二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.27 )
日時: 2012/12/16 18:19
名前: 雲雀 (ID: QGuPLo0Y)

【その声をどうか。/圭&遥】






 気味が悪い。

 この髪の色のせいで、そう思われることは少なくなかった。
 いや、実際に声に出して言う人間なんていないから、寧ろ自分のこの能力を恨むべきなのか、否か。

 気味悪い。何あれ。気持ち悪い。地毛?派手。薄気味悪い。日本人?趣味悪い。見ないほうがいい。

 うざったい。
 だから何?あんたらに僕のことうだうだ言われる筋合いなんてないんだけど。
 というか、他人にとやかく言う前に、自分の顔でも鏡で見てきたら?酷い顔してるよ?

 
 あぁ、もう。
 最悪な日だ。

 
「あ」


 うざったい雑音の中に、すっと入ってきたノイズの混ざらない声。
 誰かなんて、すぐに分かった。
 思わず、振り向く。


「圭くん……?」


 僕の顔を見た途端、彼は顔を顰めた。
 失礼だな。なんて思いながら、彼に近づくと、


「なんか、あった?」


「え……?」


 不意に、そんなことを言われた。
 何か?何かって、気味悪がられるなんていつものことだけど。

 でも、なら、彼は?
 彼は、僕のことを、どう思うんだろう。

 少しだけ、気になって。
 気づけば、口を開いていた。


「ねぇ」


「ん……?」


「僕の髪の色って、気持ち悪い?」


「は?」


 彼は、意味が分からないという顔をしてした。
 心でも、そう言っていた。
 でも、知りたい。
 彼が、僕の髪を、僕を、どう思うのか。


「どう思う……?」

 
 俯きながらそう尋ねると、彼の心の声が、とても悲しげなものに変わった。
 不思議に思って彼の表情を見ると、彼の表情もまた、とても悲しげなものになっていた。

 なんで?どうして?
 君が悲しむようなことなんて、僕の言葉の中には何一つなかったはず。
 なのに、どうして。


「好きだよ」


 ノイズのない声で、彼はそう答えた。


「白くて、綺麗で、猫みたいで」


 だから、そんな泣きそうな顔をしないで。


 そんな彼の心の声に、初めて自分がどんな表情をしているのか気づいた。
 悲しげに揺れる黒い瞳の奥で、これまた悲痛に歪んだ赤い目。

 まぎれもない、僕の目。


「……そんなこと言うの、君だけだろうね」


 緩く微笑めば、馬鹿。と、これまた彼らしい言葉が返ってきた。
 ノイズの混ざらないその声と、たとえどんなものであっても逸らそうとしないその目は、この世のどんなものよりも、きれいなもののように思えた。









(どうか、聞かせて、)
(たとえどんな言葉でも、受け止めてみせるから。)









■後書き

 あなたの声なら。

 キューティクル探偵因幡、大好きです。
 あの二人は、少しずつ、仲良くなってもらいたいです。