二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.72 )
日時: 2011/12/22 22:22
名前: 雲雀 (ID: 7aD9kMEJ)

【瞬間センチメンタル】



冬になると、季節は日々加速しながら過ぎていくのではと思ってしまうくらい、あっという間に過ぎていった。
吐いた息は白く濁り、幻のように宙に溶けて消える訳でもなく、灰色の空をさまよった。
冬の空気に晒されて冷たくなった掌は、最早温度を感じとることはできなかった。
多分、あなたを好きになって三度目の冬。



                ◇



学校の大掃除、と言っても、教室の清掃はやることが少ない。
蛍光灯を変える訳でもないし、ドアを外して磨くという訳でもないからだ。
そのうち生徒は暇を持て余し、廊下などで立ち話を始める。
かく言う私もその一人で、別に誰かと話す訳ではないけれど、廊下で窓の外を見ながらぼんやりとしていた。
先程まで水に触れていたせいか、手が冷たい。

「はー……」

息を吹きかけてはみるが、ほとんど温まる感じはしなかった。
ほんの少しだけ、人肌が恋しい。

「あ、」

ふと思いついたように、他のクラスの教室を覗く。
いるかな、程度の気持ちで覗いた。はずだった。



「……っ、」



目が、合った。
あの人と。

あちらも驚いたような顔をしていて、数秒間目と目が合ったままで、さすがにはっとしたのか、彼ははにかんだように笑った。
私もはっとして、すぐに視線を逸らした。


あんなに、あんなに真っ直ぐな眼をした人がこの世にいるのだと、初めて知った。
あんな眼を見て、平常心でいられる人は、きっと人間じゃない。


心臓の音が五月蝿い。
さっきまで、もうすぐ止まるんじゃないかってくらいゆっくりだったのに。
頬に熱が集まる。
外の空気と比例して、冷えきっていたはずなのに。






呼吸が、止まるかと思った。






           ( 息が詰まる瞬間 )









■後書き

昨日学校で大掃除があって、それで思いつきました。
こういうの一度でいいから書いて見たかったんです。御免なさい。