二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.81 )
日時: 2012/01/06 23:10
名前: 雲雀 (ID: 7aD9kMEJ)

■この小説は「緋色の欠片」の物語を作者が勝手に作りかえたものになります。
未プレイの方及び捏造が苦手な方はお控えください。
珠紀と守護者の関係が本編とは全く別のものになっており、
珠紀は美鶴のような位置にあたる人物になっております。
実際の作品のイメージを崩されたくない方も同様にお控えください。






【記憶に残る花はあまりにも鮮やかで/真弘×珠紀】


 



         「 大きくなったら、結婚しようね 」






どこにでもよくある、笑ってしまうような、小さい頃の口約束。
でもきっとその時はとても真剣で、二人で幸せな未来を思い描いてる。
私達もきっとそうだった。
あなたがいて、私がいて、子供も男の子と女の子が両方いて、家の庭には花がたくさん咲いていて、休日は皆でどこかへ出かけたり、家でのんびりしたり。
馬鹿みたいな想像。
叶わないと、心のどこかではもう勘づいていた。
だけど、それでも。






今でも信じてる、って言ったら、あなたは笑いますか?






秋も深まり、季封村にも冬が近づいてきた頃。
珠紀は静紀に呼び出され、彼女の部屋へと向かっていた。
なんとなく、話の内容は珠紀にも理解できていた。
恐らく、玉依姫のことだろう。
もうすぐ、この村へと訪れる。
私が命にかえてでも守るべき人。
失礼します、と襖の前で一度声をかけ、中へと入る。

「来たわね。珠紀」

「はい、何かご用でしょうか。ババ様」

「ええ、あなたにも話しておかなければと思って」

静かな会話。
緊張感があるのは、気のせいじゃない。
ひと呼吸おいて、静紀が口を開く。

「あなたも勘づいてはいると思うけれど、鬼斬丸の封印がとけかかっているの」

鬼斬丸……普通の人が聞いたら、おとぎ話だと言って笑うだろう。
でも事実、私達はそれに縛られている。
目の前にいるこの人も、私も、美鶴も、……守護者の皆も。

「はい……」

口にした言葉は酷く掠れていて、けれど、ここで感情を露にする訳にはいかない。
珠紀は月光に照らされている自分の手を見つめながら、深く息を吸い、声にならない悲しみと共に吐き出した。
そして、静紀を真っ直ぐに見据える。

「もう、迷っている時間はないわね……。当代の玉依姫に、封印を行なってもらわなければ」

「そう、ですね……」

部屋に静寂が訪れる。
それは危うい均衡のようで、永遠にも感じられる時間だった。

「守護五家にも伝えておいてちょうだい。近々、玉依姫が来ると」

「はい……ババ様のご意思のままに」

珠紀は立ち上がり、部屋を出ていこうとする。
すると、静紀がまるで独り言のように呟いた。

「産まれてすぐにいなくなってしまったから……もう、どれくらい大きくなったのかしら」

宙を見つめている彼女の瞳は酷く無機質で、そこから感情を読み取ることはできなかった。
悲しんでいるのか、懐かしんでいるのか。
その声はどこか、寂しげに響いた。









■後書き

文字数がオーバーしたので、二つに分けました。
きりのいいところで終わらせたので、だいぶ短くなっております。