二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.69 )
- 日時: 2011/12/07 21:00
- 名前: 雲雀 (ID: 7aD9kMEJ)
【夢物語—ユメモノガタリ—】
空間を隔てて存在する世界のような「家族」というものを見たことがなかった。
つまり、ドラマの世界のような「家族」というものを、見たことがなかった。
強い信頼関係、団結力。
あんなものが本当に一般家庭にあるのだろうか。
それが幼い頃からの疑問であった。
私の生まれついた家庭。
それはとても冷え切ったもので、「温かい家庭」なんていうものとは無縁の世界だった。
成績の良い私、その私を盲目的に愛する父、ヒステリック気味の母、私を邪魔扱いする兄。
兄は私のことをとても嫌っていた。
マザコンとでも言うのだろうか、兄は母にべったりで、母と一緒にいる時に私が来ようものなら、「どっか行け」と冷え切った声で言われる。
たまに兄はシスコン(つまり私を盲目的に愛している)と言われるが、全く違う。
大嫌いなのだ、私のことが、私の存在全てが。
だからどうしても兄と二人で家にいなくてはならない時は、別々の部屋で、物音をたてないように過ごした。
別に私は兄のことが嫌いではなかった。
失望、はしていたけれど。
愛してくれないから「敵」という考えはなかったが、少なくとも「身内」と呼べる要素は血の繋がり以外何もなかったので、「家族」とも認識していなかった。
でもいったいなんなのか?
私を邪魔扱いするマザコンの男。
しかも最近では借金という人間世界の腐った部分にまで手を出しかけている。
付け加えるならば、筋金入りの「馬鹿」なのだろう。
決して頭が悪いわけではない。
でも「馬鹿」なのだ。
母は昔からヒステリック気味だった。
幼少期の子供への暴力の量が半端なかった。
ある時は頬を叩き、ある時は頭を殴り、ある時は物を投げつける。
「躾」の一環だと、本人は言っている。
実に愛情が欠落している躾だ。
はっきり言ってしまえば、この時既に心の大半は奪われていた。
空洞ができたとでも言うのだろうか。
苦しくはないのに、酷く胸中がドロドロしている。
母自身も相当いかれているのだろうが、こんな母を盲目的に愛している兄も相当いかれているのだろう。
母が家出をする度に、家には平穏が訪れた。
しかし少しするとまた戻ってくる。
その繰り返し、何がしたいんですか?
出ていくなら兄も連れて行ったらどうです?
「どうせ行く場所なんてないのだから」
行く場所=逃げ場の定義。
そんな母と結婚した父。
この人はとても頭が良い。
器量も良く、温和な性格。
ただ、どうしようもなく人間として冷たいだけで。
幼い頃、何度「もう離婚するから」とその口から聞いたことだろう。
翌日にはまた同じ日々が繰り返される。
何がしたいんですか?
返却された私のテストを見せればそれはもう大喜びで、「俺に似た」と喜んでいる。
決して私自身をうつそうとはしない瞳。
はぁ、出来れば似たくないものですね。
後半の人生なんて特に。
信頼関係、団結力。
そんなものがズタボロどころか存在さえしないうちの家庭。
こんなに愛おしくて大嫌いな家族よりも大嫌いな人、自分自身。
現実が大嫌いで、いつも画面の向こう側の世界へ逃げる。
そこなら、たとえ私がどんな人間でも愛してくれるから。
愛されているのは私じゃない、分かってる。
でもそんな偽りに溺れたいと思うほど、私の精神は異常なのかもしれない。
今日も甘い言葉を囁かれ、少しずつ狂っていく精神。
愛を求めることを愚かだと悟ったその日から、
少しずつ死んでいく降り積もった灰のような世界に、
救いという名の鎖を縛りつけて、真実という名の毒を盛って、
ただただ、愛を囁く声だけを求め続けた。
キット一番狂ッテイルノハ私。
さよなら。
その一言に、あなたはどんな意味を込めますか?
(求めても、)
(零れ落ちていくだけで)
「あんたなんか産まなきゃよかった」
胸を貫く後悔。
心に別れを告げられるなら、どうかこの言葉に悲しむことがないように。
<望んだ時点で、私は馬鹿だったんだよ>
■後書き
衝動的に書きました。
深い意味は恐らくないです。