二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.9 )
- 日時: 2011/08/23 03:03
- 名前: 雲雀 (ID: VEcYwvKo)
【雲雀家四人兄弟/アラウディ&風(大人ver)&雲雀恭弥(10年後)&雲雀恭弥(10年前)】
長男/アラウディ
次男/風
三男/恭(10年後)
四男/恭弥(10年前)
「ふぁ……」
まだ眠い目を擦りながら、青年は隣のベッドで寝ている少年に目を向ける。
前髪で隠れていてよく分からないが、寝息が聞こえてくるから恐らくまだ眠っているのだろう。
「恭弥はまだ寝てるみたいだね……」
「そうみたいですね」
声のする方を振り向けば、弟達と同様の黒髪を腰あたりまで伸ばしている青年が一人。
「風……起きてたのかい?相変わらず起きるの早いね」
「そうですか?今日は四時でしたよ?」
「今何時……」
「五時です」
上品な笑みを浮かべながら、彼はさも当然のように言い放つ。
細められた紅い瞳が、優しさを帯びていてあたたかい。
「恭もまだ寝ています。昨日は徹夜で頑張っていたみたいですからね」
「彼にも頑張るなんて脳があったんだね」
「とか言いつつ、心配で物陰からずっと見ていたのあなたじゃないですか」
「……」
「アラウディ兄さんは分かりやすいですね」
クスクス、と風が笑う。
他人であれば即座に睨むところなのだが、どうしても弟にはそれが出来ない。
自分の甘さに、アラウディは小さくため息を吐いた。
「今日は休日ですし、二人はこのまま寝かせておきましょうか。寝顔も可愛いですしね」
長い袖に隠れている両手を胸の前で合わせ、風は静かに瞳を閉じる。
「ねぇ」
「なんですか?兄さん」
「僕君の寝顔一度も見たことないんだけど」
「安心してくだい、私は兄さんの寝顔をちゃんと見ていますから」
二人の間に僅かな時間、沈黙が流れる。
風は満面の笑みを、アラウディは無表情を崩すことなく沈黙する。
やがて風が何かを思い出したかのように口元に手をあてる。
「言い忘れていました。朝食、もうできていますよ」
では戻りますね、と言い残し、風は一階にあるリビングへと降りていった。
「……今度絶対寝顔見てやる」
人知れず、アラウディは密かに闘争心を燃やしている。
そんな静かな部屋の中、ドアの方からカタン、と音がする。
「へぇ、誰の寝顔を見るんだい?兄さん」
敬語ではなく、自分と同じくらい低い声とすると……。
「恭……気配消すのやめてくれる」
ドアに寄りかかりながらこちらを見ている恭を一瞥すると、彼はクスリと笑う。
もう充分大人なのに、兄という立場のせいなのか、その笑顔が無邪気に見える。
「僕は誰の指図も受けないよ」
こんな捻くれた言葉を返されても、やはり弟は可愛い。
風と違って下の弟二人の捻くれた性格はアラウディに似たのだろう。
自分の性格を呪いながらも、アラウディは恭を見返す。
「風兄さん、もう朝食つくってるの?」
お腹が空いているのか、少し元気のない声でそう問う。
アラウディが頷くと、恭はそっか、とだけ言って、階段を降りていこうとする。
自分も特にすることがないので、ベッドから降り、部屋を出る。
「ちょっと恭、フラフラしないでよ」
「仕方ないでしょ、寝不足なんだから」
恭の足取りはフラフラしていて、今にも階段から落ちそうだった。
「なんで寝不足なのさ」
「徹夜で仕事終わらせてたんだよ、残したままだと気持ち悪いから」
何か悪い?と言ったところで、恭の体が前方に倒れかける。
「いちいち迷惑かけないでくれる」
「……っ……」
アラウディが間一髪で腕を掴み自分の方へと引き寄せたことで、階段からの落下は免れた。
恭は少し頬を赤らめ、そっぽを向く。
「助けろなんて頼んだ覚えはないよ」
「階段から落ちたら困るでしょ」
「なんで?」
「……床が傷むから」
恭のことなど全く心配していない様子で、アラウディが言い放つ。
視線は完璧に明後日の方向を向いていた。
「恭、兄さんはいつでもあなたのことが心配なんですよ」
階段の下から、丁寧な口調の声が聞こえる。
「風……何勝手なこと言ってるの」
「本当のことでしょう?兄さんも素直じゃありませんね」
笑みを堪え切れない様子で、風は笑う。
そこへ、軽い足音が聞こえる。
「兄さん達……何やってるの?」
階段の上に、末っ子である少年が不機嫌そうな顔で立っていた。
「邪魔なんだけど……そこどいてくれない?咬み殺すよ」
その言葉に、恭が反応する。
アラウディの腕から離れて、妖艶な笑みを浮かべる。
「ちょ、恭……」
アラウディが口を塞ごうとしたが、間に合わなかった。
「へぇ?かかってきなよ、返り討ちにしてあげる」
お互いどこに隠し持っていたのか、手にはトンファーが握られている。
「ワォ、やっぱり兄さんはいいね」
「僕も君みたいな弟をもてて幸せだよ、恭弥」
「おいこら戦闘マニア共、家破壊する気か」
必死で自分達を止めようとする兄を無視し、二人は戦闘態勢に入る。
「おやおや……二人共朝から元気ですね」
「風、見てないで君も止めなよ」
「二人が喧嘩をするなんて、平和な証拠じゃないですか」
「家、壊したいの?」
アラウディに睨まれ、風は肩を竦めながら笑う。
「仕方ないですね……」
ため息を吐いてから、二人を見つめる。
「二人共、後五秒以内にリビングに入らないと今日の食事は無しですよ」
二人の動きがピタリと止まる。
そしてお互いにお互いを見てから、
「「おあずけ……ね……」」
と言って、渋々といった感じでリビングに入っていく。
「ほら、兄さんもいきますよ」
「…………」
風の笑顔が、どことなく黒いのは気のせいではないのだろう。
(雲雀家の法則、)
(次男は最強)
■後書き
風が好きで書きました。
あの四人、似てますよね。