二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.8 )
日時: 2011/08/22 14:51
名前: 雲雀 (ID: VEcYwvKo)
参照: http://www.youtube.com/watch?v=T8Kelg2KiWE

【人柱アリス/初音ミク&鏡音リン&鏡音レン&KAITО&MEIKО】



あるところに、小さな夢がありました。
だれが見たのかわからない、 それは本当に小さな夢でした。
小さな夢は思いました。


「このまま消えていくのはいやだ

                        どうすれば、人に僕を見てもらえるだろう」


小さな夢は考えて考えて、そしてついに思いつきました。
人間を自分の中に迷い込ませて、世界を作らせればいいと


(そうして人間は、狂気に満ちた“ 夢 ”を見るんだよ?)
(結局それは、“ 夢 ”でしかないのだけれど)


          絵本『人柱アリス』


一番目のアリスは勇ましく、誇り高い女性の剣士。
いろんなものを斬り捨てて、紅の鮮やかな道を敷いていった。
返り血を浴びたその顔はどこか妖艶で、近づく男はざらにいたけれど、皆斬り殺された。


          “ 斬る ”


それが、彼女の全て。
そう言ってしまえば、何もかも終わり。


(君じゃ、駄目)
(いつか“ 僕 ”まで壊されちゃう)


そんなアリスは森の奥、罪人のように閉じ込められて、
手足は拘束され、光さえ奪われて。

「ここから出して……っ!」

そんな言葉も、届かずに。

「絶望」

その言葉に尽きる。
森にできた小道を辿る以外に、彼女の生を知る術はない。


          “ でもアリスの牢が再び開いた時、あなたの命はないよ? ”


くすり、と“ 夢 ”が笑った。


二番目のアリスはおとなしく、歌うことを愛した青年。
彼が生み出す音はあまりにも美しく、人々の欲望を掻きたて、狂わせた。
自分が一番狂っていることも知らず、彼は歌い続ける。


          “ 歌う ”


それが彼の全て。
そう言ってしまえば、なにもかもただの狂気。


(狂った世界に、)
(光なんてあるの?)


そんなアリスは薔薇の花、いかれた男に撃ち殺されて、
世界が、音が、どんどん遠ざかっていく。

          “ もっと歌いたかった ”

そんな願いさえ、叶わずに。
ただただ、意識は闇に落ちていく。

血に濡れた真っ赤な一輪の花、それが彼の十字架。
朽ちていくことも知らずに、皆に愛でられ枯れていく。


          “ 彼が転生を繰り返し、この世に歌として現れた時、世界は再び狂気に包まれる ”


破滅へのカウントダウン、スタート!


三番目のアリスは幼い娘、誰からも愛され、慈しまれた美しい少女。
その美貌はいろんな人を惑わせて、いつしか王子までもを虜にし、おかしな国を造りあげた。


          “ 美 ”


それが彼女の生きる意味。
それさえ消えてしまえば、もう何も残らない。


(時を重ねるごとに、)
(失われていくもの)


そんなアリスは国の女王、歪な“ 夢 ”にとり憑かれて、
「不老不死」あるはずもない夢物語に浸る。

「いやっ……いやぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああっ!」

涙を流す。自分の顔を覆い、その場に蹲る。
鏡の向こうに見た、“ 自分 ”の姿。

朽ちゆく体に怯えながら、国の頂点に君臨する。
哀れな女王、ここにあり。


          “ いくら怯えても、「死」は免れないんだよ? ”


冷えた声音、嘆きの中に掻き消される。



森の小道を辿ったり、薔薇の木の下でお茶会。
(血に濡れた道、朽ちた薔薇の花)
お城からの招待状は、ハートのトランプ。
(歪な夢、形を成す)



四番目のアリスは双子の子、好奇心旺盛で仲のいい姉弟。
かつてのアリス達の過ちを潜り抜けて、ついさっきやってきたばかり。
気の強い姉と、賢い弟。


          “ 二人 ”


それが、彼らの強みであり弱み。
どちらかが終われば、それで消える運命。


(どちらかが終われば、)
(ゲームオーバー!)


一番アリスに近かった二人。
けれど二人の夢は覚めないまま。


「もういらない」


一人でアリスになれば、一人で独占できる。
“ 独占欲 ”が生み出した悲劇の双子、不思議の国を彷徨った。


          “ 何かを選ぶってことは、何かを捨てることなんだよ? ”


“ 夢 ”の終わりは、どこにも見えない。



           【アリス】

幾人ものアリスを人柱にしながらも、その存在、未だ現れず。
世界は終焉の結末へと歯車を廻す。                  .............The end









■後書き

アリス……いったいどんな存在なんでしょうね。
それが気になる今日この頃です。