二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*〜 ( No.13 )
日時: 2011/08/31 15:59
名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)

第2話 memory


神「…!!?」

硬直する神童に、医者は容赦なく繰り返した。

医者「記憶喪失です。」


声が出ないことが判明した直後、神童は医者を無理矢理引き戻した。しかし本人は疲れたとか言って休んでいる。

診察したのは若い女医だった。

女医の結論によると少女はボールペンを見て頭にクエスチョンマークを浮かべて、更に言葉も通じていない様子。

医者「ピアノが弾けたのか不思議ですが。とにかく記憶喪失でしょう。」

神童はベッドの上に居る少女を振り返る。視線が合うと、彼女はじっと見るだけで視線を外そうとしない。

医者「記憶は戻すことも可能です…刺激を与えると、一般的には早く回復すると言われています。」

神「分かりました…。」

医者達が去ると、神童は自分の部屋に向かった。教科書を何冊か取り出し、少女がいる部屋に持って行く。

刺激を与えなくても、教科書に有る文字などを見る内に思い出さないだろうか、と思ったのだ。

少女「……ー!」

彼女が開いたのは英語の教科書、クリスマスに関する文が書いてあるページだった。

右手を頭の上に強く押し当て、俯く。

ハッと顔をあげた時、神童の顔を見つめ、話そうと口を開いた。出なくても。

神「…何か思い出せたか?」

少女は首を縦に振った。

神童は反応があった事に少し喜びを感じ、辺りを見渡しスケッチブックと鉛筆を渡した。これに書け、と。

少女はスケッチブックを開き、鉛筆を走らせた。

「学校で勉強したこと思い出しました」

神「何処の学校かは…?」

少女は首を横に振った。その他は思い出せなかった様子。

神「…そうか。」

「あの絵の花は何ですか」

絵?

神童が振り向くと、其処には大きな絵があった。風景画で、花が咲いている木がメイン。

神「あれはアンズの花だ。」

「分かりました、ありがとうございます」

じゃあまたな、と言って部屋を出た。

何処か冷静…冷たさに近い物を感じる少女…。神童は自分の部屋に入ると、小さくため息をつき考え込んだ。

家の前に倒れていた記憶喪失の少女。

新しいサッカー部の監督。

俺はどうしたらいいのか。

心の奥の重たい物と、向き合いたくなかった。逃げてしまいたかった。

神「…」

神童は立ち上がった。そして少女の部屋に向かう。

神「サッカーの練習、見に行かないか。」


神童のジャージを着て、少女と彼が向かったのは河川敷。

鉄橋の上で下をのぞきこめば、誰にもばれず見る事が出来る。と、神童の背中をトン、と誰かが叩く。

霧「神童、来たのか。」

神「!霧野…」

少女「?」

首をかしげる少女を見た霧野は、神童に説明を求める様な視線を向けた。

神「記憶喪失で、刺激を与えたら早く戻るって医者に言われたんだ。」

霧「き、記憶喪失!?」

霧野が目を見開いて少女をもう一度見た。自分達より少しだけ背が低い少女は、不安そうな瞳で神童を見る。

神「お前を見つけた霧野だ。」

円「来たか剣城!」

円堂の声が響く。少女も2人も吸い寄せられるように彼の視線の先を見た。剣城の姿がそこにはあった。

円「サッカーやろうぜ剣城!」

剣「虫唾が走るぜ、お前のサッカーやろうぜにはな!」

円「そうか。お前達もそんな所に居ないで出てこいよ〜!」

神(そうか、でスルー…)

霧「…本当にフィフスセクターから送られてきた監督なのかな…。」

霧野が呟く。

雷門ジャージを着た少女が、じ、と円堂を見る。春奈達も視界に入る。そして顔をしかめた。

少女「……。」

次々に雷門イレブンが姿を現す。円堂が笑って、皆のキック力を見せてくれ、と言った。

倉間から蹴る事になった。ボールがネットに突き刺さる。

少女「…?」

円「良いシュートだ!さすが雷門のフォワードだな!!」

明るい声が周囲に響いた。

神童たちも円堂の対応をじっと見ている。フィフスセクターから送られてきた監督が勝利を目指してる?

そんな事は信じられない。

円「次は浜野だ!」

少女「っ!」

ずるずる、と彼女の手が橋の柵を握り締めたまま落ちて行く。神童が隣を見ると、彼女はしゃがみこんでいた。

神「大丈夫か?!」

力無く頷き、帰ろうかと提案したら、直ぐに首を横に振った。視線はフィールド、今シュートを打つ天馬達の方向。

円「最後は剣城!」

全「!」

円堂がゴールの中心に立った。

円「残ってるのはお前だけだ!サッカーやろうぜ剣城!!」

全「!!」

ふゅう…と怪しげな風が吹いた。少女が目を閉じる。

剣「デスソード!!!」




少女「…。」

彼女は眼を見開いて、フィールドを見ていた。

円堂はシュートをかわして、それから笑顔でシュートを褒めた。そして剣城が去った後、練習の終了を告げる。

霧「…神童。」

微笑みを浮かべてフィールドを出る円堂から目をそらした神童。

真っ直ぐな人間。彼は、円堂を受け止めきれずにいる。

霧「…あれ、あいつは…」

神「!…えっ」


少女がいない。



少女「はぁっ、はぁっ…」

フィールド。

緑色のフィールド。

黒と白のサッカーボール。

円「?」

息を切らしてフィールドに降りた少女は、彼の眼を避けて移動しつつボールを手にする。

何かを感じた。ボールから、何かを感じた。

目を閉じて、それが何なのか、少女は思い出そうとする。


剣「?!…あの女…。」

剣城が、少女を見つけた。


*つづく*