二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【二次創【二次創作】泡沫【短編集】作】泡沫【短編集】 ( No.39 )
日時: 2011/09/19 21:41
名前: 雲雀 (ID: VEcYwvKo)

【あなたしか見えない/怜×沙弥】



——————————先輩は誰に対しても優しい。

そんなことは分かっていた。
でも、あんな思いつめた顔をされたら、こっちを振り向いてほしいと思ってしまう。
他の人のことを考えないで、俺だけを見ていてほしいと願ってしまう。

ねぇ先輩、今自分がどんな表情であの人の名前を呼んでるか、分かってます?

心でどんなに言ったって、先輩に届かないことくらい分かってる。
届かないくらいが、丁度いいのかもしれない。

心の自由がきかなくなって、どうしようもなく胸が痛くなって、先輩の頬を抓った。
それなりに痛いのか、表情が不機嫌そうに歪む。

「先輩のブサイクな顔がものすごーく見たくなったんです」

なんて適当なことを言って、表面上の笑顔を張り付ける。
笑って誤魔化していないと、心を見透かされそうで怖かった。

誰かのことを考えている時の先輩の顔は好きだけど、その心に俺がいないんじゃ意味がない。
俺を見てほしい、他の誰かじゃなく、俺だけを見ていてほしい。

表には出さないけど、俺かなり子供なんですよ?
いつだって先輩のこと、独占していたいんです。
あなたの口から俺以外の名前なんて聞きたくない。
本当にそれくらい、俺は————————————————————

そこまで考えて、思考を止める。
こんな考え、先輩に知られたら恥ずかしさで死ねるかもしれない。

これはただの“ やきもち ”
先輩もなんとなく、感じとったらしい。
本当、この人にはペースを乱される。
そっと、先輩の頬から手を離す。

「狐邑くん……?」

黙り込んだ俺を、先輩が不思議そうに下から覗いてくる。
先輩、そんな可愛い顔で俺のこと見ないでください。
そんな可愛い声で、俺の名前呼ばないでください。

その瞳で俺以外の人を映すこともあるのかと思うと切なくなるし、それに——————————



(俺の理性が、)
(崩壊寸前なんですよね)



子供っぽいけど、独占していたい。
 そんな気持ちを、そんな願いを、
持ち前のポーカーフェイスでなんとか隠すけど、
 やっぱり先輩のことが大好きで、
いっそ言えてしまえば楽なんだろうけど、 
 先輩が大切そうにあの人の名前を呼ぶから、
胸がどうしようもなく痛くなって、
 心が言うことを聞かなくなって、
意地悪を言う。
 ねぇ、先輩、知ってますよね?
俺、誰かに縛られるの、大嫌いなんです。
 でも、


          “ 独占欲 ”


今、この感情で、
先輩のこと、縛っちゃいそうです。



(なんて、)
(絶対に言わないけど)









■後書き

沙弥にやきもちを焼く怜が可愛かったので、このようなことに。
「ヒイロノカケラ」のFDから、台詞をお借りしました。