二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.3 )
日時: 2012/09/17 16:45
名前: 雲雀 (ID: QGuPLo0Y)
参照: http://nicosound.anyap.info/sound/sm8389257

【五月雨恋歌/初音ミク】






雨が降る。
まるで、頬につたう涙を隠すように。






        ザァ


  



  ァァ



 
                     ァァ





        ァァ 




 




             ァァ……






 雨の音がする。
微かに鼓膜を揺らすその音に、緩く目を細めた。
重なって聴こえる、誰かの声。
聴き覚えのある、懐かしい声音。
心地いいとさえ、思った。
なのに、何故。


涙がこぼれた。
躰が震える。
耳を塞いで、躰を押さえつける。
未だ聞こえる、雨の音。
その音によって、導かれるように蘇る記憶。






(その断片が、私を突き刺す。)






「愛してる、」



 掌に感じたぬくもりに、たとえようのないほど安堵した。
囁かれた言葉に、残酷なほどの安らぎを覚えた。
もう、何年前のことかさえも思い出せない。



突然、彼女はいなくなった。
息を呑むほど、美しい笑顔を残して、
私の前から、いなくなった。



人の命なんて、そんなものでしょう?



恋焦がれた存在は、あまりにも儚く、尊く。
いずれ終わるとは知っていても、あまりにも早く。
散らばる想いをかき集めて、必死に虚像をたぐり寄せて、
それでも、全ては雨によってかき消されていく。



愛した声は、私にはもう届かない。



これで良かったのかもしれない。
どんなに傍にいても、どんなに深く愛しても、
叶うことのない恋だったのだから。






 雨が降る。
空には月も星も見えない。
あなたを思い出した夜。
無表情のまま、涙がこぼれた。
ゆらぐ、想いの中。
指先を包んだ、記憶に残るぬくもり。



「あ……、」



微笑んだ、瞳。
重ねる、想い。
そしてまたひとつ、過ちは繰り返される。






 閉じていた目を開けば、見慣れた天井。
胸に去来する、喪失感。
手を伸ばせば、微かに残った誰か<アナタ>のぬくもり。
声<オト>もなく、嗚咽が漏れる。
愛しさが心を突き刺して、呼吸さえ出来ない。
私はまた、ゆらぐ虚像<アナタ>を想った。



 雨が降る。
長い髪を、雨が冷たく濡らしてゆく。
遠ざかる記憶は、胸を締め付けて、
散らばる想いは、必死に貴女を求める。






雨に打たれ、消せぬ思いは、
私を濡らしてゆく、恋時雨。









(それは、一夜かぎりの幻。)









■後書き

書き直しました。
どちらにしても、酷い文章で申し訳ありません。