二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*参照1000突破!!! ( No.379 )
- 日時: 2012/01/04 15:44
- 名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)
第40話 She knows all.*彼女は全てを知っている。*
中学校の門の前には先客が居た。
その姿を確認出来たのは、開いている門のすぐ隣だった。だから彼女は、来た道を引き返そうとしても、腕を掴まれてしまう。
苦々しげに、自分の瑠璃色の瞳に映る先客を見る。青い髪の剣城京介——その表情は、月乃を睨んだ時と全く同じ。
勢い良く門に背中を打ちつけられた。
剣城?「あれだけの力…間違い無い、俺達の捜してる獲物だ…」
月乃「!」
剣城の手が首に伸びた。月乃が抵抗し様と腕を振り払おうとするが、力が強くてどうしようも出来ない。
剣城?「死にたく無かったら力を解放しろ。」
月乃「か…はっ、」
首を締め付けられる、抵抗するだけの力は削られてもう無い。
視界がどんどん狭まって行く。
苦しみを感じない程に、苦しい。痛みを感じない程に、痛い。力が入らなくなった腕が、剣城の腕から離れる。
月乃「…あっ、」
何もかもが遠くなっていくのが分かった。
剣城?「力、解放しないと苦しむのは自分だが?このままだと本当に…」
そう言う剣城の声、顔、何もかも。
その時、剣城とは違う声が…月乃を案じる声が周囲に響いた。
「月乃ぉッ!!!!」
*
おかしいと思った。
流れる空気…雰囲気がおかしいと。異様な空気に俺は正体を見つけ出そうとした。
耳を澄ますと、うめき声の様な物が聞こえた気がした。近くにいる霧野や車田先輩には聞こえていない様子。余程小さいのだ。
今度は目を凝らしてみる。
神童「っ!!!!」
霧野「!しんど…ッ!」
車田「霧野走るな!!」
後ろでは俺を追いかけようとしたらしい霧野と、止める車田先輩の会話。
今見た物は真実か?
門の前——月乃と待ち合わせた場所。
そこで、剣城が月乃の首を絞めている光景。心臓が早鐘の様にうるさく鳴っている。
剣城?「…だが?」
やめろ、やめろ、やめろっ!!!月乃を殺すなっ!!!
神童「月乃ぉッ!!!!」
*
剣城は軽蔑する様な目で神童を見た後、小さく笑って月乃の首を絞めていた手を少し緩めた。
息を吸った月乃が咳き込むが、首を後ろから掴まれてビクリと体が震える。だが首を絞めるのでは無く、逃げない様にする為。
神童(…剣城…?)
その様子に違和感を覚えた神童。そこにいる剣城は、自分の知る剣城とは別人のように感じた。
雰囲気や瞳の色…それが全く異なる。
剣城?「何、コイツのことがそんなに大事なんだ。悪いが、俺はコイツ以外此処には何の興味も無いんでね。」
神童「月乃を放せ!」
それを剣城は嘲笑う。
何故月乃を苦しめる、それは剣城がシードだからなのか?
月乃「……に、様…ここか、ら…離れて…」
神童「!」
苦しそうだった。
サッカーではあれだけの力を見せて、普通に力は有るはずなのにここまで一方的にやられるのが神童には不思議だった。
そして思いつく理由……力がもう無かった?試合で使い切ってしまったのか、と。
神童「…だったら、責任は俺に…」
気を極限まで高める——そうすることで。
剣城?「…ハ、そう言えばこっちにも興味あったな。」
神童「奏者…、マエストロ!!!」
*
神童が走って行って、何なのか凄く気になったが…。俺は足を痛めて走れない。
出来れば車田先輩や皆に先に行って様子を見てもらいたかったが、優しいんだよなこれが。俺に歩くペースをみんな合わせて。
全く神童が戻って来ない、そればかりか声が聞こえる気がする。切羽詰まった状況の様な声。
と、更に驚くのが。
天馬「…き、霧野先輩アレ…!!」
…何をしてるんだ、神童は。
門の前——出現した青い気、奏者マエストロ。
霧野「天馬っ、先に行って様子を見て来い!!!!」
天馬「ハイッ!!」
本当に、何が起きてるんだ。
歌音は有名人と知り合いでそっち行ってるし月乃は居ないし、剣城も居ないし…雷門のキャプテンがこんな所で化身を出す?
あー…足が痛…
天馬「剣城っ?!キャプ…」
神童「ハーモニクス!!!」
ちょっと待て!!!!!!
*
霧野は円堂監督に背負われて、サッカー部が慌てて全員門の前に駆けつける。
そこに居たのは、壁に寄り掛かる剣城、月乃の背中をさする神童と、呆然とする天馬だった。
月乃「カハッ…」
歌音「杏樹ッ!」
葵「一体何が…?」
円堂監督が神童に説明を求める様な視線を送る。と、壁に寄り掛かっていた剣城が意識を取り戻した。
天馬「剣城、大丈夫っ?!」
剣城「…っつ…何だ、これ…。」
神童「!覚えてないのか?!」
驚いた神童が、月乃に視線を向ける。訳が分からない雷門イレブンは呆然と立っている事しか出来ない。
月乃が立ちあがる。ふらつく体を壁で支えて、何とか。
月乃「心配を掛けてすいません。もう大丈夫なので…。剣城さんも軽傷です。」
頭をさすりながら立つ剣城に視線が集まる。確かに大きな傷は無い。
歌音「…杏樹、首の辺りが赤くなってるわ。」
神童「!!」
月乃「虫に刺されたみたいで、痒くなって掻いたんです。」
疑うような表情。
それでも最後には押し切られて、帰路に着く。
帰りのバスの中では、神童も月乃も何も話さなかった。天馬でさえ、何があったのかは西園にも葵にも話さない。
*
神童「…。」
月乃『あれは、悪魔です。……だから、剣城さんは悪くないんです、どうか皆さんには話さないで下さいっ…!』
皆に話す日は遠くない、そんな予感がする。
窓の外を流れる景色。
今日の衝撃は余りにも大きすぎる。悪魔が月乃の首を絞めた?何でそんな事をするんだ?
悪魔は奏者マエストロにも興味があると言った。実際、それを見て悪魔は驚いて目を丸くして居たんだ。
そして剣城の体がよろめいて、壁に寄りかからせた。
月乃は全てを知っていて、だけど決してそれを話さない。
霧野「神童、何があったんだ…?」
神童「…」
心配そうに、霧野は俺に尋ねた。月乃からは言わないで、と言われたから言わないで置く。
神童「気になるんだったら、月乃に聞いてほしい。俺からは何も言えない。」
彼女は全てを知っている。
この世界の、何もかもを。
まるで、この世界を造った神の様に……。
*to be continued...*