二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*人気投票結果、発表! ( No.165 )
- 日時: 2011/09/19 23:07
- 名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)
第17話 レースと向日葵
大丈夫?と声をかければ、月乃はこくりと頷く。橘は内心無理をしていると気付きながらも、何も言わないことにした。
明るい通りだった。否、明るいを通り越して…別の雰囲気を纏う通り。
通行人はドレスを着たり、コスプレなのかと思う程可愛らしい、色々な意味で凄い恰好をしている。
隣を歩く教師の音無が、橘の目には浮いて見えた。
音「此処ら辺のはずなんだけど…あった!此処よ此処!」
橘「で、私達は荷物持ち?」
音「あ、あはは…手伝ってね^^;」
音無、橘、月乃が足を止めた店は、ゴシックロリータ、通称ゴスロリの服を扱う。外からもフリフリの服が見える。
この店で知り合いが働いてるのよ、と笑顔で音無は言う。月乃も興味があるのか、店内を覗き込んでいた。
3人は店の中へ入り、音無がすいませーん、と声を張り上げた。と、足音がパタパタと近付いてくる。
橘「っ!」
音「?どうしたの、美(橘「先生、私やっぱり帰りますっ!」
突然青ざめた顔で、彼女がそう言う。音無は慌てて理由を聞き出そうとするも、橘は首を横に振るだけ。
月「…先生、帰らせてあげて下さい。」
音「でも」
?「春奈ちゃん、取りに来たんだねっ!」
足音がゆっくりと止まる。明るい声が響いた。
橘は一瞬の隙を突き、音無の手を振りほどいた。そのまま一目散に店を飛び出す。
追おうとした音無を月乃が止め、やがて彼女の姿は見えなくなった。
音「…っ、美咲ちゃんが…」
?「——!!!み、さき…?」
震える声が聞こえて、音無が振り向く。
黒髪は2つ縛りにされていて、服装は黒と白のゴスロリ。ネームプレートは可愛くデコられている。
音「…蜜柑ちゃん?」
——愛姫蜜柑。
愛「っ。ごめん、ちょっと、ね…」
背は伸びたが、25歳にしては低い。高校生と言っても充分通用しそうだ。
愛「その子は、生徒さん?」
音「私の後輩…さっきの子も。」
ペコ、と月乃がお辞儀する。じっとその様子を見た蜜柑は、ゆっくりと目を閉じた。
愛「じゃあ注文してた服、持ってくるね。」
音「…!」
店の奥へ彼女は消えていく。その時、音無は彼女の目に雫を見た気がした。——涙。
音「…美咲ちゃんも、蜜柑ちゃんもどうしたんだろ…」
月「…。」
月乃は、ただ真っ直ぐ彼女が消えて行った方向を見ていた。
〜蜜柑side
私には、お姉ちゃんがいた。
小さい時に死んじゃったんだけど…だから、殆ど何も覚えて無い。1回だけ、私の事を呼んでくれたのは覚えてる。
年が少し離れてたから身長は全然違ったけれど私とそっくりで、身長が同じくらいだったら見分けがつかないって言われてた。
名前は、美咲。
びっくりした。春奈ちゃんが連れて来た、帰っちゃった子が写真の中のお姉ちゃんの後ろ姿とそっくりで、名前も同じで…。
怖い位。しかも、もう1人が挨拶した時の瑠璃花ちゃんと一瞬重なって…
こわい。
声に出したつもりは無いのに、気付けば声になってた。近くの壁に寄り掛かってしゃがみこむ。
ずっと大好きだったこの店でアルバイト。毎日夢みたいだし薔薇色。みんな優しいし、春奈ちゃんだって。
…でも、そんな大好きな人たちの状況は良くないみたい。
愛「…お姉ちゃん。」
呟いたって、あの向日葵畑の時みたいに呼んだって、もうお姉ちゃんはいないの…。
〜橘side
息が切れる。もう走るの疲れたな…足をゆっくりと歩くペースにした。
どうしよう、本当に会うなんて…。カンが当たるなんて。…そう言えば、前に神様に言われたっけ。
「お前のカンはよく当たる」
嬉しくない…だって、あの頃とは違うのに。私は、もう…。
ポツリ、と水滴が顔に当たった。雨が降るみたい。
やがて1粒が大きくなって、大雨になる。良いの、私は風邪なんてひかないよ。
私のカンはよく当たる。
じゃあ、捜してる人も、此処に居るの…?
黄色い黄色い世界で、私は忘れかけていた名前を呼ぶ。
橘「…蜜柑。」
*つづく*