免なさい。原作無視して御免なさい。