二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.7 )
日時: 2012/09/17 16:04
名前: 雲雀 (ID: QGuPLo0Y)
参照: http://www.youtube.com/watch?v=c5vajBtS2ss

【暗い森のサーカス/初音ミク&鏡音リン&鏡音レン】



      「さぁ、お立会い、お立会い!」


今宵、お目にかけますのは
 浮世の因果を背負わされ
漫ろに這い出る忌み児に祟り児
 揺らぐ手足も持たずに産まれ
泣き声震わす舌すら抜かれ
 脳天撫でる暗雲を
母乳と慕って浮かべる笑みの


      おお、そのおぞましさ!


「見たい奴だけ寄っといで」

その言葉に、愚かな少女は騙される。

「おいで、おいで」

甘い誘惑に、導かれるまま。


森の奥深く、静かに佇む異形のサーカス。
座長は狂気を宿した大きな目に、人間をはるかに越している高い背。


(「人間」、だよ?)


くすり、と笑う。

キャストはみんな愉快、容姿は変だけれど、とってもたのしいんだ!
暗い森のサーカス!


(醜さ故に親に捨てられ、嘆く声帯はとうに裂かれ、)
(ほら、笑わなきゃ、やってられないでしょ?)


二つあたま「    」
本当は可愛らしい双子の姉弟。
繋がりあった体、“ ずっと一緒だね ”なんて、
つぎはぎの体、世間からは忌み嫌われ、「    」として、観客は笑う。

異形の歌姫、人を惑わす甘美な歌声。
その美貌は誰もを魅了し、虜にする。
愚かにも手を差し出した男は、“ それ ”を見た瞬間、悲鳴をあげる。
人間を失くした素足、それだけのこと、さよなら。

冷たいものを食らう、青いけもの。
拘束された手足、自由を奪われ、瞳に光はなく、虚ろに開いている。
目の前に出される、温もりを失った、以前“ 人間 ”だったもの。
“ ああ、 ”けものは笑う、部屋に響くのは、骨を砕く音。顔に飛び散るのは、何よりも鮮やかで、何よりも残酷な真紅の鮮血。


望まれて生まれてきた訳じゃない、この身体。

      “  化け物……!  ”

同情にも似た、蔑みの視線。
なんでそんな目で見ているの、顔が腐ってく。

「苦しいよ、苦しくて仕方がない」

彼女は涙を流しながらそう言う。
でもこのサーカスは続くんだ。


          「 えいえんに! 」


楽しいよ、楽しいよ、このサーカスは楽しい。
(どこが?)
腐った実、熔ける目に、爛れた肌が映るの。
(人間にはなれない、この体)


死にたいよ、死にたいよ。
こんな体も、声も、温度も、心もいらないから。

「ここから出してください」

放り込まれた檻の中、自由を奪われた手足は鎖に繋がれ。
生きる理由はとうに失くした。

「それは無理なこと」

欲望を宿した声で、誰かがそう言っていた気がする。
ずっとここに、繋がれたまま。
死ぬことも、生きることも許されず、ただ心だけが死んでいく。


歪んだ躯にゃ曲がって伸びる
 行灯照りの通りを這えば
道行く誰もがその名をまさぐる
 この子にゃひとりで蹲る
影の高みはあっただろうが
 腰を並べて語らう友は
後にも先にも一人もおらず
 さぁ、お立会い、お立会い!
見たい奴だけ寄っといで
 見たい奴だけ寄っといで


      (暗い森へ、寄っといで)


ねぇ、見に行こう?
 え、楽しいの?
うん、とっても楽しいよ!
 醜い体、それを見て笑う観客。
狂気、その言葉が当てはまるのは、寧ろ客の方。
 ああ、ほら、
酷く歪んだ顔をして、
 ねぇ、あれ見て!
変な容姿!
 ねぇ、知ってる?
こんな体、


      “  誰も望んで生まれた訳じゃないんだよ?  ”


      「 楽しいよ 」


掠れた笑い声、枯れた涙、消えた心。
一度見たら、もう引き返せない、暗い森のサーカス、本日も開幕。



(自由なんて、)
(そう言った声が、嗚咽混じりに聞こえたのは気のせい)









■後書き

残念すぎる文章。
この唄が好きな方、本当に申し訳ありません。