二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.62 )
日時: 2011/10/31 23:28
名前: 雲雀 (ID: 7aD9kMEJ)
参照: ■2011年 10月31日 ハロウィン企画

【Trick and Treat/鏡音リン&鏡音レン】



      「 さぁ、楽しいパーティーの始まりだ! 」



深い深い霧の中、妖艶に響く声。
道に迷った少女は、甘い誘惑に惹かれ、毒に手を伸ばす。

「おいで、おいで、」

もっと森の奥深くまで!

「早く、早く、」

急ぎ足で出来るだけ近くに!

「おいで、おいで、」



      “ さぁ、愉しい遊戯を始めよう! ”



少女の瞳には、毒なんて映らない
 甘い甘いお菓子と、楽しいパーティー
ただ、それだけ、少女の瞳には、ただ、それだけが映る
 甘い甘いお菓子の裏に隠された、苦い苦い罠
楽しいパーティーの光に反射した、血に染まる代償
 だってほら、楽しい時間が早く終わるのなら、
辛い時間だって、その時間と一緒でしょ?
 分からない?なら感じればいい
ほら、この手をとって!



シナモンスティックは魔法のステッキ。
ほら、ひとふりするだけでシロップが増える。
ふふ、幸せそうな顔。
甘いものが好きなのね、じゃあ苦いものはどうなのかしら?

苦ささえ忘れて、甘い夢の中。
天蓋に護られて、眠りに堕ちる。



(甘い夢に騙されて、守られてるなんて錯覚して、)
(深い眠りに堕ちるなんて馬鹿みたい、夜はこれからなのに!)



幻想の催眠に溺れたままでいい。
だってほら、目隠しを外しちゃ面白くないでしょ?
甘い夢の中なら、手の甲に刺さったナイフも、飴に塗られた毒も、何もかも甘いお菓子なんだから!



足元にご注意、その手は僕が引くから。
ほら、ちゃんと踊りなさい?
その可愛い素足に棘が突き刺さるよ?



      “ その身を今すぐに委ねなさい、さぁ! ”



いつからか疑念の刃が見え隠れする。
私が今いるのはどこ?
甘い甘い夢の中?それとも苦い苦い現実?
愛されているのは誰?私?あなた?それとも君?



愛という免罪符などは存在しないと、
 (罪に溺れた愛が許される日は来ないと、)
愛に触れた指先に突き刺さる硝子の破片、
 (毒が塗られたナイフじゃないなら、)
いったいこの世の誰が、
 (私に愛を教えたあなた以外に、)
罪を消し去ってくれると言うの?
 (私の息の音を止めると言うの?)



目隠しの隙間から覗き見たランタンが、
映し出した影に思わず、身の毛がよだった。



      「 ああ、ここにも甘い夢はないのね 」



少女の瞳に映る影。
失望と恐怖に染まる唇。



おやおや悪い子、もうお目覚めですか?
(折角あなたが望んだ甘い夢だったのに、)
目隠しが解けたなら、盲目にしようか?
(だってほら、残酷で滑稽なこの世界を見たくないでしょ?)



      「ほらほら笑いなさい、可愛いお顔で」



さっき見えた影はどこに行ったの?
毛皮をまた被って、芝居に戻る。
道化師って大変だね?それともご主人様の人形?



      「……ねぇ、ちょうだい?」



どうしたの?そんな目で、身体を震わせて、
 あたたかいミルクでもてなしてほしいの?
さぁ中にお入り、ここはとても温かい。
 見返りはポケットの中身でいいから。
甘いお菓子?いえいえ、そんな。
 僕達はいくらでも甘いものが出せるから。
ほら、Trick or Treat!
 昔あなたが、僕達から奪っていったものでしょう?
今度はただ、あなたに返してもらうだけよ?



ちょうだい、早く早く。
ねぇほら、今すぐに。

二者択一の原則をかなぐり捨て、
だって選ぶ権利は子供のものでしょ?迷ってる暇なんかないわ。
まやかしでもてなして、甘い蜜を吸って、
毒ってね、甘くて苦いのよ?大人はすぐにそのことを忘れちゃうから。



      「ちょうだい、よこせ、ほら、今すぐに」
      (ちょうだい、ほら、今すぐに、よこせ)



          “ ちょうだい ”






(甘い夢の先には、後悔なんてない、)
(ただ、悲しい物語の最後が待っているだけ)



          「 Trick or Treat! 」
          (終焉の世界へようこそ!)








■後書き

ハロウィン企画最後の小説です。
今非常に眠いので、文章がかなり酷いと思われます。