二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.45 )
日時: 2011/10/11 22:33
名前: 雲雀 (ID: VEcYwvKo)
参照: http://www.youtube.com/watch?v=e0OdlM0ncwA

【からくりピエロ/初音ミク】



——————————これが悲しい、僕の末路だ。



君との待ち合わせ時間は、二時間前に過ぎた。
此処で独り、君を待ち続ける僕。
それが君の答えでしょ?

街ゆく人々、流れる雲、皆僕のことを嘲笑ってた。
嗚呼、そんなにおかしい?そんなに惨め?

諦める。それは簡単で、とても困難で、
認めることで前に進めるのに、僕の心はまだ認めてくれない。
君の答えが信じられなくて、信じたくなくて、
いつの間に君にこんなに溺れたんだろう?


      「君のなかできっと僕は道化師なんでしょ?」


楽しいのに泣いて、
 悲しいのに笑って、
嬉しいけど顔を歪めて、
 苦しいけど仮面を被って、
喜びのなかに切なさがあって、
 道化師はそれを全て隠す。
心を隠す仮面が消えてしまったら、
 涙が隠せない。
“ 僕 ”を隠せない。


回って、回って、回り疲れた。
どう足掻いても、君に辿り着けない。
もう息が切れたの。

そう、これが悲しい僕の末路だ。
君に辿り着けないままで。


      <道化師は王子様と結ばれない、僕はお姫様じゃない>


王子様が、道化師の手をとることはない。
(なら、奪った心を返して、)


僕をのせて地球は回る。
何も知らない顔をして、日常を回る。

ねぇ、君の上でこんな想いが交錯しているのを、君は知ってる?
空に問いかけても、返事はない。

一秒だけ呼吸を止めて、何も言えず立ちすくむ僕。
このまま息が止まってしまったら、僕は動かなくなるのかな。
単純なゲーム、壇上の上で踊らされてるみたいだ。

出会ったこと。それは偶然で、そして運命で、
知らない方がいいと知っていたのに、愚かな道化師は手を伸ばした。
触れてしまったの、君の温もりに。
仮面越しでしか笑えない僕は、その笑顔で、その仕草で、心が壊れてしまう。

回って、回って、回り疲れた。
君の面影さえ、どこにも見えない。
今度こそ、息が止まるの。

変わって、変わって、変わってゆくのが。
怖い、怖いだけなの。
僕は変われないから、いつも仮面で自分を隠す。
“ 心 ”を隠して、胸の痛みに気付かない振りをして、
もうやめた、ここで君を待つのは。
僕が壊れてしまうだけだ。

(変わっていくことが怖い、)
 (いつか君の心から、僕が消えてしまうことが、)
(道化師はいつだって笑ってるの、)
 (その仮面の裏は、どんな表情をしているのだろう)
(もうやめた、君に焦がれることは、)
 (僕の“ 心 ”が壊れていくだけだ)


——————————存在の消失。


回って、回って、回り疲れた。
(踊って、踊って、踊り疲れた)
上手く息が出来ない、そのまま止まるの。
(足掻き続けた意味なんてなくて、そのまま消えるの)

そう、僕は君が望むピエロだ。
(君が望むお姫様にはなれないなら、せめて、)



          「君が思うままに、操ってよ」



道化師は初めて、仮面から涙を流した。
 ねぇ、君にとって、僕という存在には意味があった?
もう歯車が動かない、お別れかな。
 君という糸が切れた時、僕はただの人形になる。
壇上で踊らされるだけの人形、使い手は君だけ。
 嗚呼、もう疲れた。僕はもう、どのくらい踊った?
嗚呼、もう疲れた。君を待ち続けるのは。
 止めたら終わり、ゲームオーバー。
単純なゲーム、もう終わりにしてしまおうか?
 さよならの言葉もなしに、消えた君。
さよならの言葉もなしに、動かなくなる僕。



(単純なゲーム、呼吸を止めたら終わり、)
(壊れた人形に、さよならの言葉は届かない)



【からくりピエロ】


劇場の幕が閉じた。
これでおしまい、それだけの話。









■後書き

大切な人に自分の存在を望んでもらえないのなら、
いっそのこと操ってほしいと思うのかもしれませんね。