二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*〜 ( No.10 )
日時: 2011/08/31 14:18
名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)

第1話 ふいに…


少年と少女が倒れていた。

住宅街の細い道の上、少年と少女が倒れていた。

少年が目を覚まし少女を見つけた。何か疑うような視線で少女を見ると、彼は去って行ってしまった。


少女が倒れていた。

と、制服を着た少年が少女を見つけた。慌てた様子で駆け寄り、上半身を起こして呼びかけるも、応答は無い。

少年は少女が倒れていた近くにある家の、インターホンを押した。元々その家に用事があったらしい。


少女には傷など無く、何故か、倒れていた。


メイドが出てきて、とりあえず少女を家の中へ抱えて運ぶと、その少年の知り合いだろうか、もう1人の少年が現れた。

少年「神童!こいつ、お前の家の前に倒れてた!」

神童、と呼ばれた少年は顔をしかめ、少女に視線を向けた。

桜色の髪は腰まであり、瞳の色は目を閉じている為分からないが、白い半そでのワンピースを着ている。

神「霧野、こいつ1人だけだったのか?」

霧「他には誰も…。」

少女を見つけたのは霧野と言う少年。神童は奥の部屋にあるベッドに少女を寝かせ、メイドを見張りにつけた。




円堂達が卒業した10年後の中学サッカー界。

サッカー部である神童と霧野は、もろその環境の悪さの影響を受けている。

フィフスセクターに管理される勝敗。神童は勝敗指示に無い得点を、先日試合で上げてしまったばかり。

そして逆らったとして監督であった久遠が、辞めさせられたのだ。

霧「誰だと思う、新しい監督。」

神「さあ…」

霧「円堂さんだよ。」

FFIでイナズマジャパンが優勝した時のキャプテンで、すっかり有名になった円堂。

24歳になった彼が、雷門中のサッカー部監督に就任したのだ。神童も驚かざるを得ない。

フィフスセクターに従順そうな監督しか送らないフィフスセクターが、あの熱血として知られる円堂を送って来るなど前代未聞である。

こんな話をしている同じ屋根の下で、あの少女は目を覚まさなかった。




神「疲労?」

医者「ええ、外傷は見当たりませんし病気の症状らしきものも無いですから、恐らく疲労の蓄積かと。」

医者の判断によるとこんな所か。

念のため医者を呼んで診てもらったが、少女は単に疲れていただけの様だ。神童がほっと息をつく。

霧野は帰り、医者も他に何もする事が無い。診察料諸々を払い、帰ってもらった。

外まで見送りに行き、道路を見た。彼女が倒れていたという道路を。

神「!これは…」

道端に何か落ちている。しゃがんで手を伸ばすと、どうやらポーチの様だ。黒い小さなポーチ。

少女の物かもしれない。

中を開けてみようか、放っておいた方がいいのかと悩んで、じゃあとりあえず家の中に置いておこう。

…という事で玄関に置いて、ピアノのある部屋に向かう。

ピアノは、弾いている者を落ち着ける…。神童はそう想う。

—俺はどうしたら良いんだ?



4曲ほどクラシックの曲を弾いた頃だ。メイドが慌てて部屋に入って来た。

メ「女の子が、目を覚ましたのですがっ、その…」

神「?」

とても言いにくそうにメイドが言い、とにかく来て下さい!と神童の手を引っ張り彼女が寝ている部屋へ連れて行った。




苦しそうな嗚咽。

少女は泣いていた。ベッドの上で苦しそうに涙を流し、泣きやもうと努力しているように見える。

メ「30分もこんな感じで…。」

神童が少女の近くに寄り、背中をさする。メイド達では手に負えなかったという事だろう。

神(それを俺がどうしろと!!?)

瑠璃色の瞳、年齢は俺達と同じか、1つ小さいか。それ位に見える。

少女「ー、」

全く状況は変わらない。仕方が無い、と神童は少女を立たせピアノのある部屋へ連れて行った。



しかし、それは多少無謀かもしれない。

神「何か弾いてみろ。」

何も弾けなかったら終わりである。

ピアノの曲を弾かせて落ち着かせようという作戦だった。ただ、それには問題点も上の様にある。

少女が鍵盤を見つける。

両手を置いて、震える指でファに右手の親指を合わせ、押すように弾き始めた。

穏やかな曲。

途中で止まりながらも、それでも弾くのを止めようとせず、その大きな流れの様なメロディーを奏で続けた。

これは…海?空?

神(少なくとも、こいつは知ってるんだろう…地上で見るよりも、もっと蒼い空を…。)

最後の和音。静かに、綺麗に光が消えて行くように響く。

ゆっくりと両手を鍵盤から離す、その時にはもう、少女はすっかり落ち着いていた。

神童の瞳を見つめて、話そうと口を開きふいに俯く。

右手は喉元。

もしかして、と神童の体に電撃が走る。

神「お前……声が出ないのか…?」


*続く*