二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.73 )
日時: 2011/12/25 21:49
名前: 雲雀 (ID: 7aD9kMEJ)

■この小説は「緋色の欠片」の物語を作者が勝手に作りかえたものになります。
未プレイの方及び捏造が苦手な方はお控えください。
珠紀と守護者の関係が本編とは全く別のものになっており、
珠紀は美鶴のような位置にあたる人物になっております。
実際の作品のイメージを崩されたくない方も同様にお控えください。






【触れた指先/祐一×珠紀】



幼い頃から、ずっと傍にいた。
きっとこれからも、ずっと一緒いるものだと思っていた。
叶うなら、彼女を守りたいと。
けれど、自分達が守らなければならないのは、彼女とは違う少女だった。



【玉依姫】——————自分達が守るべき存在。

この体に流れる血が絶えるその瞬間まで、

これからも、きっと未来永劫。

命を賭して守り続けなければならない、絶対的な存在。

頭ではそう割り切っているはずなのに、

浮かぶのは、彼女の笑顔ばかり。






「——————珠紀」

名前を呼ばれ、振り返ると、見知った顔の人物がそこにはいた。
夕日に照らされたその姿は、一枚の絵のように美しくて、一瞬眼を奪われる。

「祐一先輩、どうされたんですか?」

知っている人物だということに安心して、珠紀は柔らかく微笑んだ。
彼女の笑みを見て、祐一も愛しそうに眼を細める。
そして、ゆっくりと口を開いた。

「玉依姫のことで、少し……」


時間はすでに四時を過ぎていて、学校に残っているのは運動部くらいだった。
でも万が一誰かに聞かれると色々と面倒なことなので、二人は図書室に移動することにした。


「……それで、玉依姫様がどうかされたんですか?まだこの村にはいらしてませんけど……」

「……来る、というのは、本当みたいだな……」

場の空気がいっきに重くなる。
【玉依姫】
その言葉が発せられる度に、まるで鎖に繋がれていくような錯覚さえ覚えた。

「はい。あと半月もすれば」

珠紀は淡々と答える。
決して心を乱してはいけない。
たとえこの命に変えてでも、
自分達が守るべき存在。

大切な幼馴染達も、目の前にいる彼も、そして私自信も。
その運命からは逃れられない。


泣き出してしまいたかった。
私が傷つくのはいい。
でも、何故彼らまで傷つかなければならないのか。
呪われているのは玉依の血筋だけだと言うのに。
過去の盟約に囚われて、何故彼らまで犠牲にならなければならない。
何故守護五家に生まれてしまったが為に、彼らは人生をその役目に捧げなければならないのだろう。


そのことを珠紀は繰り返し思い、必死で涙を堪えた。
大切で、たとえ何に変えても守りたい人達。
でも、私が守るのはあくまで玉依姫。
彼らではない。
でも、彼女のことを憎いとも思わない。
彼女もまた、この運命の犠牲者なのだから。
歳は私と同じ位の女の子だと聞いた。
仲良くなれたらいいな、とも思っている。
願わくば、この運命を断ち切ってくれたらと。


絶望しか見えなくても、彼女の心から希望が潰えることはなかった。
真っ直ぐなその瞳を見てから、祐一は再度、口を開く。

「……もしも。もしも、お前が……——————」

そこまで言って、彼は言うことを躊躇う。
言っていいのか、迷っているのだろう。
珠紀はなんとなく、その先を読み取った。

「祐一先輩、」

静かに、彼の名を呼ぶ。
彼は悲しみを宿した瞳で、珠紀を見据えた。

「私は、玉依姫ではありません。なれも、しないんです」

「…………」

「でも、」


高ぶる感情を抑えながら、必死に言葉を紡いでいく。
どうか、最後まで言わせて。
どうか、涙が流れてしまわぬように。


「今までずっと、守ってきてくれて……」


頬に温かい感触がある。
でも、そんなことはどうでもよかった。
今は、この言葉だけ伝えたい。




          「 ありがとう 」




それは、決別の言葉でもあった。
もうあなたが守るのは、私ではないのだと。
傍にいるべきは、近い将来この地に訪れるであろう、玉依姫なのだと。


「……っ、」


祐一は何かを言いかけ、言葉を発さないまま口を閉じた。
そして、悲しげに俯く。

悲しんでほしくないのに、今彼を悲しませているのは私なんだ。と、珠紀は悲しく思った。
大切だからこそ、今引き返さなければ、お互いが傷つくことになる。
きっと、今以上の悲しみで。


「帰りましょう、先輩」


精一杯の笑顔で、微笑む。
祐一も寂しげな口元で薄く微笑み、ゆっくりと珠紀の手を握った。



彼なりの、優しい別れだった。
この指が離れたら、きっと、もう二度と。









       — お互いの想いが重なることはないだろう —









(大切すぎて、)
(伝えることができなかった)









■後書き

あまりの文の酷さに自己嫌悪に陥りました。
真弘の小説も書くつもりです。