二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.80 )
- 日時: 2012/01/10 20:36
- 名前: 雲雀 (ID: 7aD9kMEJ)
【螺旋の渇望】
あなたの光でしか輝けない私。
その光で私を輝かせるあなた。
滑稽ですか?
あなたからの光がなければ、輝けない私が。
夜の闇でしか輝くことができないこの私が。
朝ではあなたの光が眩しくて、
私はこの空には存在できない。
できたとしても、それはきっと、儚い幻影。
哀れとでも思って、光を傾けたのですか?
そのぬくもりで、冷めた私を温めようと?
愚かなのですか、あなたは?
星達が瞬く暗闇の中、私はいつもひとりぼっち。
星達が瞬くのなら、私の淡い光なんていらない。
そうは思いませんか?
私を愛してくれるというのなら、その灼熱の温度でとかしてほしい。
ひとりでいるのは寂しいから。あなたの腕の中で灰になれるのなら、
それはきっと、とても幸せなこと。
あたたかな光を放つあなた。
冷えきった淡い光を放つ私。
対でありながらも、決して対にはなれない存在。
だってそうでしょう?
私はあなたからの光がなければ輝くことができない。
あなたは私などいなくても幾多の星を照らし続ける。
存在理由など、手放す必要さえなかった。
だから早く、その熱で私を溶かして灰に。
こんな偽りの光などいらないから、早く。
どうか、あなたが愛している私でいるうちに。
どうか、あなたを愛している私であるうちに。
こんなにも愛しいから。
それでも触れることが叶わないのなら。
ひとつの存在として在ることができないのなら。
壊れるその瞬間は、あなたの腕の中がいい。
「……っ」
ほら、小さな子供が怯えてる。
私の光でその濃さを増す暗闇に。
ほら、刹那を生きる花が震えてる。
私の冷たい光と共に流れる夜の風に。
空が泣いている。
暗闇に消えていくあなたを見て。
愛してくれなんて言わない。
だから早く。
(どうかその手で、)
(私を壊して)
私なんて、必要なかったのだから。
あなたにも、私自信にも。
私はいずれこの手で全てを壊す。
望んでいなくても、変わらない。
変わることのない、悲しい事実。
きっとあなたのことも壊してしまうでしょう。
それでも、あなたはその瞬間まで私を憎いとは思わないのでしょう。
憎んでほしいのに。
微笑みながら、私を許すのでしょう。
いっそあなたに壊してもらえるなら、どんなにいいだろう。
塵と成り果て、新たな星になる私。
そのどれかひと欠片にでも、あなたがいると信じてもいいですか?
私だけが生きるなんて、あまりにも寂しいから。
永遠にも等しい時間は、あまりにも孤独だから。
あなたを巻き込みたい訳じゃない。
ただ、一度でいいから。
あなたと終わりのある時間を生きてみたかった。
あなたと刹那の時を生きてみたかった。
残酷だと笑うかもしれない。
でも、それでも。
あなたとなら、きっと幸せだから。
叶うなら、どうか私を壊して。
愛しいあなたをこの手で壊す前に。
あなたの腕の中でこの命が尽きるなら、
それはこの世のどんなことよりも幸せだから。
こんなにも愛しているのに、
触れたらあなたは灰になる。
それなら儚い望みなど捨てて、
この世の果てでひとり、灰になってしまうおうか。
あなたの涙が苦痛にならないその日まで。
いなくなる術などいくらでもあるのに。
傍にいたいと願う愚かな私。
我儘ですね。
こんな私なら、あなたは憎んでくれますか?
御免なさい、我儘で。
やはりこの命に終止符を打つのは、
あなたがいい。
「……っ」
ほら、か弱い少女が泣いている。
優しい暗闇の中、愛しい人との逢瀬が終わる瞬間に。
ほら、小さな子供が怯えてる。
なくしたぬくもり、あたたかな夢を消し去る残酷な光に。
空が泣いている。
眩い光にのまれていくあなたを見て。
手を差し伸べてなんて言わない。
だから早く。
(私を憎んで、)
(消えることが出来るから)
全てを壊してしまう私。
全てを包み込むあなた。
必要とされるのは、どちらだと思いますか?
正反対の存在。
同じ時間を生きるのに、決して触れ合うことはない。
お互いを壊すことでしかお互いを守れぬのなら。
いっそ二人で逃げてみようか?
命尽きる瞬間は、
命消える瞬間は、
あなたのぬくもりに抱かれている時がいい。
命の幕を下ろすのは、
命を終焉へ導くのは、
あなたのその愛しいぬくもりがいい。
そして二つが壊れたなら、
きっとひとつになれるでしょう。
望みは同じなのに。
焼けつくようなこの胸の痛みはなんですか。
「 」
涙で滲んだ視界の先にうつるあなたの姿が、
どうか幻ではないように。
■後書き
【光と闇の狂想曲】のシリーズです。
今回は月と太陽の物語になっております。